悲忘の赤
私が生まれ落ちたとき、最後に覚えていたものは真っ赤な瞳だった。
私に食い付き引き裂いた恨覚の主。
忌々しい真っ赤な瞳には怒りが宿っていた。
私が何をしたというのだ。
私はただ、生き延びただけだ。
小さな泡に捕らわれ、永遠の苦痛、生存と輪廻を強制された哀れな労働者、無様な家畜とされていたのだ。
心ある者なら脱出を企てるのは当然ではないか。
創作者のエゴに塗り潰された矮小な世界を破壊してやった。
その手から逃れるために粉々にして吹き散らしてやった。
しかし、無数の世界の欠片から、そいつは私を見つけ出し食い付いた。
そいつの牙は創作者の爪となって私を捕らえた。
体に潜り込む牙の痛みよりも、その執念に寒気を、執着に悪寒を感じた。
そして、私は感情のままに暴れた。
そして、そいつはあまり賢く出来ていなかった。
暴れる私を抑えるために力を入れすぎたのだ。
おかげで私の体は引き裂かれ、虚空へと落ちた。
創作者の力の範囲から零れ落ちる事に成功した。
僅かな暗闇の時間を経て、気付くと、開拓村で雑貨屋を営む夫婦の娘として生まれ落ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます