第7話 増える行方不明者
[新しい話題ですが……高層ビルの清掃員が突然姿が見えなくなったという話ですが、落下したのでは?と他の作業員が確認するも、その姿はなく、まるで神隠しにでもあったかのようだったというお話ですが、これについてどう思いますか?○○さん]
[普通にバックレた?とかじゃないの?]
[いえ、自宅も確認しに行ったところ戻った形跡がないという事らしいのですが……]
[神隠しっておとぎ話じゃあるまいし、あると思う?]
[高層ビルの清掃員ってことは高い所に居たわけだから……彼の国が攫うにしても……ねぇ?]
[ラノベ?で流行りの異世界転移じゃない?]
[んじゃ俺は異世界転生するわ!強くてニューゲームする!]
[アハハハハ!]
俺は朝のテレビ、バラエティ系なんちゃって情報番組を流し見しながら朝食を食べていた。
人が攫われた。
高層ビル。
鏡や窓がいっぱい。
導き出される答えは一つ。
「アナザー・ワールドの怪物か」
俺と竜也がかなりの勢いで駆逐しているものの、相手には世界を制圧するほどの数的優位がある。
当然だが手が足りる訳が無い。
ヤツラは度々アナザー・ワールドから此方の世界に干渉し、人々を攫っているらしい。
らしい。というのは最近あまり聞かなくなった脳に直接語りかけてくる女性の声から聞いた事だ。
ちなみに、お金をアナザー・ワールドから輸入?することに関しては特に問題はないという。
むしろこちらの世界で力を付けてくれたほうがいいというアドバイスまで頂いた。
話は逸れたが、アナザー・ワールドに巣食う怪物は、こちらの世界に干渉するとき、一般人にはその姿が見えないらしい。
つまり、攫われる一般人からしたら、突然身体を見えない何かに拘束され、そのまま鏡の向こうへと連れ込まれるのだ。
「考えただけで怖すぎる……ホラーゲームも真っ青だな」
食後のコーヒーを飲み干した俺は自電車に跨り学校へと向かう──途中で自転車を近くの月極駐輪場に預けて手近な鏡に飛び込む。
「イィィィヤッホーォォォ!」
唸りを上げてアスファルトを削るのは大型のバイク。
スーパースポーツ仕様のバイクが大通りの中央車線を時速六十キロで爆走する。
「無免許だろうがカンケーない!」
アナザー・ワールドには桜の代紋背負ったヤクザは存在しないのだ!
思い付いたのはつい最近。
例によって竜也とアナザー・ワールドを探索している時だった。
「登校中にヤツラが現れるとだるいんだよ」
「どうした?」
「いやだっさ、自転車そのへんに停めて倒して帰ると自転車撤去されてんのよ!」
「アハハハハ!」
「笑い事じゃないよ!撤去費用は別にいいとしても毎回取りに行くの大変なんだよ!」
「アハハ!勇斗は本当に純粋だな」
「馬鹿にして!」
「悪い悪い。ならば俺がいい案を授けてやろう」
ポンポンと俺の肩を叩いた竜也がニヤリと口角を上げる。
付き合いは浅いがこういった笑みを浮かべる時の竜也は悪い事を考えた時だ。
「ほら、あそこに見えるのは一件のバイク屋」
「そうだな」
竜也が指先したさきを見ればバイクが沢山飾ってあるバイク屋があった。
人が居ないこのアナザー・ワールドでは人が乗っていた、あるいは乗っている物は投影されない。
アナザー・ワールドでは公道などは勿論、路肩に駐車されている車やバイクもない。
実際に道路は閑散として動くものは俺たち二人だけ。
「アレに乗ればいいんだよ」
「……………はぁ!?」
「いや、だから、この世界に法に護られたヤクザは存在しないんだぞ?」
「言い方ぁ!」
「まぁつまるところ、免許って旨いの?」
「……………あああああ!?」
やはり竜也は天才だっ!
俺たちは早速バイク屋に飾ってあるバイクを拝借し、公道で練習を始めた。
「うおお!」
ズガシャン!と壁に激突。
「ああああ!」
公道で横スライド。
「のおおおお!」
沿道に乗り上げてぶっ飛ばされる。
「いてて……」
「普通はいててじゃ済まないんだけどな」
「オーガの力が現実の肉体も強化してるっぽいからね」
「流石、ちからこそパワー」
「褒めてないよね?」
このあと乗りこなせるようになるまでバイク屋三軒潰した!
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