純粋な失恋

青いバック

さようなら

 秋が過ぎて風が冷たくなった頃、僕は失恋した。肌に当たる風が冷えきった心を温めることもなく、自分のちっぽけさを感じさせられる。夏に僕は君に恋して、冬に失恋。僕の恋心は、季節の変わり目という冷蔵庫に冷やされてしまった。炭にもなりきれず、心の奥底でまだ燻っているこの気持ちはどうしたらいいのだろう。好きな人が出来た、と笑う君に僕はどう返したら良かったのだろう。

 その笑顔は僕じゃなくて、違う人に向けられている。それがとても、辛くて、嬉しくて、なんとも言えなかった。君が幸せならそれで良い。でも、叶うのならば君を幸せにするために隣にいるのは僕が良かった。


 紅葉が枯れて着るものが無くなってしまった木の気持ちが今なら分かる。普通は分からないけど、今なら君の気持ちもわかるよ。屈託なく笑う君の眩しさは涙すら枯れさせてしまって、笑うことしか出来なかった。


 良かったね、思ってもないことを口に出した。好きだよ、と思っていたことを口に出せなかった。意気地無しで、弱い僕はこの寒さを耐え忍ぶ手段を知らない。マフラーを首に巻いても、服を何枚着込んでもこの寒さだけは君にしか暖められないんだ。


 空から純白の雪が舞う時、僕の目からは溶けた雪が頬を伝う。顎へ伝わっていき、雪は積もることなく消えていく。この雪と共に僕のこの気持ちも溶けだして欲しい。そう願っても、消えることはなくてずっとここにあって、ずっと苦しい。


 あぁ、あのとき。なんて後悔はもう遅い。分かっている醜いことも。ダサいことも。全部自分が痛いほど分かっている。だから、最後ぐらいは強がって。


「さようなら」

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