第6話 第五の攻防

 1ヶ月後の昼、痛めた腰が治ったのか、狼は、また、赤ずきんちゃん宅にやってきました。


 そこで、狼は、「今度こそ、赤ずきんちゃんを抱きしめてキスするんだ。赤ずきんちゃんの口の中に舌を入れてやる。ハアハア。」と息を荒くしながら、つぶやきます。


 例によって、赤ずきんちゃんの声で玄関アナウンスが流れてきます。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 狼も例によって「了解。」と答えます。


 屋内アナウンスは続きます。「認証番号は、54978443449152346871906533の25桁の数字です。」


 狼はびっくり仰天し、上ずった声で、「認証番号が、変更されている‼」と叫びました。

 

 狼が驚いていると、玄関アナウンスは、無慈悲にも、「時間切れです。」と狼に告げます。


 すると、玄関先の底が開き、狼は地下のダストに転落しました。


 今度は、地下室に赤ずきんちゃんの声で、アナウンスが流れます。「来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


 狼は、地下室アナウンスの指示に素直に従い、再び、赤ずきんちゃん宅の玄関先に立ちます。


 再び、玄関アナウンスが流れてきます。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 それに対して、狼は、「了解。」と答えますが、気分を抑えられないのか妄想してしまいます。(赤ずきんちゃんお部屋に入って、彼女が向き合いざまに、この爪を上から振り下ろし、服と下着を切り裂いて、素裸にする狼。赤ずきんちゃんは、なすすべもなく、「キャ~、何すんのさぁ~」ととっさに前を隠しますが・・・、)


 玄関アナウンスは続きます。「認証番号は、54978443449152346871906533の25桁の数字です。」


 狼は自分の妄想が先行して、認証番号入力どころではありません。


 玄関アナウンスは「時間切れです。」と反応し、それと同時に、玄関の底が開き、狼、地下室のダストに落ちます。


 今度は、地下室に赤ずきんちゃんの声で、アナウンスが流れます。来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


狼は、地下室アナウンスの指示に素直に従いながらも、妄想を続けます。(狼は、赤ずきんちゃんのかかとを足で払って、赤ずきんちゃんを仰向けに押し倒します。赤ずきんちゃんは、頭を打ったのか、脳震盪を起こし、狼にいいように弄ばれます。)再び、赤ずきんちゃん宅の玄関先に立ちますが、時間がかなりかかったようです。その間、狼は終始、にやけており、唇から涎が垂れていました。


 再び、玄関アナウンスが流れてきます。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 それに対して、狼は、「いかん、いかん。」と首を振りながら、「了解。」と答えます。


 屋内アナウンスは続きます。「認証番号は、54978443449152346871906533の25桁の数字です。」


 狼は、「ええっと、54978444491523・・・」とつぶやきながら、今度は慌てて入力します。


 そんな狼に対して、玄関アナウンスは、「入力に誤りがあります。」と狼の入力ミスを指摘してきます。


 またまた、玄関先の底が開き、狼は地下のダストに転落しました。


 今度は、地下室に赤ずきんちゃんの声で、アナウンスが流れます。来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


狼は、地下室アナウンスの指示に素直に従い、再び、赤ずきんちゃん宅の玄関先に立ちます。


 再び、玄関アナウンスが流れてきます。「来客の方は、認証番号を20秒以内に入力してください。」


 それに対して、狼は、「了解。」と答えます。


 玄関アナウンスは続きます。「認証番号は、54978443449152346871906533の25桁の数字です。」


 狼は口に出して認証番号を確認しながら、「54978443449152346871906533。」と入力しました。


 すると、玄関のドアがカチッと音を立てて開きます。狼は、以前と同じように、ドアを開いて中に入ろうとします。


 ところが、その時、ドアの反対方向の上の方に設置してあったバーナーのスイッチが入って、点火され、狼の頭を少し燃やします。


 狼は、「あっれれ~‼なんか焦げ臭いぞ‼」と言い、慌てて、外に出て近くに流れている川に頭を突っ込みますが、頭に手をやると、頭の毛が河童頭のようになっていました。


 狼は涙目で憤慨し、「こんな頭では会社にも行けやしないじゃないか。赤ずきんちゃん、絶対に攻めて、ボロボロにしてやる。」と叫びました。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋では、赤ずきんちゃんが「ボロボロになるのは、お前だよ、お前。」と言っていました。


