第11話

謎の全力ダッシュから翌日。

一応ギルドに寄っておこうということになり依頼を見てみたりした。

昨日までいた街より小さい分、地域密着みたいな依頼が多かった。

お年寄りのおばあちゃんの代わりに畑を耕すとか低賃金ながらも引き受けてあげたくなる依頼だ。

村にいた頃も自分の畑と一緒にお年寄りの畑を耕してあげていたっけ。

懐かしさに依頼書を見ているとアデリアさんが「受けたいの?」と聞いてきた。

正直割が合わないし、これは毎日やらなきゃいけない仕事だから早々に立ち去る私達がやるべき仕事じゃない。

依頼書にも長期希望と記載されている。

「いいえ、見ていただけです」

依頼書を閉じてみんなの元に戻る。

単発で終わる依頼を一件ずつ受けることにした。

私の畑は村の人達に頼んであるけど、久々に耕したいな。




一件目の依頼をこなすため、久々に魔物退治をすることになった。

なんでも山から下りてきては畑の作物を食い荒らすらしい。

「大丈夫?」

アデリアさんが尋ねてくれたけど、もう充分大丈夫だ。

「どんとこいですよ!」

むしろ畑を荒らす魔物退治なら元村人としてやる気も出る。


と、いうわけで森に来た。

魔物退治はひたすら切っては殺しての繰り返しだ。

魔石採取も薬草採取も魔物退治も、全部繰り返し作業。

ただ、こちらは経験値も入る。

そんなに強い魔物ではないから微々たるものだが、塵も積もればなんとやら。

多少の経験値が貯まっていく。

魔王と対峙するまでにはもっとレベルを上げなきゃいけないから、どちらにしても魔物を倒して経験値を上げなくてはいけない。

それに、新しい武具がとてもいい!

苦労した甲斐があったな…と感慨深くなるほどに切れ味もいいし守りも軽いのに固い。

魔法組の魔法も心なしかパワーアップしている気がする。

どんどん倒して経験値を上げて、本日のお仕事は終了した。

依頼主からはかなり感謝された。

これでしばらくは畑を荒らす魔物は出ないだろう。


宿屋に泊まって翌日またギルドに寄って依頼を受けて魔物退治の依頼を受けて切って倒して経験値を上げた。

依頼はすべて義務的にやることにした。

…その方が自分の心を傷付けないから。

数日間その繰り返しをして、また次の街を目指すことになった。




「今度は全力ダッシュやめてくださいよ、アデリアさん」

散々走らされてきつかったのかイースさんがアデリアさんに釘を刺す。

と、いうわけでのんびり道を歩いていく。

集団乗合馬車も出ていない区間なので徒歩しか選択肢がなかった。

「今日も天気がいいねー」

アデリアさんが空を見上げて背伸びをする。

「もう少ししたらお弁当食べませんか?」

「まだ昼には早すぎますよ」

「えー…」

イースさんに窘められるとカルシアさんからフォローが入る。

「そうですね。もう少し頑張りましょう、アルテさん」

「分かりました!頑張ります!」

ぐっと拳を作って頑張るアピールをするとイースさんから不平不満が出た。

「僕とカルシアさんに対しての差がありすぎる…」

「それはかわいさの差ですよ、イースさん!思春期がかわいいのは一部だけなんですからね!でもイースさんもかわいいとは思ってます!ツンデレ最高!」

「誰が思春期ですか!ツンデレですか!かわいさの欠片もない人に言われたくはないです!」

そう言いつつ顔が赤いのがかわいいんだよなー。

言うと余計に怒るから言っておいた。

めちゃくちゃ怒られた。

でもそういうところがかわいいのは本当。




てくてく歩いていて、今晩は久々に野宿かなと考える。

そうなると暗くなる前に野営の準備をしなくてはならない。

「今晩は野宿にします?」

一応訊ねると地図を見ていたカルシアさんが同意した。

「そうですね。次の街まではまだまだありますし、本日中には辿り着けないでしょうし」

「よっし!そうと決まったら晩ご飯を仕留めてくるか!」

アデリアさんがやる気充分だ。

「じゃあ、私とアデリアさんで何かしら狩ってくるので、イースさんとカルシアさんは野営の準備をお願いします」

「わかりました」

こうして二手に分かれた。




動物は食べる分、殺すことが私の中で許容されている。

村にいた時も狩りをして動物を捕まえて食べていた。

魔物は食べない。余程の珍味好きかゲテモノ食いしか手を出さない。

中には美味しいとか珍しい食用として扱われているモノもあるらしいけれど、そんなものはごく一部だ。

大体が内に障気も含まれるし、とても食べられたものじゃない。

適当にアデリアさんと狩ったところで野営場所に戻った。


出来上がったテントの前に調理器具を置いて動物を捌いていく。

野草かなにかも欲しかったけど特に見つからなかったんだよなー。

簡単な調味料でガサッと味付けして振る舞った。

イースさんからは「大雑把な味がする」と言われた。やかましいわ。

アデリアさんは相変わらずどこから取り出したのかクッキーをみんなに別けてくれた。

食後のデザートとカルシアさんの淹れたお茶、満点の星空で一気にリゾート気分になる。


しばらく順調に街や村に辿り着けていたから野営も久々だな。

テントで四人ごろ寝して、良くない環境と言えどあれやこれや喋っていると楽しいものだ。

たまにはこういうのもいいな。

そう思いなから寝た。

夢の中で私は村に戻っていて、アデリアさんやカルシアさん、イースさんがご近所で暮らしていて、なんやかんやで楽しく暮らしていた。




そこから二日野宿して、ようやく次の村へと辿り着いた。

多分宿屋はあると思うけど、簡易シャワーくらいはあるといいな!

いい加減人間としての尊厳が疑問だぞ!

そう思っていると村の中心が賑わっていることに気が付いた。

何がそんなに嬉しいのか気になって近寄って村人に訊ねてみる。

「すみません、どうされたんですか?」

いきなり訊ねられて驚いたようだが私達の旅人スタイルに納得して興奮気味に教えてくれる。

「勇者様がいらしているんですよ!」

街の人は明るく、嬉しそうに言った。

うん。その勇者、私なんだけどな!

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