オメガバース・オムニバス GL編 甘い香りΩサイド

双子ちゃんに笑顔でお出迎えされ、リビングに通される。


「おーーーーーーー???!!!」


通されたリビングは、

色とりどりの折り紙でつくられた輪っかの壁飾りに

【ようこそ!おにいちゃんおねえちゃん】の文字。

机も子供が使える裁縫ホッチキスで組み合わせたであろうオシャレ縫い合わせの敷物が掛かっていた。


「これはすごいな…頑張ったんだね。ありがとう」


友人は双子ちゃんのあたまをナデナデしている。

めったに感情を顔にも行動にも見せない男なので、

かなり嬉しいまたは、感動している。絶対そう。


「ここ!ママがね!フリフリのやつつけてくれたの!!可愛いでしょ!」


双子の妹ちゃんが私の手とママさんの手を引いて、布についている重ねレースをよく見える位置まで近づけてくれる。


「うん!すごく可愛い!!みせてくれてありがとうー!」

「へへー!ママとおにいと頑張ったの!」

「ママ、がんばりました!」


(可愛い生き物達がいる…助けて友人…) チラッ


(面倒くさ、自分で堪えきって乗り切って) 首振り


「おねえちゃん、ここ座って!クッションどうぞ」

「おにいちゃんはこっち。クッションこれどうぞ」


色違いのクッションに案内され、腰を落ち着かせてすぐに、作ってきたマカロンをケースごとだして親子にプレゼント。


友人も福面ランナーとぷにキュラをそれぞれにプレゼントしていた。ママさんにもなにか紙のようなものを渡していたが、知り合いに頼んだなにかだろうと思ったので、気にしないことにした。


――そして突然思い出した。


「ママさん!!!!!!双子ちゃん!!!!」

「あ!」

『!!???!!』

「はい!??!!!」


「最初にお伝えしようとおもって、伝え忘れていたのですが私と友人は、Ω性なんです!!!!!」

「失念してしまいすぐお伝えせず、すみません…」


思い出した勢いだったが、なんとか伝えることができた。双子ちゃんにも流れで伝えてしまったが、あとは親子の反応次第。


「…そうなの?…あっ!たしかにチョーカー!」

「髪の毛で見えづらくしてて…すみません…」

「いいの!!そうなのね…今は大丈夫?辛くない?私達親子は、全員α性よ。でも、襲ったりしないから安心してね」


…心配されてしまった。なにより、Ωを引かずに受け入れてくれた。とても嬉しい。


「友人ともしもの話は、事前にしてあるのでご心配にはおよばないです!…ありがとうございます!」


「こちらからお呼び立てしたのに、たくさん気を使わせてしまっていたらごめんなさい…滅多なことがない限りは、いつでも子供と遊んであげてください。そのほうが私も子供たちも嬉しいわ!」


めったなこと、ヒート。双子ちゃんにはまだ早い。

だから明言はしないけど気をつけなきゃならない。


「おにいちゃんおねえちゃんがつらくてさびしいときは、おいしゃさんしに会いに行くから!!大丈夫だよ!」

「ぼくも行くよ!」


…多分それができない。風邪とかではない限り。


少しの沈黙。長いようで短い空白。


「うん。ありがとう。でもね、お兄ちゃんには看病してくれる頼もしい人いるから大丈夫だよ」




…なんて?


『ほんとー!!!!!??だれーー!??!』


双子ちゃんがキラキラした興味津々の瞳で、沈黙から飛び出るように友人の話にくいついた


私はといえば、初耳も初耳。

沈黙を破るためのデタラメか、まさかの本当か。


「優しくて、頼もしくて、可愛い人だよ」

「しゃしん!しゃしんないの?!」

「おかお、みたーい!」


ないよ、と友人は爽やかな笑顔で答えていた。


(優しくて、頼もしい。…もしかして?)


友人の交友関係から無粋なことを思案していたら

、ふわりと甘い香りがただよってきた。


「お姉さんには、頼もしい人いる?ママさん、気になるわ〜!恋バナしましょうよ!あっちもしてるもの!」


前にもらった紅茶クッキーのほのかな甘い香りとママさんだった。やっぱり良い香りだ…気が緩む。


「食べながらでもいいですか?」

「もちろん!ゆっくりお話しましょう〜!」


そこから、友人と子供、私とママさんでそれぞれの話をたくさんした。


伝えたことは、自分は心理学専攻の一年生で、友人が生物細胞学と薬学専攻の大学院生であること。

得意料理、恋愛経験の有無(失恋したことはある)と

Ω専用の大学寮に住んでいること。


聞いたことは、ママさんが未婚のα母であること。

相手が同じα女性だった事。子供たちがいてよかったと毎日思っていて、後悔は何一つ無いこと。

お仕事は、家族でペットシッター。料理全般が得意。恋愛経験は手のひら。


「たくさん話しましたね…」

「そうね…外が暗くなり始めちゃったわね」


秋の終わり、冬になりかけの時期。

日が落ちるのが早い。ついでに寒くなる。


「そろそろお暇する?」

「そうだね。そろそろ暗くなるので帰ります」


よく考えたら大学寮の門限もあった。結構やばい。

少し急ぎ気味で、荷物をまとめはじめる。


「ふたりとも、かえる?」

「かえっちゃう?おとまり会しない?」


双子ちゃんが寂しそうな目をしている。 ぐぅ。


「おにいちゃんおねえちゃんはね、

学校の大切なシンデレラだから帰らないと会えなくなっちゃうよ?」

『…わかった』


(わかるんだ)(なんかよくわからないけど助かった)


ママさんの不思議な説得話術に、友人と目を丸くしつつ無事に帰れることになったので玄関で見送りをしてもらうことになった。


『おにいちゃん、おねえちゃん、また来てね』


双子ちゃんが友人と私にそれぞれ順番にハグをしてくれた。可愛い〜。子供特有の香りがしたー。

という顔をしたら友人に


(変態がよ)


といった感じに、引いた目をされた。気にしない。


ママさんもハグしたそうだったが

友人は性別的にも例の人のためも一応の一線で握手になった。すごく手をブンブンされていた。


私といえば、ハグを勢いよくお願いした。

温かいし、ママさんはふんわり良い香りがする。

やわらかくて、落ち着く。


(こう、なにかが満たされる…気がする)


離れがたい気持ちがでないうちに強めのハグをこちらからもして、ガバっと離れた。


「では、おじゃましました。また」

「またね!ママさん、双子ちゃん!」

『またねー!!!!』


寮に帰ってからというもの、元気いっぱいに手を振る双子ちゃんと、優しい笑顔でゆっくり手をふるママさんの表情と香りを思い出してずっと興奮していたのだった。

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