 狼は憤然としながら、玄関先に立ちます。


 すると、玄関アナウンスが鳴ります。「認証番号は54978443449152346871906533の25桁の数字です。」


 狼は、「54978443449152346871906533」と入力します。


 玄関のドアがカチッと音をたてて、開きますが、狼は今回、用心深くドアを開けて、身をかがめるようにしながら、中に入ります。


 狼はまだ息を荒げながら、スニーカーを脱いで靴下のまま、赤ずきんちゃん宅に上がります。


 今度は、屋内アナウンスが流れます。「来客の方は、赤外線ゴーグルを装着してください。」


 それに対して、狼は、「よっしゃあ‼ヨガに通って、体を柔らかくしたもんね‼」と余裕しゃあしゃあな態度を見せます。


 狼は順調に赤外線を突破して、トイレの前に立ちました。


 そこで、再び、屋内アナウンスが鳴り出します。「顔認証をします。枠内に顔を合わせてください。」


 狼は、「顔認証に代わっているけれど、まあ、いい。おばあさんの顔は、抜かりなく準備しておいたものね。」と言いながら、予め準備しておいた赤ずきんちゃんのおばあさんのマスクを自分の顔に装着して、枠内に顔の正面を合わせます。


 屋内アナウンスが流れます。「おばあさん確認。どうぞ、お入りください。」


 狼、扉を開けて、「トイレを借用しよ。」と言いながら、勝手に赤ずきんちゃん宅のトイレを使います。じょぼじょぼと音を出しながら、用を足した狼は、自分のものを握りながら、「今回こそ、思いを遂げてやる。」と意気込み、「よっしゃあ‼」と気合を入れて、トイレから出ました。


 狼は、順調にトイレの前から階段の方へと進んでいきましたが、もうあと少しで階段に差し掛かるというところで、ミスをして赤外線に触れてしまいます。


 床に中程度の穴が開いていましたが、そこから電撃棒がせりあがってきます。電撃棒には電流が流れており、死には至らないにせよ、感電してしまいます。


 狼はこの電撃棒に触れてしまい、「ぎゃああああ‼」と悲鳴を上げます。


 すると、「にゃはははは‼やったね‼」と赤ずきんちゃんの笑い声がどこからともなく、聞こえてきます。


 一度、電撃棒に触れた狼は自分のリズムを崩し、もだえ苦しみ、赤外線に引っかかりまくります。電撃棒が、床の下からいっぱいせり上がってきてしまい、狼は避けることもできず、電撃棒に触りまくってしまいました。


 「ぎゃああああ‼」、「ぎゃああああ‼」と悲鳴を上げる狼。


 20秒後、電撃棒は、順々に下がっていきますが、狼は進むことも退くこともできない様子で、声は枯れてしまったのか、声も絶え絶えの状態でした。衣類は焼け焦げ、尻尾も股の間にしまい込まれ、先程の勢いは消えておりました。


 狼は、意を決したように、慎重に玄関のところまで戻っていき、スニーカーを履き、バーナーに焙られないように、身をかがめて、ドアから出て、帰っていきました。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋では、赤ずきんちゃんが、PCのモニター越しに、狼が帰っていく様子を見ていました。「誰が、私をボロボロにするって~?誰を攻めるってぇ~?1万年早いんだよ‼今回は、ベストな感じだったかも。にゃはははははは‼楽しかったぁ~。」

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