第5話

「ああ、シートまで濡れてらあ。派手にかけられたね。あんな断わり方するからだよ」


藤井というウェイターが夏美がいた所に座った。


「藤井、バイト中だろ?」


「今、休憩時間に入った所。先生がいたから様子を見に来たんだ。聞いてたよ。相変わらず秋川先生はおモテになりますね。そういえば、俺が予備校に通っている頃も、女子に告白されて、水ぶっかけられたよね。あの時も余命半年とかって言ってなかった?」


「藤井、相変わらず記憶力だけはいいな」

「それで先生と同じ国立難関大に入りましたから」


知らなかった。秋川って、国立難関大卒なんだ。

やっぱ頭いいな。


「断る理由が変わってませんね。先生」


えっ、断る理由って?


「仕方ないだろ。生徒とは付き合えないんだから」

「だからって、余命半年はないんじゃないの」

「手っ取り早く諦めてもらうには余命半年が丁度いいんだ」


手っ取り早く諦めてもらうって……余命半年って嘘って事?


あー!


私、騙されたんだ! 

秋川病人のふりなんかして酷い!


本気にしたのがバカみたい。秋川ムカつく!

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