専業主婦歴20年・久々に勤めた病院はブラック企業だった?!
浦島ハナコ
第一章
第1話 採用面接
はじめに
貴方の職場はホワイトですか?
おめでとうございます。そのままずっと腰を据えましょう。
まさかのブラック……?
残念です。さっさと見切りをつけましょう。
採用された職場がブラック企業だったらこうなる?
私の反省を込めて贈りたい。
あなたのこれからの選択の助けになりますように……。
—――—――――――――――――――――――――――――――――――――――
専業主婦歴20年社会から完全に切り離されていた私が、なにを血迷ったか、忙しい病院の求人に応募し、なんと採用されてしまった。
結婚以来、家事・子育てにすべてをささげていた自分が、もう一度働けるという事実に興奮した。
しかし気づくべきだったのだ。すでに玉手箱を開けていることに。
それは九年前。
ふとした時に、新聞広告求人欄のクリニックオープンスタッフ募集の記事が目に留まった。
結婚以来専業主婦歴が長く、もちろん病院に勤めたことなどなかったが、医療関係の仕事に携わりたいという気持ちとその分野への憧れがあったので、どうせ落ちるだろうと思いながらも、だめもとで応募してみた。
<オープン前研修あり>という条件も未経験者にとっては安心要素になり、私の中で挑戦してみたいという気持ちが強く沸き上がった。
待つこと二週間。書類選考を通過し、ついに面接の日がやってくる。
久しぶりの面接に緊張しながら会場に到着すると、そこにはすでに大勢の応募者が集まっていて、そのあまりの多さに驚いた。
案内係りの人に指示された席の前には、病院勤務経験者と思われる若くて魅力的な応募者がずらりと並んでいる。
あれ?
もしかして50代は私だけ?
ひょっとして場違いなところにきてない?
これは勝ち目ないかも。
諦めに近い感情が生まれ、開き直りというか、みょうに肝が据わって緊張がほぐれる感じがした。
しばらくするとアンケート用紙が配られた。
そこには性格診断のようなテストがあり、パソコン能力を自分で採点するユニークな箇所もあった。
当時の私は自慢じゃないが、パソコンの電源場所さえあやふやなパソコン音痴であった。
とは言え、流石にアンケート用紙にそんなことは書けないので、「ある程度なら出来ます!」と調子よく書いてしまいたい衝動にかられたが、いくら何でも節操がなさすぎてまるで面接詐欺みたいじゃないかと我に返り、「今はパソコン扱うのは不得手ですが、研修期間までに練習して出来るようにします」と書いた。
アンケート用紙を書き終えると、順番に別室に呼ばれて面接官四人と面接者一人で20分程の面接を行った。
何を話したか詳しくは忘れてしまったが、「私の長所は誰とでも仲良く出来る事です。また、そのように努力する事です」とだけは伝えた記憶がある。
面接が終わって家路に帰る道すがら、「院長素敵だったな、ここで働きたい、採用されたら全力で頑張るぞ」と早くもバリバリ働く姿を想像していた。
そこからの展開は早かった。
合否の連絡は一週間以内と言われていたが、面接当日の夕方電話が鳴り「アコガレクリニックの院長です、貴方と一緒に働きたいと思い採用しました、一緒に頑張りましょう」と言われた時は、天に昇るように嬉しかったのを今も鮮明に覚えている。
こうして私の楽しいビジネスライフが始まった。……そのハズだった。
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