第二章

第9話 部署異動

 受付のパートさんが辞めて、困った社員の一人から私は声をかけられた。


 「受付にきてくれない? 院長にお願いするから」


 彼女とは研修当初から馬が合い、仲良くさせてもらっていた。


 私は、何事も動じず自分の意見をしっかり持っている彼女を尊敬していた。

 また、上司や地位の高い人に媚びたりしないところも魅力的だった。


 その彼女から声がかかったのだ。


 期待に答えたい気持ちと、一緒に楽しく働きたい気持ちで胸が高まった。


 だが「受付をやってみたい」なんて口が裂けても言えない。


 だって私は、パソコンの電源場所すらあやふやなパソコンアレルギーなのだから。


 そうは言っても、一日中動き回るリハビリ助手の仕事も、この先年齢を重ねる毎に体力が続く自信はなかった。


 二階での仕事もさることながら、若いリハビリ助手や理学療法士さんとの関りにも少々疲れていた。


 もしかするとこれはチャンスかもしれない。


 新しいことに挑戦してもいいのでは。


 「ご期待に沿えるかわかりませんがやらせてください」と答えた結果はすぐに表れた。


 次の日、早速院長から辞令が出て、私は入社一年足らずで受付に部署異動することになったのだ。


 もともと見知った仲であった事もあり、受付の方々は温かく迎えいれてくれた。


 そして初日から会計の仕事を任された。


 えっ!研修もなく~


 引継ぎもなくいきなり現場?


 驚く事に私は即戦力として呼ばれてしまった様だ。


 経験もないし、パソコンもろくに扱えないというのに。


 見て学べという事か?!


 こうして早くも不穏さを醸し出しながら、私の受付ライフがスタートしたのだった。

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