第4話


 ただ、自分に自信を持てた事なんて今まで一度もなかったから「自信を持って」という言葉は素直に嬉しい。


「それにしても……俺。神様が見えていたんだな。あっ、じゃあ……あんたは」

「――私は人間」

「だっ、だよな」

「さすがに彼らは私たちと同じ格好はしない……かな」


 神亀は苦笑いをしながら答え、根岸も同じく苦笑いで「だよな」と答える。


「でも、神様が見えていたおかげで俺は助かったんだよな」


 根岸が感慨深そうに言うと、神亀は「違うよ」と答える。


「え」


 コレは予想外の反応だ。


 いや、そもそもこの話をしたのは神亀だったはずだが……。


「君は元々見えていたワケじゃない。あの事故を経て見える様になってしまっただけなんだよ」

「……」


 神亀曰く「生まれた時から見える人」と「様々な要因や偶然見える様になる人」の二つのパターンがあるらしい。


「君の場合は……」

「後者と言う事か」


 根岸としてもそう考える分かりやすいと思った。


「でも、俺は今まで神様をこの目で見た事なんてないぞ」


 改めてそう言うと……。


「いや、君は見えているよ。君の目を見ているとよく分かる」

「目?」


 言われて見ると、確かに神亀は何度も根岸の目を覗き込んでいた。どうやらあれにはやはり意味があったらしい。


「ただ神様が見えるだけって人は実は結構いる。でも『神殺し』が出来るという人は少ない」

「そう……なのか?」

「うん。実は一般人と神様が見えるだけという人はそんなに大差はない。だけど『神殺し』が出来る適性を持つ人は……私たち『神殺し』をしている人間が見ると、目が赤くなる」

「……」


 神はそう言って根岸の目を覗き込む……が、根岸にはその変化は分からない。


「君も私の手伝いをすると次第に分かる様になるよ。決して多くはないけど、同業者もいるから」

「え、あ。そうか」


 元々根岸はアルバイト先に住んでいた様なモノだからあまりピンとはきていなかった。しかし、さすがにたった一人で全国各地にいる神様を相手取る事が無謀な事くらいは分かる。


「あ、じゃあ。つまりあんたの手伝いをしてその時に目が赤い人を見つける事が出来れば、その人は『神殺し』の同業者だって分かるのか」


 ここにきてようやく根岸は「納得」という様子で頷くと、神亀も「そういう事」と頷いた。


「はぁ。でも考えてみたら生みの父さんや母さんを亡くしてから初詣はおろか神社にも行っていなかったからな」


 むしろそういった家族連れが行く様な場所は意図的に避けていたように思う。


「……なぜ?」

「幸せそうな家族を見ていると……どうしても比べてしまうからな。それに、神社と言えば俺が通っていた学校の連中のたまり場だった。そんな時に出る会話の話題なんて家族とか部活動だろ? 神社の催し物だって基本的に家族向けばかりだ。だから……まぁ、結局のところは自分とクラスメイトのヤツらを比較している自分が嫌になりそうだから逃げていただけなんだけどな」


 根岸は自分でこの話を始めておきながら、実は内心ものすごく後悔していた。

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