第4話
「ごめん、俺、余命半年なんだ」
秋川から出た言葉に由美ちゃんが目を丸くする。
「鈴木、俺の事は忘れてくれ」
「はあ? 先生、何の冗談ですか?」
「いや、冗談ではないんだ」
「先生、その断わり方ずるいです。私、そんなに魅力ないんですか?」
「ごめん。受験が終わった後も鈴木の気持ちには応えられない。下手をすると俺、死んでるかもしれないし」
「先生、酷い! そんな嘘までつくなんて」
パシャと水がかかる音がした。
これはもしや、秋川が夏美にコップの水でもかけられたのか?
「わかりました。失礼します」
怒ったように夏美が席を立ち、そのままファミレスを出て行った。
由美ちゃんを見ると両手を口に当てて、笑いを堪えているよう。私も由美ちゃんの顔を見て笑いたくなる。しかし、このタイミングで笑ってはさすがに可哀そう。だって秋川は余命半年……。
「先生、余命半年はないんじゃないっすか」
ウェイターが先生の席にやって来て、おしぼりを渡す。
「藤井、すまんな」
秋川の知り合いのよう。
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