第4話
次の素材はエルフの涙だった。
そんなもんどうやって鍛冶に使うんだと思ったけど、言われたからには集めなければならない。
というか、エルフなんてどこにいるんだ?
ギルドの片隅の飲食スペースで四人で悩ませると偶然エルフの隠れ里の情報が入ってきた。
いや、タイミング良すぎだろ!
エルフの里は今いる街から然程離れてはいなかった。
だから!伝説ーーー!!!隠れ里の意味とは!?
疑いつつもこの情報に賭けるしかない。
私達はそのエルフの隠れ里に赴くことになった。
ていうかさ、エルフの涙が必要って普通の涙でいいの?
見知らぬエルフにいきなり泣いてくださいって懇願するの?
えっ、ちょっとイースさんの教育上よろしくないのでやめてほしいんだけど、あとでアデリアさんとカルシアさんと相談しよ。
目的のエルフの隠れ里に着くとそこは鬱蒼と生い茂った木々や植物で覆いつくされた場所だった。
多分、ここが入口だろう。
中に居るのがエルフなら出会った瞬間即攻撃とはならないだろうとドラゴンの時よりは心を楽にして里の入口から中に入っていった。
しかし、そこは魔術が掛けられていて里に辿り着くまでには迷路のようになっていた。
やっと隠れ里っぽくなってきた!
そうだよね!こうでなくちゃね!
………いや、違った!
目的達成のためにはこのエルフの迷路を攻略して里に辿り着かなくては!
うろうろうろうろ、右へ行っては左へ戻り、左へ行っては右へ戻り、繰り返していたがまったく辿り着かない。
「どうしましょう?」
「どうしよっか?」
アデリアさんと合わせてちらりと賢者と魔法使いを見る。
こういうときこそ魔法の出番だろう。
「僕は攻撃魔法の方が好きだからこういう幻術みたいなものを破るのはあんまり得意じゃないな」
首を横に振るイースさんにカルシアさんが一歩前に出る。
「では、私の出番ですね。えーい!」
軽いっ!しかもなんとか出来てたなら早めにやっておいてほしかったな!
でもおかげで鬱蒼と生い茂った木々や植物は陽の光を入れる程度に明るくなり道が分かるようになってきた。
今の魔法ってどうなってんだろう。
イースさんはエルフに興味津々で「エルフといえば理知的な種族のはず…。決して無礼な言動はしないでくださいよ。特にアルテさんとアデリアさん。」
めちゃくちゃ失礼だけど言い返せない。ぐぬぬ。
でも私よりもアデリアさんの方が要注意だと思うな。
直感でしか生きてないもん。
でもそんなところがすき!
途中でトラップやらなんやらあっても無事に里に着いた!
そして第一エルフ発見だ!エルフの隠れ里に辿り着いた!
ようやくの感動に打ち震える私の隣でアデリアさんが大きな声でエルフに声を掛けた。
「すいませーん!エルフの涙ってのが必要なので、ちょっと泣いてもらえませんかー!?」
「アデリアさーーーん!!!」
言い方と順序ー!
「すみません!!!本当にすみません!!!」
困惑気味のエルフさんにぺこぺこ謝ると逆に恐縮された。
「あの…多分人間の方が求めるエルフの涙とは私達エルフが泣いた液体ではなくエルフに代々伝わる秘宝の宝石のことだと思います」
アデリアさんの直球要求にも律儀に答えてくださる…。
このエルフさん、いいエルフさんだ…。
良かった。人間迫害系エルフじゃなくて…。
「申し訳ありませんが、そのエルフの涙という宝石をお譲りしてくださることは可能でしょうか?」
カルシアさんが丁寧に訊ねるも代々伝わる秘宝の宝石って言ってたもんな…無理フラグだなこれ…どうしようか…。
「あっ、じゃあちょっと長老に聞いてきますね」
「いいんですか!?聞いてもらえるんですか!?エルフに代々伝わる宝石なんですよね!?」
あまりの軽さにびっくりだ。
「エルフとは…理知的な種族とは……」
イースさんが虚ろな目になる感じだけど好意的に話は進んでいく。
さて、どうなるやら。
第一エルフさんに長老さんのお家に案内されて長老と引き合わされた。
エルフの長老は、長寿なだけあって外見はまだ30代後半のように見えた。
実際の年齢を聞いてみたい気がするが、その前にアデリアさんがまたやらかした。
「すいませーん!エルフの涙ってのが必要なので、くださーい!」
「アデリアさーーーん!!!」
直球ストーーート!!直感でしか生きていないところが好きだけど!好きだけど!
言い方とさぁ!!あるじゃん!?秘宝の宝石って話なのにそんな簡単にはくれるはずがないじゃん!
「別にいいぞ」
「いいんかーーーい!!!」
軽いっ!エルフの秘宝じゃないの!?
私の突っ込みが追い付かない!
エルフへの価値観が崩れていく。
一応、私達の素性やなんでエルフの涙が必要かは説明させていただいた。
「なるほど…魔王を倒す旅をしておるのか…」
「はい。それで、こちらのエルフの涙を使って武具を造らせてほしいのです」
喋らない方がいいアデリアさんと突っ込み疲れた私と憧れていたらしいエルフのギャップについていけないイースさんを置いて比較的まともなカルシアさんが話を通してくれた。
「そういう理由なら全然オッケーじゃ!」
「だから!軽いっ!秘宝じゃないんですか!?」
疲れていたがどうしても長老に突っ込みたかった。
いや、ありがたいんだけどね!?ありがたいけど秘宝とは?ってなるじゃん!?
「秘宝とはいっても在るだけでこの数百年何の役にも立たずに漬物石にしとるしな…」
「もう…秘宝返上したらいいんじゃないんですかね…?」
一気になんのありがたみもない石になってしまったエルフの涙。
「ついでにそこの少年にずっと忘れ去られていた魔法を伝授しよう」
長老がイースさんを見て言った。
「えっ、よろしいんですか!?エルフの魔法なんですよね!?」
イースさんがかなり驚いているが長老は軽く笑うだけだった。
「この仲間にいられるお前さんなら大丈夫だろう」
とは、どういう意味だろうか?
とにかく、こうしてイースさんはエルフの長老から古代魔術を甦らせて教わった。
エルフの長老、太っ腹過ぎない?大丈夫?新手の詐欺じゃない?
手に入れたエルフの涙を片手に、エルフの隠れ里に入るまでの苦労とか諸々は一体…と考えた。
いや!気にしちゃダメだ!
素材が手に入ってイースさんも強くなって良かったと考えよう!!そうしよう!!
「みんな!素材が手に入って良かったな!」
漬物石もといエルフの涙を掲げて言う私にカルシアさんとイースさんの控えめな拍手、アデリアさんの豪快な拍手が響いた。
ありがとう。アデリアさん。
この大きな拍手がなかったらわりと本気で泣きたいところだったよ。
さすがは我らのアデリア姐さん!!
素直すぎだけどな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます