4:駄女神たるゆえん
女神は落ちぶれ勇者の成り上がりが好き。
また、女神様は異世界の平和を求めてる。
そして俺にその両方の需要を満たすように求めたわけだ。
そのことについて俺から一つ言わせてもらう。
公私混同してんじゃねええええええよ!
何で俺一人に二つも使命を重ね掛けしてんだ! 成り上がり譚なんてそんなもの、少なくとも人類滅亡の危機から脱してから思う存分楽しめばいいじゃない!
「そうもいきません。なんせあっちの世界の人々が勇者召喚の儀を行おうなんて、それこそ魔王が現れて人類滅亡の危機に直面した場合くらいしかないですからね。次にチャンスが巡ってくるのは何千年後かわかりません。しかも、どうせその時だって人類に危機が迫ってるんです。これは問題の先延ばしでしかないんですよ!」
女神はおもむろに指先を――。
「ま、待て! やめろ! 何でもかんでも女神ビームで解決しようとするんじゃない! わかった! わかったから!」
わかって頂けましたか! と女神は機嫌を治してニッコリ笑った。
俺にはこいつが魔王に見える。
「そんなわけでですね。貴方様の世界からの持ち込みアイテムはしっかりと選んで欲しいのです! なんせステータスがゴミですからね。吟味して下さい!」
開いた口が塞がらない。
なんて、自分勝手な女神だ。
天真爛漫な口調と美しい見た目こそ女神たる存在らしくある。だが本性は、人の命を弄ぶことになんら躊躇いもない――神という傲慢な名にふさわしい存在だった。
自身の娯楽のために人を虚弱体質に作り替えるとか、正気の沙汰じゃない。
「それと、勇者様には当然、女神の祝福として【ユニークスキル】を一つ、プレゼントいたします。魔法やスキルが最も重要なこの世界においてそれは勇者の証であり、どのような勇者として成長していくかの指標となるでしょう」
……まあ、そうだよな。
流石にゴミステータスと地球から持ち込んだアイテム一つで成り上がれるなんてうまい話はあり得ない。いやそんな事ができる奴こそ本物の勇者だろうが、あいにく俺はどこを切り取っても一般人だ。
それくらいしてもらって、ようやくスタートライン――が、遥か彼方にうっすら見えてきた程度だろう。
とりあえず、いく分かマシになった勇者の待遇に、ほっと胸を撫で下ろす事ができる。
……女神がクスクス笑う姿に、疑念は拭いきれないがな。
そしてそんな不安を笑い飛ばして、女神は鈴鳴りの声を放った。
全くもって、無慈悲に。
「そんな女神の祝福を、今回はもう【絶対に役に立たないゴミスキル】として、勇者様に差し上げます! ああ、これでどうやって強くなるというのですか!? 今から楽しみで仕方ありません!」
終わった。
ごめん、俺を待っているであろう異世界人たちよ。
勇者はこない。
女神の私利私欲のために、一般人以下のゴミステータスと絶対に役に立たないゴミスキルを併せ持つ、勇者として最も相応しくないゴミがデリバリーされるだけだ。
確信した。
なぜ俺に至るまでの全ての勇者候補がそれを辞退したのか。
こんな不条理な条件で異世界に行けだなんて、どう考えたって割に合わない。
なんたって頼まれた側がそんな縛りプレイじみた方法で異世界攻略をせにゃならんのだ。
それも失敗したら、待ち受けるのは凄惨な死だ。
ゲームのようにやり直しはできない。
当然リセットボタンなんてない。
この女は、なぜ笑ってそんな事を要求できるんだ?
我慢の限界だ。
クソ女神に中指を立てて、唾を吐き捨て言い放つ。
「お前のオモチャになるのはまっぴらごめんだ。異世界共々勝手にくたばってろよ」
――神への反逆。
そう捉えられても仕方があるまい。
ここまで無慈悲な女神なのだ。使えないコマと判断された場合、天罰と言う名の死刑が下ることは目に見えている。
だがどうしても我慢ならない。
神だからといって、人間を自分の思い通りに操ろうなんて考え方が気に食わない。
例えまた女神ビームで脳みそドロドロになるまで洗脳を受けようと……このまま地獄に落とされようともだ。
神に逆らってまで自分の信念を貫いたんだ。
それだけでもう、俺は大きな事を成したと言えるんじゃないか?
うん、なら死して悔いはない。
どのような咎も受けよう。しかしそれは、決してお前に屈したことにはならないからな。
ざまあみろクソ女神!
そんな俺に対して女神が放った言葉がこれである。
「ええ!? こ、困ります! 勇者様に来て頂けないと、彼の世界は破滅しかありません!」
――じゃあ待遇良くしろよクソ女神いいいいいい!
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