第3話 悪役令嬢を演じるワケ

「ステフ、体調は大丈夫かい?」

そう聞くのは転生後の私の父。

つまり、「ステラに願いを込めて!」の悪役令嬢の父だ。


「ステラに願いを込めて!」はよくある乙女ゲームみたいな恋愛小説だ。

ゲームも出ていて、私はもちろん全ルートをクリアした。

ここの世界が小説の世界なのか、ゲーム版の世界なのかはわからないが、できることならゲームの世界であってほしい。

小説版だと、ルートは一つ。主人公とヴァレリアン・ボードリエ、つまり現・私の婚約者のハッピーエンドルートで、私はゲームの始めぐらいですぐ死ぬ。

ゲームだと、死罪ルートはなく、基本的に追放程度で済むのだ。

なんとありがたいストーリーであろう。

私が最初に主人公と出会うのは、皇室のお茶会だ。

私の婚約者であるヴァレリアン・ボードリエは皇太子なので、参加は強制的だ。

つまり、主人公に出会うまでに、婚約を破棄すればいい話なのだが、そうもいかない。

そのお茶会まで、もう3日しかないのだ。

これはもう絶望的としか言いようがないだろう。


そこで私はひらめいた。

ならば断罪されないようにするのではなく、断罪後の生活を楽しもうと!

だから、主人公たちの前では、悪役令嬢になりきってやろう! と。

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