21:目覚しい成長速度

 バスターズの結成から二週間……。

 子供たちはみんな、想像以上に訓練を頑張っている。これは嬉しい誤算だ。


 ――ただ、嬉しくない誤算もあった。

 成長速度が……なんだか目覚ましすぎない!?


「やっ! はァ! せいや!」


 カントが金髪を振り乱して、剣に見立てた木の棒をムキムキと振るう。

 二週間前に素振りから始めたばかりとは思えないキレの良い動きだった。


「……甘いぞカント! そらっ!」


「ぐわーっ!」


 そんなカントのムキムキ剣術を、対戦相手の少年は見切って手痛いカウンターを叩き込む。

 哀れカントは頭をゴンと叩かれて、勝負ありだ。


 …………というか!

 いつの間に模擬戦形式の訓練なんかしてるというの!?

 教えてないわよね!?


「ちょっと、あんたたち。何してんのよ勝手に……危ないでしょ!」


「げっ! カリン様! いやこれは、そのー」


 げっ! てなによ。げっ! って!

 ……まあこの調子だったらそろそろ模擬戦も視野に入れていたのは確かだけど……やんちゃ盛りの子供たちなんだから、どうせ私がいない時を見計らってチャンバラごっこして遊んでるんだろうなーとは思ってたけど……。


 なんか、面白くないわね。

 ……カントと、その対戦相手の少年に罰を言い渡すことにした。


「カント! それから、ハイレン! 私の言うことを聞かなかった罰よ。明日はアレンドーおじさまの畑を手伝いに行きなさい。いいわね!」


 顔を青くする二人だった。

 これがもし実践なら、私の知らないところで好き勝手されちゃたまったものじゃないわ。

 こうして、たまには鞭で厳しく教えてあげないと、この子たちの手綱を握るのは意外と難しいのだ。飴だけじゃワガママになってしまう。


「それじゃ、私は魔法組の様子を見てくるから。みんなも彼らみたいにむやみに戦っちゃダメだからね!」


 そう言い残して踵を返す。

 だけど魔法組も……かなり優秀なのよね。特に水見で一番やばかったアルクは飲み込みが早くて、他の子供たちにも頼られてる。

 ぶっちゃけ、今の段階でもう私が教えることなんてないほどだ。


 ……やっぱ、剣術組を先に鍛えちゃいましょう。

 模擬戦も私が直々に相手になるなら怪我もさせずに済むと思うし……。


 いっちょ揉んでやりますわ!


「あなたたち! やっぱり予定変更よ! これから私が直々に模擬戦の相手を――は?」


 急遽戻ってみれば……そこには、どこから湧いたか、子供たち以外の人物がいた。


「あ! 見つかっちまったか!」


 ――冒険者オージン!?

 なんで彼がここにいるのよっ!

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