第3話 アナザー・ワールド
「変わらず俺の部屋だけど……」
『ここは既に鏡面世界アナザー・ワールドです。この世界では人は居らず、ただ鏡合わせのように建物のみが存在するだけ……』
「ふむ」
俺は窓から顔を出し辺りを見回すが、確かに人っ子一人居ない。
「俺は何をすればいいんだ?」
『アナザー・ワールドは異形の怪物に侵略され、その異形の怪物は現実世界への干渉を目論んでいます。奴等が現実世界への扉を開けば瞬く間にあなたの世界は滅亡の危機に瀕してしまうでしょう』
「なるほど……つまり、俺はその異形の怪物を倒すために力を与えられた?という事でいいのか?」
『はい。あなたのそのオーガの力で異形の怪物を倒して世界を、アナザー・ワールドを救ってください』
「なるほど……」
つまりは現実世界を跨いだ異世界で怪物を倒して現実世界と異世界を同時に救う、変身ヒーローといったところか。
「男なら誰しもが憧れるポジションだな!やってやるぜ!」
『カードデッキで現在使用出来るカードはあまり多くありません。使用出来るカードを集め、腕を磨くのです』
「ふむ」
試しにゴブリンのカードを読み込ませるが何も起こらなかった。
『使用出来るカードは読み込ませると効果が発動しますが、その他のカードは何も起こりません』
「まぁそうか。ゴブリンのカードなんて発動したところで何にもならんか」
召喚獣でならともかく、敵として出現されたら目も当てられないもんな。
「ならばこの装備カードはどうかな?」
【パワーアンクル】
【パワーバンクル】
【パワーアーマー】
三枚のカードを連続でスキャンすると、空中に銀色の鎧が現れる。
それぞれが腕、脚、胸へと飛び込み、ガチャ!ガチャン!と勝手に装着されていく。
アニメの神甲冑や聖闘衣のようで俺のテンションは爆上がりだ!
『次回からは変身と同時に装着出来るようにセットされました』
「それはいいな!」
『では……早速ですが頑張ってください』
その声が終わると同時に、ガシャーン!と何かが俺の部屋の窓から飛び込んで来た!
「ギチギチギチギチ」
「おわ!?なんだ!」
見ればゴギブリを二足歩行の生命体に無理やり進化させたような化け物が目の前に居た。
口をギチギチと鳴らして手をワキワキと妖しく動かす仕草に怖気がさした俺は思わず拳を叩き込んでしまった。
ドゴン!と重い音を立て、ソイツは部屋の壁を突き破るとそのまま隣の家の屋根までぶっ飛んで行った!
「おお!すげえ!なんてパワーだ!」
振り抜いた手をまじまじと見て、ぶっ飛んだ怪物を見ると、怪物は体を震わせながら何とか起き上がろうと藻掻いている。
「これは使えるかな?」
俺は一枚のカードをスキャンする。
【コンボー】
装備カードの武器、コンボーを読み込ませれば重そうな鉄塊が屋根を突き破って目の前の床に突き刺さった。
「出現の仕方が凶悪すぎ!」
俺は鉄塊の取手を握ると大木のように太くなった腕一本で簡単に引き抜くとそのまま怪物目掛けて投擲!
「おらぁ!」
ブォン!と空気を裂き、怪物に突き刺さり怪物は塵へと消えた。
『倒しました。お疲れ様でした』
「なるほど……倒せば塵になるのか」
部屋の壁は俺の投擲でボロボロと壊れて行くけど……
「この部屋……大丈夫?」
『心配には及びません。現実世界のあなたの部屋には微塵も影響はありません』
「なら良かった」
後先考えず、テンションだけで行動してしまった結果、リアルの部屋が雨晒しになりましたとかになったらきっと俺は家を追い出されてしまうだろう。
こうして異世界アナザー・ワールドを救う変身ヒーローとしての初戦を勝利で飾った俺の物語が始まったのだが………
「だから遅刻するッ!」
今日も俺は自電車で公道を爆走する!
時と場所を選ばず現れる異形の怪物のせいで俺の高校生活はハードモードとなったのだった!
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