6:ゴミスキルと共にいざ地獄のダンジョン

 女神の顔が明るく色付く。

 おいおい心を読むな。ちゃんと口頭で、お前の意志に誠意を持って答えてやる。

 なんかそれっぽい口上付きでな!


「女神様」

「はいっ!」


 いちいち返事せんでいい……まあいい。


「此度の使命、しかと承りました。必ずや魔王を討ち、世界に光を取り戻してみせましょう!」

「はわ……カッコいい」


 思わず噴き出す。女神の呟きに、俺の顔面はたちまちマグマとなった。

 とろんとふやけた目で見つめられれば誰だってこうなる。


 ああ、くそ。

 全裸なの忘れてた。

 今俺、すげえかっこ悪いぞ……。


「勇者様、ありがとうごさまいます。それでは……これは、カッコいい勇者様への、私からのサプライズです。七人の勇者様に与えるはずだった持ち込みアイテム枠と、ユニークスキルを授けましょう!」


 突如として足元に広がる魔法陣。

 異世界への召喚が始まったのだろう。段々と周りの景色がぼやけて、意識が遠のいて行く。


 アイテムもユニークスキルとやらも、一気に八倍になっちまった。

 色々あったが女神様にも気に入られたみたいだし、今はただ幸先のいい異世界スタートに胸が踊った。

 

 最早目を開ける力もない夢うつつの最中、クスクス笑う愛らしい女神様の声を聞いた。


「うふふっ。私、勇者様のファンになっちゃいました。でもあれが最大限のサービスですよ。――さあ、最弱ステータスとゴミスキルで、どんどん成り上がって魔王を倒して下さいね! 楽しみにしています!」


 …………え?

 最弱……え? ゴミスキル……え?

 それ、ブラフじゃ、ないの? 俺を試すための…………え?


「あ、ちなみに、勇者様はこれから地獄すら生ぬるいと思えるほどの恐ろしいダンジョンに召喚されます。そこは魔王よりも凶悪なモンスターと堕天した神々らの牢獄となっていて、これまで生きて脱出した者は一人といません」


 ……え?


「うふふ。弱いままでは彼の世界の皆様に申し訳ないじゃないですか。そこは神としての沽券にも関わるので、強くなってからカッコよく登場してもらいます。しかも、何よりも強くなってから、です!」


 ……え?


「さあでは、勇者様! いってらっしゃいませ! そして見事ダンジョンを攻略し、世界を救うのです!」


 ……え?


 抗議。文句。命乞い。

 それら全て、朦朧としていた意識がいよいよブラックアウトしてしまったため、声になることはなった。


 ただただ、ただただ疑問符ばかりが思考を支配し続けた。

 それはやがて、一つの意思に集約する。


 あのクソ女神!

 次会ったら絶対にぶん殴る!

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