第6話 理学療法士さん
理学療法士(PTと呼んでいる)との連携を上手くとり、彼らの仕事がスムーズに行われるように気遣うこともリハビリ助手の大事な役割である。
これは思っていた以上に大変かつ苦痛であった。
アコガレクリニックには、院長が前の病院から連れて来た二人のPTがいる。
二人とも30代半ばのベテランPTさんである。
ところが、二人は仕事に対する考えや理想がかけ離れている上に、自分の意見を曲げない頑固なところがあった。
研修期間は穏やかにしていたのだが、オープン直後から段々と仲が悪くなっていき、何かある度にお互いのあら捜しをするようになっていった。
患者さんの前でもそれは変わることはなく、時には激しく言い争うこともあった。
そして私たちリハビリ助手には、自分の意見だけを優先することを求めた。
リハビリ助手にとって彼らは立場が上なので文句は言えない。
一番困った事は、PTの予約をとっている最中に、二人が私のところにきて無理な注文をしてくることだ。
「この患者さんの予約は自分の方に入れて」
「あの患者さんの予約は自分に入れないで」
同じ患者さんの予約で二人が揉めるのだ。
遠くで治療していても目で合図し圧をかけてくる。
困り果てて、私は仲の良い同僚に相談をしてみた。
「耳が遠くて聞こえないふりすればいいのよ」
彼女はそう言ってニヤリとした。
なるほど~。 目には目歯には歯って事ね~。
しかし、PTさんとの関係は、私が成長するに従い、しだいにコミュニケーションが上手くとれるようになったのか気にならなくなっていった。
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