街だと思った。


「こ、れ…は。」


 俺の眼前に広がったのは、空に届くんじゃないだろうかというほどの大きさの巨壁。

 その壁が円柱状に広がっていることから、その中心には街があるのだろう。

 というか…。

「これは、街…なのか?」


「街?何を言っている。あそこは要塞の王国と呼ばれている『ドレスターラ』。そこの王都だ。」

「つまり、街ではない?え、じゃあ街とか村はどこに?」

「あぁ、それらはこの王都の向こうに広がっている。まぁ、此処よりかは小さいが壁にも囲まれているところだ。その名も要塞の街『ドリースター』。そこに行くには、まずこの王都に行かなければな。なんだ、向こうの方が良かったのか?」

「え、あ、いや。なんか友達が王都に行くのは最後の方だって言ってて。テンプレだと、まずは街とか村で活躍して、で王都に召集とか依頼で行って、そこで活躍して主人公は英雄になる、とか…。」

「んー、少年はそういうのがいいのか?王都も良いところだと思うが…。」

 ミールさんが困ったように、テイルの方を見ていた。


「いや、別にそんな事ないです。ただ、圧倒されたっていうか………。向こうじゃ全然見たことなかったですから、こんな大きい壁。」

 俺がそう言うと、テイルは満足そうに頷き、胸を張っていた。


「そうだろ?なんと、この壁は魔法で作ったんだ。宮廷魔術師達とミール、そして俺の力も合わせてな?」

「これを…!魔法で!?そんなことできるのか!?」

「あぁ、まぁそのあとは三日ほど動かなくなったがな、魔力切れで。ハッハッハッハッハッ!!」

「テイル様、少しは反省してください。あの後王宮中が大騒ぎになったんですから。あまり張り切りすぎるのはいけないと、陛下から言われていたでしょう?」

 少し、怒ったようにミールさんはテイルを見る。

 それに対し、テイルは目を逸らしていた。


 ていうか、この二人はもう隠す気がないのだろうか。宮廷魔術師とか王宮とか陛下とか。

 当たり前のように俺の前で言っているんだが。



「さて、じゃあ行こうか。」

「…なぁ、二人とも良いか?」

「ん?どうした?」


 俺は森を抜けている最中に考えていた事を、二人に話すことにした。


「あの、ここまで送ってもらってなんだけど、もういいや。ここまで来て、国も見えた事だし。」

「なに?ユウヒ、まだそんな事を…!」


「あっ、いや、違う違う!あのさ、こんな見ず知らずのやつ助けてくれて、本当に助かったんだ。けど、こんなにおんぶに抱っこでさ、申し訳ないっていうか。ここからは俺一人で頑張るよ!!」

 俺がそう言うと、二人は困ったように目を合わしてしまった。

 やはり、我儘が過ぎたのだろうか。


「………はぁ、仕方ない。君にそんな顔で見られたら、納得するしかないか。だが、王都までは送らせてくれ。そして、そこからは別れることにしよう。」

「ですね。…少年よ、王都の門をくぐるには身分の証明か、それが出来なかったらお金を払わなければならない。ただ、お金は持っていないだろう?だから、それの助けはさせてくれ。そうですよね、テイル様?」

「あぁ、構わないよ。ふっ、私が言おうと思っていたんだが、まぁいいか。それじゃ、王都まで向かおうか?」


 そう言って、二人は俺の前を歩き出した。

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