第2話 8歳で母上がの件

 僕はユージ。スキル神託の儀式から3年が過ぎたよ。母上は病で亡くなってしまった……

 僕は悲しみを堪えて自分自身を成長させる事に邁進まいしんしたんだ。

 無の男神オノミ様の言葉を励みに自らを鍛えに鍛えたんだ。勿論、我流になるんだけど…… 父上は兄上には優秀な家庭教師を雇うけれども、僕には一切、そんな事はしてくれないからね。


 それでも護衛のレンに教わりながら何とかそれなりに木剣を振れるようになってきたんだよ。


「ユージ様、そこです。左に入る際に踏み込みが甘くなってます」


 レンは母上の護衛騎士だったけど、母上が亡くなってからぼくの護衛騎士兼剣の師として一緒にいてくれている。それは侍女のヤーナもだけどね。そして、遂にその日はやって来たんだ。


 離れに父と継母、それに兄がやって来た。


「クックック、ユージよ、お前が家を出る日がやって来たぞ。あの役立たずの息子であるお前は我が侯爵家には必要ない。このソージが侯爵家を受継ぐ」


「オーホッホッホッ! 何やら一所懸命に自己流で訓練をしていたようだけど、無駄よ! 出ていく前にウチのソージとの格の違いを思い知るがいいわ!」


「おい! クズスキル持ち。俺がお前に世間の厳しさを教えてやる。その木剣を構えろ!!」


 僕がレンと2人でいつもの訓練をしている時にやって来た3人はそう言ってきたんだ。僕は出て行けと言われたらそのまま素直に出て行くつもりだったのに、この人たちは痛めつけて追い出すつもりらしい。レンが僕を庇うように前に出るけど、僕はそんなレンを手で制して前に出た。


「ユージ様……」


「レン、やれるだけやって見るよ」


「畏まりました」


 木剣を構えて前に出た僕を見てソージがニヤリと笑いながら同じく木剣を構えた。


「先手を許してやる。かかって来い!」


 ソージのスキルは【剣神】だ。剣を持たせたら向かうところ敵なしという破格のスキルを持っている。僕はレンによって基本だけを教わり、後は我流だからとてもかなわないだろう……

 でも、それでも母上を馬鹿にするこの人たちに一矢報いたい!!


 僕は木剣を下段にしてソージに向かって駆け出した。


「クックック、奇手が俺に通じると思うなよ!」


 下段から振り上げた僕の木剣はアッサリと躱されて、ソージの木剣が僕を襲う。辛うじて受け止めたけど手が痺れて木剣を落としてしまった。


 そこに容赦なく打ち込まれるソージの木剣に僕はなす術無く倒された。


「アーハッハッハッ、どうだ! コレがクズスキルと優れたスキルの差だ! クズはこの家を追い出されて野良犬のように野垂れ死にしろ! そして、俺が先祖であるサンマトウジと同じように斬撃無効のスライムをスパスパ斬るようになるのを、草葉の陰で聞け!」 


 厳密に言わなくても兄上は偉大なご先祖様トウジの子孫じゃないよ。養子の父上に側室である兄上の母もシェンマー家ともセェンマー家とも関係ない家の出だから。でも僕はそんな兄上に負けてしまった。悔しさを堪えながら離れに入り家を出て行く。レンとヤーナには母上の隠していた財産から既に退職金を支払っていた。2人は僕に着いてこようとしたんだけど、僕は母上が亡くなる前に書いた紹介状を手渡して、セェンマー家に行くように厳命したんだ。

 幸い、セェンマー家はマトモな侯爵家だ。我が家のような人たちは居ない。セェンマー家ならばこの2人も安心して働けるだろうから、どうかセェンマー家の僕より年下の娘をこれからは守ってやって欲しいと、母上からの伝言を添えて2人に行って貰ったんだ。


 僕は…… 生前の母上が言っていた通り、シェンマー家が管理していた【筈】のダンジョンに向かっていた。今の僕は弱い。だから、母上の言っていた偉大な存在に会う為に、僕は行かなくちゃいけない。場所の地図は母上から貰ったから、僕でも行ける筈だ。魔物が出てきた時は頑張って逃げようと思う……



名前:ユージ・シェンマー(トウジの心を受継ぐ男児)

性別:男

年齢:八歳

職業:【無職】神級職

レベル:3

生命力:35 魔法力:30

体力:26  魔力:24  器用:29  敏捷:31(+3)

攻撃力:36(小刀+16)

防御力:25(旅装束+12)

スキル:【将棋の駒こま

 【歩兵級】 剣技 体術 

香車きょうしゃ

 【斥候級】 隠密 敏捷微上昇 気配察知 


 コレが今の僕の力だ。とてもじゃないけど角うさぎすら倒せない…… 一所懸命に訓練したけど中々上がらないよね。でも、僕は諦めないんだ。だって、スキルが増えたからね。これも努力の賜物だから。


 そう決意を新たに僕はダンジョンに向かっているけど、何故か人にも魔物にも会わずにアッサリと着いてしまったんだ。


「こ、ここがダンジョンか! でも入口にもつたからまってるから誰も入ってないみたいだね」


 僕は恐怖心をまぎらわす為にそんな独り言を言いながら蔦を切ってダンジョンに入ったんだ。そして、一歩目を確かに踏み出したのに、入口から入った場所じゃない所に立っていたんだよ…… ここ、何処ですか……


「パパー、やっと来てくれたーっ!!」


 トテトテと僕に向かって歩いてくる幼女(3〜4歳ぐらいかな?)が居る。パパ? 僕は自分の後ろを振り返る。でも、誰も居ないよね。


「もう〜、パパ、遅いよ〜。私の自我が芽生えてから2回ぐらいしか来てくれなかったから寂しかったんだよ〜。で、ママたちは? パパ?」


 僕に向かってそう言ってくる幼女。一体何の事? だ、誰か説明をお願いしまーすっ!!


 

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