第2話 配属部署発表

初めての顔合わせは研修の初日に行われた。


そこで院長から一人一人別室に呼ばれ配属部署を伝えられる。


アコガレクリニックは看護部門・受付部門・リハビリ部門・通所リハビリ部門に分かれており、どうやら私はリハビリ部門で採用されたようだ。

 

未経験の私はどこの部署がいいとかそんな贅沢なことは考えてはいなかったのだが、パソコンをあまり使わない部署でありますようにと密かに願っていた。


そんな中、一人のスタッフが何やら配属部署について不満をもらしていた。


「採用の連絡をもらった時、院長からあなたには受付をお願いしたいと言われていたのに~私も受付での採用でなかったら辞退すると伝えてあったのに~まさかの通所リハビリだなんて話が違うよ~」


どうやら、採用時に約束された部署とは違う場所に配属されてしまったらしい。


彼女は、病院受付勤務経験が長く、自らのキャリアを生かすためにアコガレクリニックの受付を希望し、面接時にも「受付のみ希望」と伝えていたようだ。


 しかも採用から2か月も待たされ、それまでの間電子カルテをうまく操作できるよう練習し今日まで準備してきたというのだ。


なるほど……。それは確かに酷い……。


彼女ががっかりする気持ちは理解できる。


でも今ここでそれを言うのは少しまずい。


現に目の前に同じ部署に配属された人たちがいるのだから。


気の毒だとは思うが、ここは黙ってその場をやり過ごした方が賢明だ。


嫌な雰囲気にならないと良いが。


幸いにも、皆も私と同じ様なことを考えていたのか、黙って頷いているだけで、何事もなくその場が過ぎ去った。


その後は来訪していた医療器具の専門家により、部署ごとの機械についての説明があったあと、それぞれの部署に分かれて実践演習が始まった。


まず、リハビリ器具の使い方の説明を受けて患者への取り付け練習をし、ここは難なくこなすことが出来た。


しかし誤算だったのは、他の部署ほどではないが、リハビリ部門もパ ソコンをたくさん使わなければならなかった事だ。


  次に教わった電子カルテの入力とリハビリの予約を入力する作業は、研修期間を通して最後まで自信がもてなかった。


若者のパソコン習得は早く、私は、彼らのやっている事を目で追う事 さえ難しい状況で、早くも落ちこぼれてしまっていた。


やはりインターネットがあらゆる場所に浸透したこの時代に、50代 パソコンアレルギー女には居場所などないのかもしれない。


これはかなりの覚悟が必要だな。


早くも挫けそうな気持を必死に奮い立たせた。


「せっかくあの大勢の応募者の中から選んでもらったのだからこんなことで挫けてはいられない、何とか努力して若い人についていかなくては」


なにはともかく二週間の研修を無事に終え、あとは開院初日を待つばかりとなった。


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