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 同時刻。第三学園のとある空き教室にて。


「いやーやっぱり教室はいいね。景色も内装も違うけど、何故か中学の頃を思い出すよ」


 後方、窓際の席の椅子の背もたれに背を預けて、○○○○はのほほんとした口調で呟く。


「それってよ、アンタが前に廃校にしたっていうアレのことか?」


 前の座席に座る赤髪のヤンキーそうな少女が、八重歯を見せながら訊いた。


「正確に言うなればボクではないんだけどね。まあ、世界から拒絶されたボクが何を訴えたって、何も変えられはしない。これでも楽しかったは楽しかったんだよ」


「へー、いいねぇそういう思い出があって。アタシにはそういう良い思い出っつーのが無えからよ、ホント、ムカつくぜ。そー言うわけでよリーダー」


 ──ムカつくからぶち殺してもいいか? 

 陽気な笑いからは想像のつかないほどの台詞を言い放ち、しかし○○の様子は変わらず、にやにやと笑みを浮かべるばかりであった。


「落ち着けよバカ渚」


 前の席に着席する一人の青年が、嗜めるように言う。銀色の耳飾りが特徴的な、高身長の持ち主だった。切れ目のある目付きは鋭く、黄色い双眸は片手に持った文庫本に注目している。


「誰がバカだ、アホ敬太。頭良さそうな顔してラノベ読んでンじゃねえよ」


 ブックカバーで隠された文庫本の中身を言い当てる、渚と呼ばれた少女。

 敬太はその顔をひきつらせて言い放つ。


「そこらのものと一緒にするなバカ。白馬先生の書くラノベはただのラノベじゃない。もはや聖書と言っても過言ではない」


 どうやら読んでいるのは白馬創一のものらしい。

 彼を代表する作品であり、近日映画が公開される予定だ。

 制作会社は結構な大手であるため、期待が高まる。


「相変わらずキメー」


「あ゛?」


「まあまあ。落ち着きなよ渚ちゃん。敬太ちゃんも、あんまりバカバカ言わないの」


「……ふん」


 つまらない様に敬太は再度本に目を向ける。


 神薙渚かんなぎなぎさ天司敬太あまつかさけいた

 二人は幼い時からの馴染であり、自称犯罪者だ。

 逃走中に彼──〇〇〇〇と遭遇し、現在も彼と共に行動している。


 友達でも何でもない。ただ、彼の語るものは他の大人たちと比べて魔力的だった。


「取り敢えず『リーダー』」


 前述の通り、何度彼の名前を聞いてもすぐに忘れてしまうので、敬太と渚は〇〇〇〇のことを『リーダー』と呼称していた。


「何が目的だ? あのおっさんを使わなくても、第三都市には入るくらい簡単だっただろ、おまけにあんなおおっぴろげに事件起こしてさ。しかも五本しかない『アレ』を渡すほど、何か琴線にでも触れたのかよ」


「ふ……む。まあ隠すようなことでもないしね。まあ話は簡単だよ。一つはこの都市の防衛設備がどんなものなのか、気になってさ。んま、ようなことはしてないあたり、監督の頭はいいようだね」


 どこからともなく取り出した駄菓子──ねり飴をこねくり始める〇〇。

 あ、アタシもそれ食べたーい! と先ほどの険悪な雰囲気を一切気にしてないように渚はねり飴をもらった。


「最低でも『十傑』の下位メンバーが来てくれれば良かったんだけど、まさかあの場に御幸ちゃんがいるとは思わなくてさ」


 とんだ主人公体質だよねーと、黒色の食欲を唆るには不適切な色合いをしたねり飴をさらに練る。


「まあ、そのお陰でプラスアルファだけどもう一つの目的は達成できたよ。これで康二ちゃんの儚い犠牲は無駄にならなくて済んだ」


「もう一つの目的……?」


 赤いねり飴を口に含みながら渚はつぶやく。


「暴走状態になった能力者を御する方法は色々あるけど、御幸ちゃんは、しかも以前より更に弱体化された御幸ちゃんには真正面から戦うより相手の精神に潜り込む技を使う方が良いと判断しているみたいでさ。まあ、それが一番早いやり方ではあるよね。あの状態の康二ちゃんを拘束するなんて、それこそ殺した方が手っ取り早い」


「だけど御幸は──神代御幸は違う」


「そう。彼は世界最強の能力者だ。それはこのボクが認めるよ。世界を渡ったボクでさえ、彼に敵うような能力の持ち主はいなかった」


「だが白紙楼禊は? アイツはSSSランク能力者だ」


「あんなのただの児戯に等しい。だけど、使い手が使い手だからね、きっと彼以外にあの能力を使いこなせる人なんていないと思うよ。だからあれは例外。──というより、人を殺す覚悟を持ってない人が、持つ人に敵うわけないでしょ」


 結局のところは、彼も絆されてしまった訳だけど。


 ○○○○は面白そうに、そして少し残念そうにつぶやく。


 しかし敬太は納得がいかないのか、どう言うことだと再度○○○○に訊く。


「だからなんだ? 大層な理念の持ち主だと言うことが分かっただけじゃないか」


「大層な理念……ね。まあ本質は違うだろうけど、成長しても何ら変わらない部分に関しては、一種の尊敬さえ感じさせる……そうじゃなくてね、これで御幸ちゃんは間接的にボクの存在を知ったという訳さ。精神のなかに入るということは、その人物の過去を知るということでもある。だからあの時顔を隠さず仲介なしにボクが直接会いに行ったわけ。あと一回かなぁ――それでボクに掛けられた封印は解除される」


 その時だ、教室の後方にある扉が開かれた。

 少し遅れましたと、そんな可愛らしい声が聞こえる。


「やぁ――お疲れ様、有栖川廻ありすがわめぐるちゃん。どうだったかい? 御幸ちゃんの様子は」


 桃色のふわふわとした長い髪。

 制服は少し煤汚れていてはいるが、どうやら彼女はさほど気にしていない様子で。

 髪と同じ色合いの瞳は星のような輝きを秘めていた。


「悪いね、君の教室を使わせてもらって」


「いえいえ。全然大丈夫ですよ~『リーダー』さん。ええ、残念ながら神代さんの実力を測ることは出来ませんでしたが、その……」


「その?」


「す、好きな人ができてしまいました……!」


 きゃーっと赤面して顔を手で隠す廻に、渚が肩に触れてそうかそうかと一緒に喜ぶ。


「これで何回目だっけ? めぐるちゃんが誰かを好きになった回数」


「今年に入ってから落としたハンカチを拾って惚れたのが三回、迷子の時に助けてもらって好きになったのが五回。そしてこれで一回の計九回」


「一年で九回ペースか……ま、そんなもんかな。女子高校生の恋愛なんて。最長どのくらいだっけ?」


「こいつ拗らせタイプだから、告白とかしてないんだよ。そんでまた新しい恋に乗り移るタイプ」


「次はどのくらい持つかねぇ……」


「ちょっと敬太! 『リーダー』も! 女子の恋に口出しすんじゃねェよ!」


 渚が○○○○と敬太に一喝して、廻にそれでと質問する。


「今度は誰を好きになったんだ?」


「渚ちゃんが言ったら意味がないねぇ……」


「ウッセ! それで、それで?」


「えぇっと、まだ顔も名前も分からないんですけど……私を助けてくれて、あんなにも傷ついてまで、私のことを心配してくれたんです」


 あの少年の心遣いと息遣いが、今でも思い出せる。

 確か『謎のチート能力者』? 以前、学校のクラスメイトからそう聞いたことがある。


 誰でも助ける──というところに、同じクラスメイトである神代御幸のことが彷彿とさせるが、しかし彼は流石に敵は助けないだろう。


「けど驚きました。二重に貼っていて強度は脆くなっているとはいえ、まさかあんな簡単に私の『倫理排斥ハバムモノ』が打ち砕かれるなんて」


 有栖川廻の持つ異能力は『論理排斥ハバムモノ』と言うSSランクに近いSランク能力だ。

 あらゆるものを阻害するという廻の能力は、傷口の進行を、毒の速度を、ウイルスの侵攻をも阻む。またそれに留まらず、あのモール一帯を覆った不可侵の障壁もだ。


 確かに強力。だが絶対的ではない。

 御幸やアリシアといった圧倒的な火力を持つ能力者にとってその障壁を壊すのは時間は掛かるが壊せるのだ。


 だが――。


「どうしてあの金髪の人が近づいただけで壊れたんでしょう……」


 金髪の男――山田玄光。

 語るに足りない、ただの群衆モブの一人。

 その過去に同情の余地あれど、多くの人にとって特に記憶に残るような人物でもない。


 廻が要注意していたのは十傑の存在のみ。

 確かに途中で御幸たち『異能課』が乱入することも想定していたが、玄光の存在は最初から無かった。


「山田玄光ちゃんかぁ……ボクの全てを観測する能力『来望鳥瞰ハイストリート』でも見えなかった世界……まあ、要熟考だね」


来望鳥瞰ハイストリート』――千里眼の如くあらゆる場面を見ることが出来る能力。

 過去現在を見ることは可能だが、唯一未来だけは不可能。


「それにしてもだ。廻ちゃんを助けてくれたんだってね。それは感動的だ。ボクじゃなくとも、大抵の人は好きになっちゃうかもね」


「だけどさ――」


 そこで〇〇〇〇は少し意地悪そうに廻を見た。


「もしもその人がとんでもないブサイクだったら? 可哀想なくらい、顔立ちが整っていなかったら?」


 ──君は果たして恋なんてしたのかなぁ?


