第5話 第四の攻防

 月末の週末の昼、狼はまたまた、赤ずきんちゃん宅にやってきました。


 玄関先に到着した狼は、「今度という今度こそ、赤ずきんちゃんに抱きついてキスするんだ。ハアハア。」


 赤ずきんちゃんの声で玄関アナウンスが流れます。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼は、「了解。」と応じます。


 また玄関アナウンスが鳴りだします。「認証番号025354379152346871906533257の25桁の数字です。」と認証番号は長いものでした。


 狼は、戸惑い、「025354371・・・、へッ。」と認証番号を思わず間違えてしまいました。


 それに対して、玄関アナウンスは無慈悲にも、「認証番号に誤りがあります。」と回答し、それと同時に、玄関の底が開き、狼は地下室のダストに転落します。


 すると、地下室に赤ずきんちゃんの声で、アナウンスが流れます。「来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


 狼は、地下室に流れたアナウンスに従って、地下室のドアを開け、階段を上り、地上に出て、赤ずきんちゃん宅の角を曲がり、再び玄関先に立ちます。


 再び、玄関アナウンスが鳴りだします。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼は、「了解。」と応じます。


 また玄関アナウンスが鳴りだします。「認証番号025354379152346871906533257の25桁の数字です。」


 一度目の失敗があるので、狼は慎重になります。「0253543791・・・。」


 ところが、無慈悲にも、「時間切れです。」と音声アナウンスが鳴り、それと同時に、玄関の底が開き、狼は地下室のダストに転落します。


 すると、地下室に赤ずきんちゃんの声で、アナウンスが流れます。「来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


 狼は、地下室に流れたアナウンスに従って、地下室のドアを開け、階段を上り、地上に出て、赤ずきんちゃん宅の角を曲がり、再び玄関先に立ちます。


 再び、玄関アナウンスが鳴りだします。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼は、「了解。」と応じます。


 また玄関アナウンスが鳴りだします。「認証番号025354379152346871906533257の25桁の数字です。」


 狼は、ふと、思いつき、「そうだ。もっと、手っ取り早い方法があった。窓ガラスを割って入れば、いいやん。」と言いました。そして、狼は、玄関先から家の横手に回り、窓ガラスをたたき割ろうと、窓ガラスを思いっきり、殴りつけました。ところが、赤ずきんちゃん宅の窓ガラスは、厚さ3㎝の防弾ガラスです。


 狼は、痛めた手を抱えて思わず、「アガペイ。(>_<)」と叫びました。狼は、窓ガラスを割って、家の中に入るのをあきらめて、玄関先に戻ります。


 また、玄関アナウンスが鳴りだします。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼は、「了解。」と応じます。


 続いて、玄関アナウンスが鳴りだします。「認証番号は、02535437915234687190

6533257の25桁の数字です。」


 「ええっと、025354379152346787100。」狼は記憶を探りながら、認証番号を入力しますが、玄関アナウンスは無慈悲にも、「認証番号に誤りがあります。」と回答し、それと同時に、玄関の底が開き、狼は地下室のダストに転落します。


 すると、地下室に赤ずきんちゃんの声で、アナウンスが流れます。「来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


 狼は、地下室に流れたアナウンスに従って、地下室のドアを開け、階段を上り、地上に出て、赤ずきんちゃん宅の角を曲がり、再び玄関先に立ちます。


 また、玄関アナウンスが鳴ります。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼は、「了解。」と応じます。


 玄関アナウンスが鳴りだします。「認証番号は、025354379152346871906533257の25桁の数字です。」


 狼は、さらに慎重になり、「025354379152346871906533257」と入力しました。


 すると、玄関のドアがカチッと音を立てて開きました。狼は、ドアを開いて、赤ずきんちゃん宅の家の中に入り、スニーカーを脱いで、靴下のままで上がろうとします。


 すると、屋内アナウンスが流れ、「来客の方は、下駄箱の上に置いてある赤外線ゴーグルを装着してください。」と言います。


 狼は、「赤外線ゴーグル⁉」と素っ頓狂な声を上げますが、気を取り直して、下駄箱の上に置いてある赤外線ゴーグルを手に取って、装着します。


 狼が赤外線ゴーグルを装着すると、赤ずきんちゃん宅の1階には赤外線がいっぱい浮き上がりました。


 狼は、目が点になりながらも、赤外線に触らないように、移動していきますが、数歩も進まないうちに、「足がつった!痛いよぉ‼」と七転八倒します。痛みに悶える狼は、悲惨なことに赤外線に引っかかりまくりました。


 そんな狼の状況に対して、どこからともなく、赤ずきんちゃんの「にゃはははは。」という笑い声が流れてきます。


 一方、痛みに悶える狼。彼が赤外線に引っかかりまくったことで、1階の床が広範囲に開き、受け身が取れないまま、地下のダストに転落します。狼は、「痛いよぉ。(>_<)腰、打ったぁ。赤ずきんちゃん、さすって。」と涙声で訴えます。


 ところが、地下室に流れてくる赤ずきんちゃんの声は、「誰が、さするよ。いやだね。にゃははははは。」とにべもなく、つれない感満載でした。


 狼は、しばらく腰をさすりながら、じっとしていましたが、諦めて地上に上がり、玄関の前に立ちます。


 また、玄関アナウンスが流れます。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼は、意気消沈しながら、「了解」と答えます。


 玄関アナウンスは、続きます。「認証番号は、025354379152346871906533257の25桁の数字です。」


狼は、「025354379152346871906533257」と入力しました。


すると、玄関のドアがカチッと音を立てて開きます。狼は、ドアを開けて、赤ずきんちゃん宅の中に入り、スニーカーを履いて腰をさすりながら、帰っていきます。


その頃、赤ずきんちゃんの部屋では、赤ずきんちゃんが、PCのモニター越しに、狼が帰っていく様子を見ていました。今回は彼女の満足度が高かったようで、「今回は、いい感じだったね。この調子、この調子。」とニンマリ笑っていました。

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