王子様だと思った。
「あの…、助けていただいてありが…。」
「ん?あぁ、別に構わない。君が弱そうだったんでね。まぁ、図体だけの者なら私は助けなかったからな。君が弱々しくてよかったよ。」
「え?はぁ…ありがとうございます?でいいんですかね?」
(えぇ〜、なんかすごい失礼〜。まぁ、助けてもらったし、確かに弱そうだからあれだけど。それになぁ……。)
そう思った俺は、親玉の胸の飾りを取っている彼の頭上へと目線をあげる。
(99999999……。いや、どんだけあるんだよ。やばい、9がゲシュタルト崩壊してきた…。)
彼の頭上には、9の数字が数えるのが面倒臭くなるほど並んでいたのだ。
(この人は何だ?人?魔物?まぁ,人だろうな。いや、でもこんな強いとかあり得るか?いくら異世界でも…。いや、俺は異世界の何を知ってんだよ。)
そう自分に突っ込んで、彼を見ると親玉から首飾りを取り終わったようで、どこかへ行こうとしていた。
「ちょっ、あのっ!」
「ん?何だ?」
「あの、あなたは人…ですか?本当はドラゴンとか…?……あっ、いや、すいません!!テンパってて、今!」
「?……ハッハッハッハッハ!!面白いな、君は?まさか大道芸人か?なら、すまない。今はお金を持っていないんだ。今は私の騎「オーヴァー様ー!オーヴァー様ー!?」」
遠くから女の人の声が聞こえてくる。彼を見ると、オーヴァーという名前に反応し、声の方へと向かっていく。
俺はその後ろへ着いて行った。
「ミール!私はここだ!!」
「ハァッ、ハァッ…!お、オーヴァー様…。こちらに…いました、か?なっ、お前は誰だ!?ここで何をしている!!」
「え?あ、俺は!あのっ!」
遠くから来た人は、騎士のような鎧をつけた女性だった。
その女の人は、オーヴァーという人を見て安心したように笑っていた。が、俺のことを見た瞬間に、鬼の形相で腰の剣に手をかける。
「ミール!!!」
「ッ!?ハッ!!」
「彼が魔物に襲われていたところを、私が助けただけだ。それに、彼は弱いから何も出来やしないよ。」
「ハッ!失礼した、若者よ。勘違いしたようだ。オーヴァ…、テイル様の傍にいたものだから、少し驚いてしまった。」
「え?はぁ…、いえ。あの、テイル様?オーヴァーじゃないんですか?」
「なっ、なぜその名を!しかも呼び捨てとは、不敬な!!」
再び剣に手をかけた彼女。
「ミール!君が私の名前を呼んだんだ。それに、私は冒険者。呼び捨ては不敬でも何でもないよ。」
「ハッ、失礼しました!…すまない、クエストの最中だから気が立っていた。若者よ、私の名前はミール。テイル様の仲間をやっている。」
「えぇ…?はぁ…よろしくお願いします。」
彼女の差し出してきた手を掴み、握手する。
それを見て、テイル様とやらは何故か満足げに頷いていた。
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