第4話 第三の攻防

 さらに、次の週末の昼、狼は、赤ずきんちゃん宅の玄関先にやってきました。

 狼は、「今度こそ、赤ずきんちゃんに抱きつくぞぉ。ハアハア。」と鼻息を荒くします。


 またまた、赤ずきんちゃんの声で玄関アナウンスが流れます。「来客の方は、テーブル上のパズルを解いてください。パズルを解けば、ドアの鍵となるカードが出てきます。」


 狼は「パズルぅ‼(# ゚Д゚)」と面倒くさそうな声を出しますが、それでも、赤ずきんちゃんに抱きつくという目的のため、モチベーションを高めます。


 ドアの横に小さな円柱状のテーブル⁉があり、その上にパズルが設置されています。パズルの構造はいたって簡単で、入口と書いてある部分に鍵のマークの入った板を他の板を上や左右に動かすことによって、出口から出すというものでした。


 狼はパズルなどまどろっこしいものは苦手なようで、「あぁ。」とか「いぃ。」とか言いながら、イラっとしていましたが、赤ずきんちゃんに抱き着きたい一心で、頑張ります。


 4時間ほど格闘したでしょうか、ようやくパズルを解いた狼は、円柱状のテーブルの中ほどから出てきたカードを取り出して、カードリーダーにカードを当てます。そして、スニーカーを脱いで靴下のまま、赤ずきんちゃん宅に上がり、スタスタとトイレに直行しました。


 また、赤ずきんちゃんの声の屋内アナウンスが流れます。「音声認証をします。ピ

ーという発信音の後に、何か話してください。ピー。」


 狼は、赤ずきんちゃんのおばあさんの声を再生します。


 それに呼応して、屋内アナウンスが流れます。「おばあさん確認。どうぞ、お入りください。」


 狼はトイレのドアを開きながら、「トイレを拝借しよ。」と言い、じょぼじょぼと音を立てながら、勝手に用を足しました。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋では、彼女が、PCのモニター越しに狼の様子を見ながら、「なぜに、毎回、勝手に人んちのトイレを使うかなぁ。」と苦り切っていました。


 狼の方はというと、その後、彼は、トイレを出て、即階段を上がって2階に行きました。窓から外を眺めると、既に夕方になっていました。


 狼はにやにやしながら、赤ずきんちゃんの部屋の前に立ちます。


 すると、屋内アナウンスが流れます。「顔認証を行います。まず、正面を向いてください。」


 それに対して、狼は、「顔認証ぉ⁉」と素っとん狂な声を上げました。


 屋内アナウンスは、続きます。「登録データと顔が一致しません。新規登録しますか?」


 扉を隔てた部屋では、赤ずきんちゃんが、PC机に向かって座っており、モニター越しに家の中の様子を見ていましたが、屋内アナウンスの質問に対して、「ダメ。登録しないでぇ~。」と叫びます。


 「是。登録しません。」という屋内アナウンスが、流れます。


 2階の赤ずきんちゃん部屋前の床が開き、さらに、1階の床まで開いたため、部屋の外の狼は、地下室のダストまで転落してしたはずでしたが、いつまでたっても、赤ずきんちゃんの部屋にあるPCのモニターには地下室に落ちた狼の様子は、映りませんでした。赤ずきんちゃんは、やむを得なく、部屋の扉をスライドさせて部屋の外を見てみました。


 すると、狼は、2階の床に手をひっかけて、ぶら下がっていましたが、赤ずきんちゃんを見上げ、「今日は、白。」と言います。


 一方、赤ずきんちゃんは、「あら、まだ、落ちてなかったの。」と言いながら、足で狼の手を踏みつけました。それでも、狼は、なかなか落ちず、「赤ずきんちゃんの長くて白い足、舐め舐めしたいじょぉ~」と言いながら、口から涎を垂れていました。


 赤ずきんちゃんは眉をひそめていましたが、一旦、部屋の中に戻り、木剣を取ってきました。そして、木剣で、笑いながら思い切り、狼の手を打ちました。狼は、「ぎゃあ~‼痛いよぉ~。(>_<)」と叫び、手を放しました。狼は、手一本で、体を支えている状態でしたが、「もう片手を落とせば、終わりね。」と笑いながら言う赤ずきんちゃんに再度、木剣を振り下ろされ、「イタッぁ~‼(>_<)」とわめきながら、ようやく地下室に落ちていきました。その様子を直に見ながら、赤ずきんちゃんは無表情で、口だけニヤッと笑いながら、「あいつ、絶対殺す‼」とつぶやいていました。


 地下室では、狼が今後の策を練ります。「痛てぇ。(>_<)顔認証とはね。おばあさんのマスクでも作ろうか。これには、計画が必要だね。メンズエステにでも、行って、マッサージのテクニックを学んで・・・。」


 地下室にアナウンスが流れます。「来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」


 狼は腰をさすりながら、地下室に流れたアナウンスに従って、地下室のドアを開け、階段を上り、地上に出て、赤ずきんちゃん宅の角を曲がり、再び玄関先に立ちます。

 

 また、玄関アナウンスが鳴ります。「来客の方は、テーブル上のパズルを解いてください。パズルを解けば、ドアの鍵となるカードが出てきます。」


 狼は、「了解。」と答え、パズルと向き合います。彼はパズルを見ると体がむずむずするのか、自分の体をかきむしっていましたが、今度は、解き方がわかっているので、すぐにパズルを解いてしまい、あっさりとドア用のカードを手に入れました。狼がカードリーダーにカードを当てます。カードがスキャンされて、それと同時に、玄関のドアがカチッと音を立てて開きました。


 狼は、ドアを開いて、赤ずきんちゃん宅の家の中に入り、スニーカーを履いて、赤ずきんちゃん宅を後にします。


 一方、赤ずきんちゃんの部屋では、彼女はPCのモニター越しに、狼が帰っていく様子を見ながら、「まだまだ、セキュリティー改善の余地、あるね。2階まで上がられるのが問題だよ。」と今後のセキュリティーについて考える風でした。

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