第9話 第八の攻防

 また、数週間後の昼前、狼は、赤ずきんちゃん宅にやってきました。


 狼は玄関先に立ち、「おい、嫁ぇ~‼結婚式場に、もう予約してきたじょぉ~‼」と言います。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋。赤ずきんちゃんがPCのモニター越しに狼の様子を見ながら、「誰が、嫁だ。勝手に決めんな‼結婚式場に予約⁉阿呆なこと言うな‼このボケ狼がぁ。」と叫びます。


 玄関先の狼の方は、玄関アナウンスを待っていましたが、一向に、玄関アナウンスは鳴り出しません。それどころか、ドアには取っ手も、鍵穴も、カードリーダーも付いていませんでした。


 狼は???となりながらも、押せば、開くだろうと思い、力いっぱいドアを押しますが、ドアはびくともしません。狼は困り果てて、家の周りを回りました。ところが、窓も空いていませんでした。


 埒があかないので、狼は癇癪を起しかけましたが(# ゚Д゚)、自分を抑えて、ドアの周りや玄関先を注意深く見てみました。そうすると、以前、玄関先になかった植木鉢が3つ左脇に横に並んでおいてありました。「これだ‼」と狼は、叫びます。


 赤ずきんちゃんの部屋では、赤ずきんちゃんが狼の様子を見ながら、「それではないのだよ、阿呆狼。」と無表情で笑いながら、つぶやいていました。


 さて、狼に場面が戻って、彼は、植木鉢の下か花に隠れて、鍵かカードがあると思ったらしく、丁寧に調べていましたが、全く見当たりませんでした。そして、また、彼は、イラっと(# ゚Д゚)し出します。


 今度は、チェスのナイトのような馬頭の置物に手を伸ばしました。馬頭の置物は、顔を外に向けていましたが、狼は苛立ち紛れに左に向けました。


 すると、ドアがカチッと音を立てて、開きました。


 狼が時計を見ましたが、このとき、時計の針は、午後3時を指していました。狼は、「手の込んだことを・・・。」とつぶやきました。


 赤ずきんちゃんは狼の様子を見ながら、「ナイトに玄関を守らせていたんだよねぇ。粋な出迎えでしょ。ヘルメットと鎧⁉まぁ、いいかぁ‼さあ、後半戦に行こうか‼」


 赤ずきんちゃん宅の1階では、屋内アナウンスが鳴り出します。「ご来客の方は、赤外線ゴーグルを装着してください。」


 狼は、「鎧を着てきたから礫は、平気だけど、前回のことがあったからなぁ。一応、装着しておくかぁ。」と言って、ヘルメットを脱ぎ、赤外線ゴーグルを装着して、再びヘルメットをかぶりました。


 それと同時に、赤外線が浮かび上がりますが、今日の彼のいでたちは、鎧姿。体が重たいためか、自由度が極端に制限されてしまい、当初から赤外線に引っかかりまくります。


 すると、狼めがけて、レーザーが飛んできます。


 狼は、「ひょえ~‼」と驚きながら、叫びます。


 一応、持っていた盾は、レーザーによって貫通され、床に捨てました。そうすると、また、捨てた盾にレーザーが集中します。


 狼は、玄関にまだ近いことを確認して、玄関までゆっくりと戻っていきます。そして、鎧を脱いで、身軽になり、再度、前進し出しました。


 ヨガで鍛えたと豪語するだけあって、彼は赤外線を難なくクリアしていきます。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋では、彼女がPCのモニター越しに狼の様子を見ながら、面白くなさそうにパソコンを操作して「フォーメーションD解除。」と言って、Enterを押します。続いて、彼女はパソコンを操作しながら、「フォーメーションA-2起動‼」と言って、Enterを押します。さらに、彼女は、パソコンを操作して、「フォーメーションE起動‼」とつぶやきながら、Enterを押します。


 場面が変わって、狼の方は、赤外線が減ったにもかかわらず、用心のため、赤外線ゴーグルを装着したままで、周囲の変化に気づきませんでした。


 確かに赤外線は減っており、代わりに細いロープが張り巡らされていました。狼は、これらのロープのひとつに引っかかってしまいました。


 すると、1階の床が開き、狼は、落ちそうになってしまいますが、前回同様、間一髪で反射的に1回の床に両手をかけたのでした。地下室の方からは、熱気が伝わってきます。


 狼は、「釜茹でかぁ‼石川五右衛門やないでぇ~‼」と叫びます。


 狼がわめいていると、どこからともなく赤ずきんちゃんの声が聞こえてきます。「馬鹿、鉄板焼きよ、鉄板焼き。」


 狼は、「鉄板焼き⁉2人がひとつになる方法が間違っている‼」とわめきますが、ショックは隠しきれません。


 彼は、あろうことか、わめくと同時に、思わず、両手を放してしまいました。


 ジュ~という音がして、毛が焦げる匂いが漂います。狼は、「アツ‼、アツ‼」と言いながら、必死に地下室を脱出しました。


 地下室を出たところで、狼は、自分の体や足の裏を確認して体毛や肉球が焦げているのを見て、涙目になりました。


 狼は、地上に出る階段を上り、角を回って再び玄関先に立ちます。馬頭を横に向けて、ドアを開けると、彼はイタい(>_<)足で、スニーカーを履いて、涙目になりながら、「おい、お前‼このままでは、済まさへんでぇ~‼絶対、屈服させてやるぅ~‼」と叫んで、去っていきました。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋では、赤ずきんちゃんがPCのモニター越しに狼の様子を見ながら、「まだ、懲りないのかぁ~⁉それに、屈服するのは、お前よ、お前。」と笑っていました。

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