第6話 金策
俺と竜也はそれはもう、アナザー・ワールドに入り浸った。
二足歩行のゴキブリやカマキリ、新たにアリやクモなんかも出てきたが、俺と竜也のペアにかかれば相手にもならず──
「今だオーガ!」
「おお!ダッシァア!」
クモの脚を背中から生やした二足歩行の怪物をソルジャーが蹴り飛ばし、俺が跳躍から大上段に構えたコンボーを振り下ろす!
クモ怪物の頭部はグシャリと弾け、塵へと消えた。
「さて、今日はここの銀行でいいか」
「正義のヒーローが銀行破り……」
「勇斗、悪いのは俺か?」
「いやいや。悪いのはアナザー・ワールドを侵略した怪物だよ」
「そのとーり!今日も諭吉が呼んでいる!」
「束で持っていっても保管場所に困るんだよな。銀行に入れようもんなら足が……つかないだろうけど不安だし」
そう。俺は竜也と探索しては諭吉をアタッシュケースに入れて持ち帰る生活を繰り返していた結果、部屋の押入れは既にパンパンだった。
「親に見つかったら説明できないよ……」
「アハハ!レンタルボックスを借りればいいんだよ」
「………………………天才かっ!?」
「勇斗が真面目すぎるんだよ」
やれやれと竜也は肩をすくめる。
帰ったら早速レンタルボックスを借りよう。
「竜也は頼りになるな」
「そりゃ、勇斗よりは年上だしな」
「大学生だし?」
「ピカピカの高校生よりは頭がいいのは当然だ」
「ぐぬぬ……どうせ俺はちからこそパワーだよ」
「アハハ!」
こうして日々増やしまくった紙幣を竜也は大胆にも銀行に預金し、マンションを一棟立てるための頭金にしたようだ。
「銀行なんて何も聞いてこないさ。あいつらは金さえ預けてもらえれば何でもいいんだから」
「そういうもん?」
「まあ流石に勇斗みたいな子供が数千万円どーん!と持ってきたら通報されかねないけどな」
「ダメぢゃん」
「アハハ!」
『キィィィィィン』
「お、お客さんだ」
「どちらかと言うと俺たちが招かざれぬ客なんじゃ」
俺たち二人はデッキを取り出し腕を突き出す。
【【アクティベイト】】
【チェンジ・オーガ】
【チェンジ・ソルジャー】
「はぁ!」
「ぜやぁ!」
互いに鎧を纏い、ソルジャーは仮面を、オーガは角。互いを包む光の球が四散すれば二人の戦士が現れる。
「クモ怪物……だが、毛色が違うな」
「アラクネって感じかな」
よく遭遇するのは二足歩行で背中にクモ脚タイプだが、現れたのは下半身がクモで上半身は人型のアラクネタイプだった。
顔は相変わらずクモでギチギチと口を鳴らせている。
「やることは変わらん!行くぞオーガ!」
「おお!」
【ソード】
ソルジャーは両刃の剣を手にクモの下半身へと斬り込む。
「そりゃあ!」
ブオン!と風を切り裂くように振るわれた剣だが、クモの脚に触れるとギャリッという鉄と鉄が擦れたような音を立てて弾かれてしまう。
「固いぞ!気をつけろ!」
「ならばパワーでひしゃげさせるまで!」
【コンボー】
俺はコンボーを野球のバットのようにフルスイングする。
ボゴン!という重い音を立て、クモ脚の一本を粉砕することに成功した!
バランスを崩すアラクネにソルジャーが襲いかかる。
【スラッシュ】
ソルジャーはデッキにスキルカードを読み込ませる。
銀色に光るソルジャーの両刃剣がその輝きを増し
「おおおおお!切り裂けええ!」
ブオン!と風を切り裂くように振り下ろせば、その剣身から光の刃が放たれる。
ズバン!
上部の人型が深い切り傷を負ったアラクネは紫色の体液を撒き散らす。
「今だ!」
【ストライカー】
俺はチャンスとばかりにカードデッキにスキルカードを読み込ませ、手を握り力をチャージする。
「これでトドメだ!」
俺の拳から放たれた火炎弾がその身を切り裂かれ苦しむアラクネに着弾する。
「ギチギチ……」
断末魔の悲鳴を残してアラクネは爆発四散した。
「よっしゃあ!」
「良くやった!」
俺とソルジャーは互いに手を上げ力の篭ったハイタッチをして変身を解いた。
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