希望が生まれた。



「さて、私が帰れるかもしれないと思った根拠だったね?」

「あ、あぁ。そうだ、それを聴かせてくれよ。じゃないと、納得できない!」

「女神様はさっき言葉の後に言ったんだよね?『スキルを授けます。どうか、貴方の旅路に救いをもたらす様。』と…。君はこの言葉をどう思ったんだっけ?」

 テイルが聞いてきたのは、俺が女神からの説明を話した際に、彼女から貰ったスキルを評した時の事だ。


 確か、俺は…。

「このスキルで、俺の旅を楽に出来るように授けたんじゃないか、って…。」


「そう、そこだ。あの時言わなかったが、私は違うことを思った。」

「え?」

「"貴方の旅路に救いをもたらす"という言葉、これは君の旅が楽になる様に。ということではなく、"君の旅が救いをもたらす"とそう捉えられないか?君のそのスキルで、旅先の人々を救うと…。」

「え?そ、れは…。そんな…!」


「これは俺の考えだ。そんなことは有り得ないと、そう一蹴してもらっても構わない。ただ、私も信じられないんだ。これまで私たちを救って来た女神様が、君にそんな事をするなんて。だから、この考えに至ったのだよ。何か、使命があって君を送り出したのだと…。君の旅で人々を救うという使命を。」

 そう言うテイルの顔は冗談を言っている様には思えなかった。


 そして、その言葉を聞いた俺は、少し心に光が差した様に思えた。



「君はもらったんだよ、勇者と同じ使命を。ただ、漠然としたモノだけどね。だが、女神様に何か異常が起こっていると考えると…、君に助けて欲しいんじゃないかな?女神様は。君が代わりになるんだよ、人々を助ける存在にね?そして、それはいつか君のためになるよ。」

「…。」

「…まぁ、これはただの勘だ。だが希望は持てただろう?現に、君の目は変わった。さっきまでの様な目より、その顔つきの方がよっぽど良いよ。」

 そう言って、俺に笑いかけるテイル。

 隣ではミールさんが同じ様に頷いて、俺を見ていた。


 それを見た俺は少し疑問を感じた。

「なんで、そこまでしてくれるんだ?」

「ん?どういうことだい?困ってる人がいたら助けるのは当たり前だろ?」

「違う!そんなこと…、だって、俺は他人で、貴方はきっと偉い、人で…。でも異世界から来たって話もすぐに信じて聞いてくれて。助けてくれた…。」

「でも、異世界から来たのは本当だろ?スマホだって持ってたし、それにゲーム機だってね。」

「じゃあ、証拠がなかったら!?証拠がなくて、ただ彷徨ってて、それに女神とも会ってなくて、そんな俺で…!………それでも、助けたのか?助けてくれないだろう!?」

 こんなこと言いたくない。でも、堰を切ったように溢れ出た思いをテイルにぶつけた。


 ぶつけてしまった…。

(この世界に来てから、自己嫌悪ばかりだ。)


「助けるに決まってるよ。偉い人だとか、君が嘘をついてる、ついてない。そんなものは関係ない。困っている人がいたら助けるよ。だって…。」



「…私は冒険者、だからね?」



 そうやっておどける様に笑ったテイルは。

 とても輝いて見えた。

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