第12話

秋川はちょっと甘えん坊で私が頭を撫でてあげると嬉しがる。秋川は料理が上手だけど、凝り性な所があってカレーを作るのに二日もかける。私なんて30分で作るのに。


秋川は笑顔が可愛い。笑うと秋川の塩顔は私の好きな可愛い系の顔になる。秋川は曲のチョイスが古いけど、カラオケが上手い。初めて秋川とカラオケに行った時は綺麗な歌声に感動した。


秋川は私を甘やかすのが好きで、私が秋川の大事なコップを割っても叱らないし、私が甘えると嬉しそうに目尻を下げる。


秋川の事を知れば知る程、好きになった。

お説教ばかりするムカつく大嫌いな先生だったのに。


余命半年なんてウソ……つかなければ良かった。

秋川に会う度に罪悪感が募る。私のウソを秋川は少しも疑う様子はない。私が疲れた様子を見せれば「大丈夫か」って体調を心配してくれる。


ウソをついている事が苦しい。だけど本当の事も言えない。


余命半年が嘘だとわかったら、秋川が離れていくようで怖い。秋川が私の彼氏になってくれたのは私を好きだからじゃない。


まだ一度もキスをしてくれないのはきっとそういう事だ。


私は余命半年のガン患者を演じ続ける為に、ガンについての治療法や、どういう過程で進行していくか勉強するようになった。


ウソがバレるのが怖かった。

半年後にバレるのに。


でも、それは秋川も同じで、半年後の私たちは互いに嘘をついていたねって笑っている気もする。だって死なないんだから。だから半年が過ぎる春ぐらいに打ち明けてもいいのかと思った。


そんな風に考え始めた時、秋川はドキっとする事を言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る