僕のスキルが(将棋)駒だった件

しょうわな人

第1話 ユージの件

 僕の名前はユージ・シェンマー。シェンマー侯爵家の次男なんだ。今日、やっと5歳になった僕は敷地内にある教会で、スキル神託の儀式を受けれるんだ。


 僕は侍女のヤーナと護衛のレンと一緒に敷地内にある教会に向かった。僕は母上と一緒に離れで暮らしているんだ。ヤーナは母上専属の侍女だけど、他に居ないから僕にも付いてくれてるんだ。


「ユージ坊ちゃま、そんなに急がなくても大丈夫ですよ。教会は逃げませんから」


 ヤーナはそう言って走る僕を注意してくる。でも僕は本当に楽しみにしていたから、ここで凄いスキルを授かって、母上を助けられるように頑張りたいんだ。だって、僕は侯爵家の次男で母上は正室なのに、離れに住まわされている…… それもこれも婿養子の筈の父が、爵位継承権を無視して側室の継母が産んだ兄の事を嫡子扱いしているからなんだ。

 正確に言えば父の爵位は侯爵じゃないにも関わらず、そんな事がまかり通っている。ゴルバード王国がいい加減な国になってしまった証拠なのかも知れないね。

 僕の偉大なご先祖様である、トウジ・サンマが守った王国も長い年月ですっかりと腐敗してしまったそうだよ。コレは母上からの受売りだけどね。


 僕の母上はシェンマー家の令嬢で爵位は勿論、侯爵位だ。父は婿養子で、お祖父様、お祖母様が生きてらした頃は大人しかったそうだけど、お二人が亡くなった後にその本性を表したそうだよ。


 僕の家はトウジ・サンマの妻の1人、サヤの系譜に連なる家なんだけど、その事を知って守っているのは既に母上と僕、それに護衛のレンと侍女のヤーナだけになってしまった。そんな母上を守る為に僕は今日のスキル信託の儀式を楽しみにしていたんだ。


 教会に駆け込む僕が見たのは、1年ぶりに顔を見た父ハーデンと、継母のマーサ、その息子で僕の兄になるソージが揃っている事だった。


「フンッ、やっと来おったかっ!」

「本当にとろくさい子だこと……」

「俺の弟がコイツだというのは恥ずかしいな……」


 三人三様の言葉を無視して僕は無の男神オノミ様の神像に祈りを捧げた。シェンマー家ともう1家、マコトの系譜に繋がるセェンマー家での決まりで、男子は無の男神オノミ様に、女子は有の女神メノミ様に祈りを捧げる事になってるんだ。


 そして、教会の白壁に僕のステータスが映し出された。



名前:ユージ・シェンマー(侯爵家次男)

性別:男

年齢:五歳

職業:無職

レベル:1

生命力:15 魔法力:15

体力:10  魔力:12  器用:18  敏捷:15

攻撃力:10(武器無し)

防御力:8(防具無し)

スキル:駒



「クックックッ、あれ程私に自慢してきたトウジとやらの血筋がコレか? 突出した物もなく、スキルが【駒】だと? 何の駒だ?」


「あの高慢ちきな女の息子ですものね、コレほど役に立ちそうもないスキルでもしょうがないわ。それに比べてウチのソージは、剣神よ!」


「父上、これでこの侯爵家は俺が正式に跡取りですよね! 王家にも了承してもらえますよねっ!」


「ああ、勿論だとも。この侯爵家にクズは要らぬからな! 病弱なアイツが亡くなったら直ぐにでもコヤツは追放だっ!!」


 勝手に話を進める三人を無視して僕は敷地内の教会を出て、離れに急ぐ。


「母上、僕のスキルは【駒】でした! 何のスキルなんでしょうか?」


 僕はベッドで横になっている母上にそう聞いてみた。


「アラ、ユージ。もう教会に行ってきたのね。それじゃ、スキルについては教えてもいいけど、貴方が自分で知る方法もあるわ。【ステータス】と頭の中で思ってご覧なさい」


 僕は母上の言うとおりに頭の中でステータスと唱えてみたんだ。


 すると……


名前:ユージ・シェンマー(トウジの心を受継ぐ男児)

性別:男

年齢:五歳

職業:【無職】神級職

レベル:1

生命力:15 魔法力:15

体力:10  魔力:12  器用:18  敏捷:15

攻撃力:10(武器無し)

防御力:8(防具無し)

スキル:【将棋の駒こま

 【歩兵級】 剣技 体術 生活魔法


無の男神オノミの祝福の言葉】

✱己を高めていけば新たなる駒のスキルが目覚めるだろう。精進しなさい、我が友トウジの心を受継ぐ子よ。

  


「は、母上、コレは……」


「何か良いものが見られたかしら?」


「はい! 僕は必ず母上を守ります!!」


「フフ、有難う、ユージ。でもゴメンね。母はもうすぐ天に召されます。貴方は恐らくは追放されるでしょうけど、追放されたならば先ずはシェンマー家とセェンマー家が共同で管理している【筈】のダンジョンに行きなさい。【筈】だというのはもはや誰も管理してないからなの。でも、そこで貴方なら出会える偉大な存在がいるわ。母はもう少し貴方の成長を見守ってから旅立つわね」


「そんな…… 母上! 嫌だーっ、居なくならないでっ!! 僕を置いて行かないで! 母上ーっ!! うわーーーんっ!!」



 僕は大声で泣いてしまい、そのまま母上に優しく撫でられながら、母上のベッドで泣き疲れて眠ってしまった。



有の女神メノミ様、お恨み申し上げます…… 私はこの子の成長を見守りたかったです……」


 ユージの母、サヤネールが泣き疲れて寝てしまったユージを愛おしそうに撫でながらそう呟くと、


『ゴメンね〜、私も本意ではないのよ…… でも、本当にゴメンね。今は謝ることしか出来ないわ……』


 と、脳内に有の女神メノミからの声が響いたのだった……

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