第8話 第七の攻防
ゴム衣装を刃物で切られた後、また数週間後の昼前のこと。
赤ずきんちゃんが、「この頃平和だな。ようやく、あの阿呆狼、諦めたかな、よし、よし。」とつぶやいていたところ、またまた狼が赤ずきんちゃん宅にやってきました。
狼は、赤ずきんちゃん宅の玄関先に立ち、「赤ずきんちゃん、今ならまだ、嫁にするだけで許してあげても、いいじょぉ~。」と独りごちました。
一方、赤ずきんちゃんの部屋では、彼女がPCのモニター越しに狼の様子を見ながら、「誰が、お前の嫁になるか。阿呆め。」とせせら笑います。
場面は狼に戻り、狼は玄関アナウンスに耳を傾けます。
すると、赤ずきんちゃんの声で玄関アナウンスが鳴り出します。「ご来客の方は、ボタンを押してください。」
狼が「了解。」と答え、ボタンを押すと、ドアの下の方から500枚はあろうかというキーホルダーでくくられたカードの束が出てきました。
玄関アナウンスは、続きます。「500枚のカードのうち、どれかがドアの鍵になっています。そのカードをドア横のカードリーダーにかざせば、ドアは開きます。」
狼は、玄関アナウンスを聞くなり、「へえ(# ゚Д゚)‼」と不平をあらわにしますが、自分の欲望を満たすため、やむなくカードの束を手に取り、1枚1枚、カードリーダーにカードをかざしだしました。
狼は、単調な作業が苦手なのか、腰を伸ばしたり、青空を仰いだりしていましたが、午後3時頃、ようやく486枚目のカードに差し掛かり、カードリーダーにそのカードをかざしたところ、玄関がカチッという音を立てて開きました。
狼はヘルメットをかぶっていたため、ドアとは逆の上の方に設置されたバーナーの火は苦になりません。
こうした狼に対して、次に屋内アナウンスが流れます。「カードの束をドア横のボックスに戻してください。」
狼は、「わかった。」と言いながら、ボックスにカードの束を入れます。
屋内アナウンスは続きます。「来客の方は、赤外線ゴーグルを装着してください。」
ところが、狼は、「刃物が付きだしてきても、鎖帷子に鎖パンツ、鎖手袋に身を包んできたから、大丈夫‼」と息巻き、大胆に歩きだします。
すると、「ビュ~‼」と音を立てて、何かが飛んできました。
狼が目を凝らしてみると、それは、小さな礫とも弾丸ともとれる物体でした。これらの物体が、狼の大胆な動きによって、赤外線に触れるたびに狼に向かって飛んでくるのでした。
ついに、それらが、体に当たり、衝撃で狼は「イタい(>_<)‼」と飛び上がります。
見れば、赤ずきんちゃん宅の窓は、金属板で締め切られていました。狼は、なぜ、窓がカバーされていたのか、やっと気づきました。その間、いくつもの礫が彼に当たります。
狼は、イタい(>_<)のを我慢しながら、前に進みますが、眼前を礫が飛んでいくのを見て、しばし硬直します。
一方、赤ずきんちゃんの部屋では、モニター越しに狼の様子を見ていた赤ずきんちゃんが、渋い顔で「あまり効果がないみたいね。フォーメーションB解除。」と言いながら、不満そうにパソコンを操作してEnterを押します。
すると、礫は飛んでこなくなりました。赤ずきんちゃんは続けざまにパソコンを操作して、「フォーメーションA起動‼」と言いながら、Enterを押します。さらに、彼女は、パソコンを操作して、「フォーメーションC起動‼」とつぶやきながら、Enterを押します。
場面は、戻って、赤ずきんちゃん宅の1階。フォーメーションが切り替わり、1階の窓カバーは横にスライドして、窓が現れました。赤外線は、そのままでした。
ところが、狼の方は、その変化に気づきません。彼は、体をこわばらせながら、前進します。
すると、今度は1階の床が開き、狼は地下室に落ちそうになりました。今度も何とか1階の床を両手でつかみ、落下を免れたのでした。
狼は、下を見て驚き「殺す気かぁ‼」とわめきます。
なんと、地下室には長い目の刃物が敷き詰められていたのでした。彼が鎖で固めていないところは、容易に刃物で切り裂かれそうです。落下の速度と彼の重みで、鎖帷子や鎖パンツも持ちこたえられないでしょう。
どこからともなく、赤ずきんちゃんの声が聞こえてきます。「なぁ~んだ、落ちなかったのかぁ。つまんないなぁ。」
狼は、何とか、1階にはい上がりましたが、進むことも退くことも難しくなり、何度も地下室に落ちそうになりながらも、窓際に近づき、窓を開けて、そこから外に出ました。
赤ずきんちゃんの声が狼を追ってきます。「おい、お前、どっから出ていくのよ。ちゃんと窓を閉めて行ってよ。」
狼は、窓をバシンと閉めて、鎖帷子の裾をまくり上げて、体をチェックしながら、「体毛で分からないけど、内出血しているかもしれない。イタかった(´;ω;`)ウゥゥ‼」と言いました。
そして、彼は、しばらく赤ずきんちゃん宅の庭に立っていましたが、玄関先に戻ります。
すると、玄関アナウンスが鳴り出します。「ご来客の方は、ボタンを押してください。」
狼が「了解。」と答え、ボタンを押すと、ドアの下の方からカードの束が出てきました。
玄関アナウンスは、続きます。「500枚のカードのうち、どれかがドアの鍵になっています。そのカードをドア横のカードリーダーにかざせば、ドアは開きます。」
今度は、486枚目のカードがドアの鍵であることを狼は、おぼえています。彼は、カードを勘定しだしました。
赤ずきんちゃんの部屋では、狼の子の様子を眺めながら、「やっぱり、阿呆だね。最後のカードから数えれば、早いのに。」と嘲笑していました。
場面は戻って、玄関でカードを数える狼。途中でカードの枚数を数え間違え、カードの束を落とす狼。
彼はひらめきます。「最後のカードから数えれば、いいやん。」彼は得意げに、目的のカードを見つけ、そのカードをカードリーダーにかざします。すると、ドアがカチッと音を立てて開きました。
狼は、カードの束を下駄箱の上に置き、スニーカーを履きながら、「覚えていろよ‼これで終わりやないでぇ~。」と捨て台詞を残して、帰っていきます。
一方、赤ずきんちゃんの部屋では、彼女が狼の様子をモニター越しに見ながら、「まだ、懲りないわけぇ~。懲りない奴。まあ、いいかぁ。また、手厚いお出迎えをしてやるから。」と言っていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます