第8話 争い・嫉妬・虐め

クリニックの経営が軌道に乗る中、その裏ではスタッフ間の争いや虐め問題が勃発していた。


 医療の経験が豊富で、アイデアもセンスもあり、クリニックのために色々な提案をする意欲的なパートスタッフがいたのだが、上司に疎まれ二か月で退職してしまったのだ。


 その上司は、彼女が仕事上の提案やアイデアを出しても聞く耳持たず、院長には彼女のせいで部署の雰囲気が悪くなっていると虚偽の報告をしていた。


 この言葉を鵜呑みにした院長は、そのパートさんのシフトを大幅にカット(二週間で一日だけのシフト)にし、自ら辞めるように仕向けてしまったのだ。


 上司も上司だが、こんな軽率な行動にでた院長にも驚いた。


 この先私も簡単に切り捨てられるのだろうか? 背筋が寒くなる感じがした。


 彼女は、仲良くしていた何人かの同僚に、院長が自分にしたことを激白し、恨みながら辞めていった。


 「院長はスタッフを駒としか思っていない、トップが不誠実な職場に未来はない。早く辞めた方がいいよ」

 悔しそうに電話で訴える彼女の言葉が今も耳に残る。


 因みに、院長に嘘の報告をした上司は、後から入ってきた有能な社員さんと揉めて、役職を下ろされるまでに追い込まれ、自ら退職していった。


 因果応報とはこういう事だと思う。


 スタッフが大勢集まれば、ある程度の揉め事はおこる。


 それは仕方のないことなのかもしれない。


 特に女性は嫉妬の感情も絡んでくるので難しい。


 だからこそ、院長には公平を意識して適切な行動をとって欲しい。


 だがうちの院長は、人から聞いた話をすぐ鵜吞みにしてしまう傾向があった。


 それにも拘わらず、クリニックのスタッフ何人かを密告者にし仕立て上げ、事ある毎に報告させ、その人の言葉だけを信じ評価や人事決定をしていた。


 また、クリニック内で揉め事が起きると、揉めているスタッフにはそれぞれ味方をし、陰ではその場にいないスタッフの陰口を言う行為も日常的に行っていた。


 この状況に危機感を抱き、早々に見切りをつけて辞めていくスタッフもいたが、”

院長に対しては、誰も意見が言えず、スタッフ間はギスギスし、いがみ合いの絶えないクリニックとなっていった。


 そんな中、虐めによって退職するスタッフが現れた。


 受付には二人の社員さんと二人のパートさんがいる。


 ある時、社員同志で揉め事が起きた時に、社員の一人が相方を嫌いだと訴えたそうだ。


 一人のパートさんは、どちらとも仲良くしながら、どちらにも調子よく一緒に悪口を言った。


 だがそれは当然、いつかはばれる。


 ひょんなことから社員さん二人が情報交換をした時に、そのパートさんの言動が二人の知るところとなった。


 その後、二人から冷たくされ、居心地悪くなった彼女は、「社員さん二人に虐められた」と言い残して去って言った。


 虐めた二人から言わせれば、元はと言えばどっちつかずの良いとこ取りの彼女の行動に問題があったらしい。


 この時院長は、「ここは人間関係が良い事が自慢のクリニックなのだから、虐めは絶対あってはならない」


 クリニック内で仲良くする重要性を全スタッフに力説していた。


 どの口が言うのだか!


 全くもって説得力のない言葉である。

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