〇〇〇〇の何かを含んだ目線が、廻に向けられる。


「してますよ、もちろん。だって顔なら幾らでも変えられますけど、性格はそうそう曲げられませんからね。私は整形OK派の淑やかな淑女ですもの」


 ケロッとした顔でそう言う廻に、両手をあげて〇〇〇〇は降参する。


「……そうだったね。君は、元からそういう人。そう言う所が大好きで、ボクは君を誘ったわけだし」


「うふふ。ありがとうございます。ですけど残念ながら貴方とは付き合えませんよ? 私、貴方の性格は大嫌いなわけですし」


「あっはっは。そうだね、何もイエスマンだけじゃ組織は成り立たない。ボクも、二年ぶりに暗躍するからね。そう言うところも大好きだよ」


「つーか『リーダー』の性格は正直アタシから見ても終わってっからなー。ホント、マジで顔が良くなければった斬っていたぜ」


「同感。一度その世界壊してやろうかと思ってる」


「なんだよもうー! みんなったら非道ひどいなー……まあ、でもそうだね。ボクも──感謝してるんだよ、一応」


 背伸びをして、窓の外に映る景色を見る。

 黒色の夜空が、徐々に奥にある夕焼けを呑み込まんとする景色。

 それはまるで世界の終焉を予期させる、そんな風景に〇〇〇〇は──。


「年に一度、世界中にいる『十傑』が一堂に参加せざるを得ない会議──『十傑会議』。ボクはそこでどうしてもやりたいことがあってね……ああ、君たちは不必要いらないよ。腐っても十傑だ──相性の悪い能力者と相手すれば即! やられると思うし現に第二位の子なんて素質ある子だからね」


「つまんねーなー。そんな周りくどいことをせずにさ、敬太の『偽りの世界ワールド・ブレイカー』を使えばよくね?」


 渚が今度は敬太の頭の上に乗っかる形で〇〇〇〇に訊く。

 大の質量を持つ胸が彼の背中に当たる感触に、敬太は本を更に近づけた。


「いやぁ、それは最悪中の最悪だよ。何故ならこの世界には『神代御幸世界最強の能力者』がいる。あの子がやろうと思えば、超遠隔から幾らでもボクたちを殺せるわけだし。ボクも全力を出せば話はまた違うんだろうけれど、それでも彼には敵わないことを二年前に思い知らされたからね……真っ向勝負なんて自殺希望者死にたがりじゃあるまいし。。死んだらそこで終わりだ──逃げるのは、最後の手段でいい」


 それに──と、〇〇〇〇は口元を三日月のように歪ませて空を見上げた。


「第一位──特異系能力者『真理定式アカシックコード』に、個人的な興味があってね。第二位の子もいいんだけど、やっぱり特異系には同じ特異系タイプの方が良いかなって」


「同じタイプ──まだ諦めてないのか? 神代御幸のことを」


「うん。恥ずかしながらね、個人的に大好きな子だし、顔が良くて何よりボクより強い。ほら、世界を壊すのが簡単なのは何だか味気ないでしょ? ボクたちをあんなに苦しめておいて、サクッと壊すのは甘えだ。存分に壊す、手塩を掛けて壊す、苦心で壊す、泣きながら壊す、謝りながら壊す、壊す、壊す、壊す──全て、余すことなく壊す。彼はそれを許せるはずがない。だからね? 彼はボクたちの最高の敵役になってくれるよ」


 そうして○○○○はたっぷり練りに練った飴を口に含む。黒く甘い飴を散々にねぶりつくして、やがて何もなくなった棒きれだけを口から取り出す。



「まあ見ててよ。最高に悲劇的なものにして見せるからさ」



 やがて真っ黒に染まった舌を出して、○○○○は顔を愉快そうに歪ませた。




(以下作者コメント)


 こんなこと書くなら近況ノートにでも書けって話なんですが、近況ノートだとどのくらいの人が読んでくれるか分からないのでここで書きます(読んでくれェ)


 ……さて、この小説をはじめて書いたのが約一年と少し前、最初は「公安部異能課の事件簿」というタイトルで御幸君を舞台装置に、様々な問題を抱える能力者を描こうとしていた訳ですが『もっとキャッチーなタイトルにしよう』という考えになり、結果としてこんな長ったらしい長文タイトルになってしまいました()


 さてタイトルと言えばこの文字化けした変なタイトルですが、実はこれ変換できます。(文字化けテスターで出来ます)


第一部で登場したキャラ、そして新たに第二部で登場したキャラたち。

新たに学園ものとして御幸たちの日常は慌ただしくそして楽しくなっていきます。(箸休め回は海行くよ! 海!)


 そして──一番の謎、未だ正体も名前すらも不明なままでいる○○○○。ちゃんと名前は考えているのでご安心してください。飛びきりの素『敵』な名前です。

 そして本キャラを見るときは現実から切り離して、未来を明るくして見ましょう。劣等感なんて抱く必要ありません。開き直って生きましょう。


 次回――第三部は遂に始まりました『選伐祭』編です。元々は第二部の予定でしたが、話が長かったので二つに割りました。


 第一部から名前は出ている謎の実力者『十傑』。

 そして未だ分からずにいる○○○○達の計画。

 以前と比べて遥かに弱体化した御幸は勝てるのか、いや克てるのか。今回は心情パートメインでしたが次は戦闘メインです。闘いまくります。


 その前に箸休め回として三話か四話ほど出しますね。おふざけ多めの茶番劇です。是非ご一読頂ければ!!









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