そう言われた。
『人の子らよ。聞きなさい。私は貴方達に女神と呼ばれている存在です。』
父に調査報告をしている最中、急に声が聞こえた。荘厳で美しいその声は周りの者にも聞こえている様で、皆驚いた様子で辺りをキョロキョロと見回していた。
『え…⁉︎め、女神様!!?』
父の横で報告を聞いていた当代の巫女が、驚いた様に声を上げる。
いつもの落ち着いた姿とは違い、慌てふためいた様子で跪いたその姿に、周りの者は皆本物の女神様と気がついた様子だった。
そして一人、また一人と人々は跪いていった。
『アルケーディアの危機です。魔王は力を増していき、魔物はさらに苛烈さを増すでしょう。そして、いずれは…。その為、貴方達に一度きりの知恵と力を授けます。』
そう悲しそうな声色で話す女神様。
そして、俺たちはそこで真実を聞いた。
神託は歪めて伝えられていたということ。
魔王が生まれた原因は、他種族を虐げたことによるということ。
魔物の行動は周囲の魔素が無くなると、一時的に休止されるということ。
そして…。
『魔王は、人ではないと思いなさい。あの者も魔物と同じ。暴走した魔術に取り込まれただ周囲の魔素を取り込み、魔物に人族を殲滅せよと指令を出す。そんな存在に過ぎないのです。魔王の正体は、ただの魔術に過ぎません。』
『そんな、じゃあどうすれば…!』
『大丈夫です、魔術にも弱点がある。それは核。その核さえ破壊すればいいのです。ただし、気をつけなさい。彼はすでに移動しました。魔王は魔力を持たない。すでに死んでいる存在、そのために魔力を持っていないのです。その為感知魔法も意味を成さず、どこに居るのか探す術がない。』
『そんな…!!』
『それに、貴方達の力では魔王弱らせることはできても、倒し切ることはできない。核を探す術も持ち合わせていないのだから。…だから、別の世界から勇者を呼ぶ方法を与えます。魔王を倒すことに特化した力を持つ者を。』
ーーーーーーーーーーーー
「そうして、勇者は呼ばれた。あれは俺が生まれて未だ間もない頃だ。これは前にも言ったことがあるよな?ミールと共に勇者を見たことがあると。それは父と祖父に連れられ、隣の帝国で行った勇者召喚を見たことがあるからだ。」
「あぁ、あの時の…。」
「そして、勇者が呼ばれた。開口一番、彼は言った。『女神から全て聞いた。』ってな?憤った様子でそう言うと、俺たちを軽蔑した様子で見ていたんだ。恥ずかしい話、その頃は俺や父さん。そして、祖父にも人族至上主義が残っていた。あぁ、今はないぞ?今はもちろんそんなものはいけないと思っている。」
そうやって笑って話しかけてきたが、彼の目には後悔の念が残っていた。
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