第2話 第一の攻防
ある日の昼のこと。赤ずきんちゃんオタクの狼が、赤ずきんちゃん宅にやってきて、玄関先に立っていました。
狼は、「やっと、赤ずきんちゃんの家を見つけた。とうとう、特定したぞ。ハアハア。」と最近出版された赤ずきんちゃんの水着写真集を思い浮かべながら、興奮気味に言います。
それに対して、赤ずきんちゃんの声で、玄関アナウンスが鳴りだします。「DNA鑑定を行います。来客の方は、毛髪か爪を所定場所に入れてください。」すると、カタンと音を立てて、何かを入れるボックスのようなものが、ドアの横から出てきました。
狼は、「ここに入れれば、良いのだな。こんなこともあろうかと思って、赤ずきんちゃんのおばあさんの毛髪はゲットしてある。楽勝‼楽勝‼」と言いながら、おばあさんの毛髪をボックスに投入しました。
ボックスが収納されます。玄関アナウンスが鳴り出します。「おばあさん、確認。どうぞ、お入りください。」それと同時に、玄関のドアがカチッと音を立てて、開きました。
狼は、ドアを開けて、家の中に入り、靴を脱ぎ、ソックスのままで赤ずきんちゃん宅に上がりました。
赤ずきんちゃん宅に上がった狼は、1階のとある部屋の前で止まります。
今度は、赤ずきんちゃんの声で屋内アナウンスが流れます。「指紋認証を行います。所定部分に親指をあてがってください。」
狼は、セロハンテープに貼り付けた赤ずきんちゃんのおばあさんの指紋を所定部分にあてがいます。
実は、この狼、赤ずきんちゃんの家族構成を調べ上げ、おばあさんがどこのスーパーに買い物に行くことが多いのかも調査していたのです。そして、待ち伏せして、おばあさんが荷物を重そうに持っているのを見て、ほくそ笑み、親切を装って荷物を持ってあげるふりをしてセロハンテープにおばあさんの指紋を付着させておいたのです。そのときに、狼は、おばあさんの毛髪も手に入れていました。
狼は、「この間、赤ずきんちゃんのおばあさんを特定して、買い物を手伝ったのが、こんなところで、役立つとは・・・」と笑います。
すると、屋内アナウンスは、「おばあさん、確認。どうぞ、お入りください。」としゃべりだしました。
狼は、ドアを開けますが、「なぁんだ、トイレか。」とつぶやきます。
そして、狼は、トイレの横の部屋の前に立ちます。
屋内アナウンスが再び鳴り出します。「指紋認証を行います。所定部分に親指をあてがってください。」
狼は、セロハンテープに貼り付けた赤ずきんちゃんのおばあさんの指紋を、所定部
分にあてがいます。
屋内アナウンスが話し出します。「おばあさん、確認。どうぞ、お入りください。」同時に、扉がスライドして開きます。そこは、風呂場でした。
狼は、息を荒くしながら、「お風呂か。ハアハア。ここで、赤ずきんちゃんは、シャワーを浴びているのか。」と赤ずきんちゃんのすらりと伸びた足、凹凸の激しいからだ、たわわなパパイヤを想像しつつ、つぶやきました。
風呂場を後にした狼は、廊下をはさんで風呂場の向かいにある部屋の前に立ちました。
またまた、屋内アナウンスが鳴り出します。「指紋認証を行います。所定部分に親指をあてがってください。」
狼は、セロハンテープに貼り付けた赤ずきんちゃんのおばあさんの指紋を、所定部
分にあてがいます。
屋内アナウンスが話し出します。「おばあさん、確認。どうぞ、お入りください。」
ドアがカチッと音を立てて開きます。「ここは、キッチン。」と狼は言います。続いて、狼は、キッチンの隣の部屋の前に立ちます。
屋内アナウンスが鳴り出します。「指紋認証を行います。所定部分に親指をあてがってください。」
狼は、セロハンテープに貼り付けた赤ずきんちゃんのおばあさんの指紋を、所定部
分にあてがいます。
屋内アナウンスが話し出します。「おばあさん、確認。どうぞ、お入りくだい。」
ドアがカチッと音を立てて開きます。「ここは、応接間かぁ。赤ずきんちゃんの部屋は、2階だな。」と狼はつぶやきながら、2階への階段に向かいます。そして、階段を上がります。
狼は、とある部屋の前に立ちます。
すると、またしても、屋内アナウンスが流れます。「指紋認証を行います。所定部分に親指をあてがってください。」
狼は、セロハンテープに貼り付けた赤ずきんちゃんのおばあさんの指紋を、所定部
分にあてがいます。
屋内アナウンスが流れます。「おばあさん、確認。どうぞ、お入りください。」それと同時に、その部屋の扉がスライドして開きます。
狼は部屋の中を見ながら、「なぁんだ、客間か。ということは、廊下をはさんで、向かいの部屋が、赤ずきんちゃんの部屋だな。ハアハア。」と鼻息を荒くします。
狼は、廊下をはさんで、客間の前にある部屋の前に立ちます。
ここで、またまた、音声アナウンスが鳴り出します。「音声認証を行います。ピーという発信音の後に、何か話してください。ピー。」
狼は、戸惑います。「何⁉音声認証⁉へっ・・・じゅびじゅば~。」狼は、意味不明の言葉を発します。
すると、屋内アナウンスが流れます。「登録データと音声が一致しません。新規登録しますか?」
扉を隔てた部屋では、赤ずきんちゃんが、PC机に向かって座っており、モニター越しに家の中の様子を見ていましたが、屋内アナウンスの質問に対して、「ダメ。登録しないでぇ~。」と叫びます。
「是。登録しません。」という屋内アナウンスが、流れます。
2階の赤ずきんちゃん部屋前の床が開き、さらに、1階の床まで開いたため、部屋の外の狼は、地下室のダストまで転落してしまいました。
地下室では、狼が呻きます。「痛てぇ。(>_<)音声認証とはね。おばあさんの音声をとるのを忘れていた。今度、また、買い物の手伝いをして、おばあさんの音声を録音しておかなくちゃ。」
地下室にアナウンスが流れます。「来客の方は、地下室から地上に出る階段を利用して、地上に出て、初めからやり直してください。」
狼は、腰をさすりながら、地下室に流れたアナウンスに従って、地下室のドアを開け、階段を上り、地上に出て、赤ずきんちゃん宅の角を曲がり、再び玄関先に立ちます。
また、玄関アナウンスが鳴ります。「DNA鑑定を行います。来客の方は、毛髪か爪を所定場所に入れてください。」カタンと音を立てて、何かを入れるボックスのようなものが、ドアの横から出てきました。
狼は、おばあさんの毛髪をもう1本、ボックスに投入しました。
ボックスが収納されました。
玄関アナウンスが鳴り出します。「おばあさん、確認。どうぞ、お入りくだい。」
それと同時に、玄関のドアがカチッと音を立てて、開きました。
狼はドアを開けて、中に入り、靴を履いて、帰っていきます。
一方、赤ずきんちゃんの部屋では、彼女はPCのモニター越しに、狼が帰っていく様子を見ながら、「危なかったぁ~。あのドストーカー、また、来るかもしれないから、セキュリティー、強化しておかなくちゃ~。」と反省していました。
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