第5話 ソルジャー
甲冑の戦士がゴキブリ怪物を相手に肉弾戦を仕掛けていた。
「ふん!せりゃあ!」
「ギチギチ!」
左のジャブから右のストレート、勢いを利用したソバットがゴキブリ怪物の胸を打ち、ドゴン!という重い音を立てて民家の壁へとぶっ飛ばした。
【ソード】
甲冑の戦士がカードを読み込ませると空から現れた一本の両刃の剣かアスファルトに突き刺さる!
「むぅん!」
戦士は突き刺さった剣を引き抜くと一枚のカードを取り出した。
【スピード】
「はあああ!」
目にも留まらぬ速度で駆け出した戦士はその勢いのままゴキブリ怪物を手にした剣で斬り刻む!
「ギチ……チィ……」
微塵に斬り刻まれたゴキブリ怪物は小さな断末魔の声を漏らして塵へと消えていった。
「すげえ……」
圧倒的な技に俺は感嘆の声を漏らす。
「何者だ?」
俺の存在に気が付いたのか、それとも元々気がついていたのか、剣を腰に差し、俺へと振り返った甲冑の戦士。
「俺はオーガ。ディメンションウォーズのオーガ」
「……………あぁ」
俺の自己紹介に一瞬考える素振りを見せた甲冑の戦士だが、思い出したかのようにポン!と手を叩く。
「俺はソルジャー。ディメンションウォーズのソルジャーだ」
「始めましてソルジャー!」
「始めましてオーガ。こうなるとウィザードも居そうだな」
「だな!」
俺が差し出した手をソルジャーが取る。
「むん!」
俺は変身を解き元の高校一年生の姿に戻るとソルジャーも同じように変身を解いた。
「どうやら俺の方が年上らしいね」
「そうみたいだね」
ソルジャーは見るからに成人している男性だった。
黒のライダージャケットを羽織った細マッチョの爽やか系イケメンだった。
「俺は二十一。大学生だ」
「俺は十五歳。高一だよ」
「若いなぁ……二十超えて変身ヒーローしてるなんてやっぱり不味いよなぁ」
「まぁこればっかりは未成年の特権って感じではあるよね」
苦笑いするソルジャーに俺は笑顔でそう答えた。
「でもソルジャーさん。変身してるってことは……」
「そうだよ!俺はこの年になっても新作OCGを予約して発売日当日にカードショップに駆け込むようなヲタクだよ!悪いか!」
「アハハ!」
「ははは!」
ソルジャーの自虐に俺は爆笑し、その俺の爆笑にソルジャーも釣られて笑う。
「仲間……と思っていい?」
「アナザー・ワールドを救うという事ならば俺と君は仲間たりえるだろうが……そうだろう?」
「うん!俺たちは仲間だね!」
俺とソルジャーは同時に鏡を通り現実世界へと帰還すると、近くのファストフードに入る。
「俺は高峰竜也だ」
「俺は赤城勇斗です」
「勇斗だな。俺のことは竜也でいい。年上だが同じ変身仲間だ。タメ口で頼むよ。これからよろしく」
「わかった。よろしく竜也!」
「おう!」
俺と竜也は再び手を取り合う。
「そういえばだが、勇斗はどうしてこんな変身ヒーローに?」
カップコーヒーをちびりと一口した竜也が疑問を口にする。
「俺は謎の声に導かれるように……って中二病みたいだけど本当だぞ!」
「ハハッ。それは俺も同じだから大丈夫だ」
「その声から世界を救って欲しいって言われてそのままズルズルと……って感じだけど。竜也は?」
「まぁ同じだな。だが……」
ニヤリと竜也の口が悪そうに歪む。
「アナザー・ワールドは鏡合わせの世界ってのは理解しているだろ?」
「ん……あぁ。建物とかも一緒だしな」
「そうだ。つまり……金も同じだ」
「んん……あああ!?おまっ!えっでも!?」
驚き声を上げる俺を宥めるように、竜也は俺の肩に手を起くと静かにと人差し指を口に当てる。
「鏡合わせだからな。紙幣や硬貨はもちろん、宝石やなんかもそのままだった。つまり」
俺の喉がゴクリと鳴った。
「俺たちはリアル勝ち組が確定したってことだ」
「う、うおお……」
「実際に初戦闘の後、俺はアナザー・ワールドを探索して、紙幣や硬貨を回収して自販機でテストしたし、実店舗の貴金属専門店から何個かの宝石を回収し、質屋に流したが普通に換金された」
「マジか……」
「つまりだ。紙幣や硬貨は勿論だが、貴金属をアナザー・ワールドから持ち込んで、こちらで自分で店舗を構える事も出来る……ということだ」
こいつ……天才か!?
「ただ、紙幣に関しては同じナンバーの紙幣が出回る事になる。バレる事はまずないだろうが砂漠で砂金を拾うくらいの危険があるな」
「それってほとんど無いのと同じじゃ……」
竜也、悪い子!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます