第7話 下品な患者
スタッフとの関係が良好になった頃、私の悩みの種は患者さんになっていた。
その患者さんは、「若いスタッフが良い・おばさんは嫌い」「せっかくリラックスしに来ているのだから若い人に機械つけてもらいたい」とはっきり言う人だった。
これには参った。と言うよりかなり傷ついた。
そういう患者さんに限って毎日のようにリハビリをしに来るので、日々、日々ストレスも大きくなっていった。
この9年間で、私は何回も辞めようかと思ったことがあるが、最初の原因を作ったのはこの患者だった。
院長の説明不足のせいでか、理不尽に患者さんから怒鳴られた事もある。
ある日、患者さんが怒りながらリハビリ室に入ってきた。
「お前院長にちくったな!」
「俺が文句いっていると院長に言っただろう!!」
私の顔を見るなり怒鳴りつけ威嚇する。
その患者さんは気難しく、いつも何かしら文句を言っていた。
そしてリハビリ器具のつけ方が気に入らないと、担当スタッフをその場で交代させていたので、若いスタッフはその患者さんの対応を嫌がった。
私には何のことだかさっぱり分らなかったのだが、一度患者さんの話を聞いて落ち着いてもらう事にした。
「申し訳ございませんが、院長から何を言われたのか教えていただけませんか?」
聞くところによると、患者さんはその日院長から、「リハビリのスタッフが貴方の扱いに困っている」と告げられた様だった。
そして「いつも文句ばかり言うので治療内容をかえる」と言われたそうだ。
なるほど、それで腹を立てた状態でリハビリ室に来たという訳か。
前日にこの患者さんの対応をしたの私だもんな。
なんて厄介なことをしてくれたの!院長は………。
周りを見ると、近くにいた若いスタッフは震えている。
仕方がないので「院長がどのようにお伝えしたかわかりませんが、私は告げ口などしてはおりません。ここではより良い治療を提供させていただくために、患者さんからのご意見やご要望は、スタッフ同志共有して、サービスの向上に務めさせて頂いております。そういった意味で院長にも報告しています。その報告が患者さんに誤解されるような形になってしまったのなら残念です。申し訳ございませんでした」と患者さんには丁寧に説明し謝罪をした。
30分ほど経っただろうか? 「分ったよ」とぶっきらぼうに言い放ち、大人しく治療をして帰っていった。
こういう問題が起こる度に、理学療法士を含め、対策を考えサービスの向上に取り組んだ。
そして患者さんへの対応が徐々に上手く出来るようになっていった。
こうして、スタッフ全員の頑張りが功を奏して、半年で150人越えを達成し、一年を迎えようとしていたころには200人来院する日もあり、順調にクリニックの売上は伸びていった。
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