第5話
「そっか……」
神亀はそれ以上何も言ってくる事はなかった。
でも、それで良かったのかも知れない。ここで下手に同情をされていたら最悪「あんたに俺の何が分かる」と激情していたかも知れない。
そもそもこの話を始めた根岸自身が話した事すら後悔しているのだから「何も言わない」というのが正解だったのだろう。
「……ところで」
「ん?」
「具体的に『神殺し』ってどうやるんだ? 武器とか……そういったモノがあるのか?」
根岸はそう言いながらアルバイト先で見た事のあるアニメや戦隊モノを軽く連想した。
「ああ。実はそれに関しても先天性……つまり最初から見えていた人と君の様にある日突然見える様になった人との差が部分だね」
「へぇ、どんな?」
そう言いつつ根岸は「わざわざ目を見て確認しなくても分かるんだな」とついさっき神亀が話した『目』の話を踏まえて考えた。
「――簡単に言うと『拳であるかどうか』の違い……かな?」
「……」
神亀の言葉を聞いて根岸は即座に嫌な予感を察知した。
「ちっ、ちなみに……どっちが?」
嫌な予感を感じつつも、自分に関わる事なのでさらに尋ねると……。
「え。最初に見えていた方が武器で後者は拳……だね」
「……」
さすがに神亀も根岸の質問の意図が分かったらしく、言葉の最後の方は尻すぼみになっていた。
「……はぁ」
しかし、何となくこの流れは読めていた。なぜなら、最初に神亀が根岸を選んだ理由を考えれば……自ずと察しがつくからだ。
「まぁ。あんた……冥さんのやり方……スタイルとかは実際にやってみない事には何とも……だろうし、それはそれとして……だ」
「?」
「そうは言われても、やっぱりピンとは来ないな」
これで話は一通り聞いた事になると思うが、やはり実感はあまりわかない。
「確かに俺は小さい頃に事故に遭ったし、体が丈夫なのも……まぁ分かる。ただ――」
正直「マジで死ぬかも……」と『死』を覚悟したのは冥さんが現れたあの場所だ。
「確かにあの時の君も危ない状態ではあった。でも、君が死ぬ事はなかったんじゃないかな……って、私は思っている」
「……なぜだ」
「本来。後天的に『神殺し』になる人は一度臨死体験。つまり死にかける事によってなる場合がほとんど。それでも実際に『神殺し』になれる可能性は一パーセントもない。そして二度は可能性もない」
「……」
「本当であれば後天的に『神殺し』になる人は実際に墜ちた髪に襲われて鳴る場合が多い。いわゆる『覚醒』というヤツだね。だけど、君は違った」
「俺が変だって言いたいのか?」
そう言うと、神亀は首を左右に振る。
「君の場合は環境が悪かった。だから本来であれば学生の頃に覚醒しているはずがここまでズレた」
「……そうか。環境か」
そう言われれば納得も出来る。
なぜなら、学生たちのたまり場になっていたあの神社は根岸が中学を卒業する頃に『ある事件』の現場になっていたからである。
それが墜ちた神によるものだったとすれば……ある程度は説明がつき、それと同時に普通ではありえないモノだったのである。
「でもまぁ、これで良かったのかもな」
「?」
「今だからこそ、俺は冥さんとバディが組めるんだろ?」
「!」
根岸がそう言うと、神亀は「そうだね」と言って笑ったのだった――。
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