第3話 コアのコクア参上の件

 僕がパニックになってアワアワしていたら、幼女の後ろがキラキラ光り輝いて、絶世の美女が現れたんだ。


「まあまあ、懐かしい気配を感じたから慌てて飛んで来たら、アナタは誰なのかしら? トウジ様と同じ気をアナタから感じるけれど?」


 僕はビックリしながらもしがみつく幼女の頭を撫でながら喋った。


「あ、あの、僕はユージと言います。今は家を追い出されたので只のユージです。元はシェンマー侯爵家の者ですので、怪しい者ではありません!」


 ここで要らぬ誤解を受けたら始末されるかも知れないと思って必死になって言ったんだ。だって現れた美女さんの気は僕を圧倒しているからね。今の僕では相手にもならないよ。


「シェンマー…… サヤちゃんの系列の侯爵家ね! まあ、それじゃ貴方はトウジ様の子孫なのね。それにしても、ここまでトウジ様と同じ気を発してるなんて! 大変だわ、旦那様にもお知らせしないと! ちょっとだけ待っててくれる? コクレ、貴女もこのお兄ちゃんと一緒に少し待っててね」


「はーい、お母さん!」


 えっと…… 色々と僕が混乱してるのを見ながら美女はこう言いながら消えた。


「あ、私はコクアよ。今から旦那様をよんでくるから、待っててちょうだいね!」


 こうして僕はしがみつく幼女とこの場に残されたんだけど、ちょっとだけ幼女に質問をしてみた。


「あの、コクレちゃんだよね。僕はユージって言うんだけど、さっきの綺麗な人がコクレちゃんのお母さんなの? でも僕に最初に会った時に【ママたち】って聞いたよね? わかる範囲でいいから教えてくれるかな?」 


 僕が頭を撫でながらそう聞くと、コクレちゃんが教えてくれた。


「えっとね、私はさっきのお母さんと、パパの魔力で産まれたの。でも成長するのに、たーくさん、魔力が必要だったから、パパと一緒にママたちが私に魔力をくれたの。サヤママとマコトママ、アカネママとエルお姉ちゃんにフィオナお姉ちゃんが居たよ。でも、私にこの身体を創ってくれて、2回ぐらい会いに来てくれた後は、みんな来なくなっちゃったの。お母さんとお父さんだけが会いに来てくれるようになったけど、今日はパパも来てくれたから嬉しいの!」


 いや、だから僕はパパじゃないんだけど…… 返事に困っていたらまたキラキラが出たので僕はジッと見つめた。するとさっきのコクアさんともう一人、男の人が現れたんだ。


「おおーッ!! 本当にトウジと瓜ふたつの気じゃな! そうかそうか、ユージと言うのか! クズスキルと家の者に言われて追い出されたんじゃな。よし、お主は今日からサンマを名乗るが良い! サンマ・ユージがお主の名じゃ! なに、我が許可を出すのじゃから心配ないぞ!」


 えっと、またまた誰なんでしょうか…… 僕を数秒見つめただけで僕の事情を知るなんて事が出来るのは神様ぐらいしか居ないと思うのですが……


「ん? そうじゃよ、我は神じゃよ。金精の名に聞き覚えは無いかの?」


 こ、こ、金精神様ーっ!! 僕は飛び上がった後に平伏したよ。ジャンピング土下座って言って、元の我が家に伝わる最高の謝り方なんだ。


「あ〜、お父さん、パパをイジメちゃダメだよ〜」


 コクレちゃんがそう言うけど、僕はコクレちゃんを見て違う違うと首を横に振ったんだ。


「いやいや、コクレよ。イジメてはおらんぞ。ユージが勝手にしたんじゃ。それで、ユージよ。何でこの既に機能しておらんダンジョンに来たのじゃ?」


 コクレちゃんはコクアさんに呼ばれてそちらに向かった。僕は金精神様の質問にお答えした。


「は、はい! 家を追い出されましたが、僕は偉大なご先祖様、サンマ・トウジのように好きなように生きて、自分の手の届く範囲の大切なモノを守りたいんです! でも、まだまだ幼く力も無い僕では無理なので…… 生前の母がもしも家を追い出されたならば、ココに来ればいいと教えてくれて、ココには偉大なお方がいるとも聞いておりました! 金精神様の事だと今なら分かります」


「ホホウ! お主の母は良くできた女子おなごだったようじゃな…… (そうか、言っても構わぬか……) ユージよ、お主の母は死後に有の女神メノミの眷属となって神界で仕事をしておる。そして、お主を今も見守っておるぞ。(それにしても、そうか…… 無の男神オノミの奴め、我の性格を利用しおってからに……) まあ、良い…… お主のスキルは貴重なモノじゃ。トウジの持っておった【】に匹敵するほどのな。そうじゃの…… 12歳までココでお主を鍛えてやろう。そしてトウジの使っておった刀技の無効流むこうりゅうを教えてやろう。まあ一朝一夕には身につくまいが…… 今では誰も使い手が居らぬからの。お主が相応しいと思う。12歳になったらココを出るのじゃ。それまでは我とコクア、コクレと一緒にココで過ごすのじゃ」


 僕は母上の言葉に従って良かったと思った。尊敬する偉大なご先祖様トウジの使っていた刀技まで教えて貰えるなんて! 今の世には斬撃無効のスライムを斬る事が出来る人はランクの高い冒険者にも、ましてや高名な騎士の中にも居ない。シェンマー家に伝わる話だと、ご先祖様トウジの二代目までは使えたそうだけど、その後の子孫では誰も使える者が居なかったらしい…… 今では子孫である人たちも含めて眉唾だって言ってるけど。僕がその技を受継ぎ、復活させるんだ! 


 決意を胸に秘めて金精神様に僕は頭を下げた。


「サンマ・ユージ! この名に恥じぬように精進致します! よろしくお願い致します!」 

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