第14話
その日は朝からボルゴグラード城は大騒ぎだった。城内をひっきりなしに
今日はついに北方騎士団が小鬼の討伐の遠征に向かう日だ。
秋真っ最中で冬が近づく今、長い間向こうに留まることは出来ないため、
だから、騎士団のほぼ全騎士を一気に叩きつける作戦に決まっていた。
馬に
北方騎士団が出撃するとはいっても、全軍を引き連れるわけではない。
今回の相手である小鬼は地中から奇襲を仕掛けてくるため、安全な場所が確保できないからだ。今回の遠征の指揮官は自身も優秀な騎士である副団長が務める。
「ショルツ卿、どうかご
グウェンドリン卿が不安そうな表情を浮かべている。例に
「
僕はグウェンドリン卿の
ブンブンと手を振ってくるグウェンドリン卿に手を振り返しながら、僕は改めて気合を入れなおした。久々の大規模な
ボルゴグラード城から馬に騎乗した騎士たちが長い隊列を組んで街道を通る。僕の
道脇の畑で
次の瞬間、マルグレット卿がいきなり矢を放った。矢は放物線を描いて遠くの丘の
小鬼の
「マルグレット卿、いったいどうしたのですか?」
マルグレット卿はまるで目を凝らすように丘の方向を眺めた。
「今、誰かがあの丘の上にいたように感じたのですが…。」
僕も丘を見つめるが、ただ背の高い草が風に
小鬼たちの姿は全く見られなかった。
すんなりと北方騎士団は村の近くにまで
騎士たちが槍を地面に突き刺し、地下道の出口がないかどうか確かめている。
野営地の周りは
ボウォオォォ……。
辺り一帯に
ロートリンゲン卿は変人だが楽器の扱いに関しては右に出る者は騎士団内にいない。ロートリンゲン卿の吹く角笛は
騎士団は副団長を頂点に、騎士の宿舎ごとに任命された各
それに加えて、僕やマルグレット卿のような副騎士団長が直接任務を言い渡す特任騎士が
分館長たちが自身の指揮下の騎士たちに作戦を伝える中、僕を含めた特任騎士たちも副団長を中心に集まった。
「さてと、今回の遠征における作戦の
その結果得られた情報によると、小鬼たちは北方の森一帯の地下に広がる巨大な坑道網を作り上げている
「小鬼共は
それならば、我々のとる作戦は単純だ。連中を
青の
「これから我が北方騎士団は四人の分館長の指揮のもと、現在確認されている全ての坑道の入口を封鎖して煙を流し込み、そして小鬼が飛び出してくるのを待ち構える。
卿ら特任騎士たちの任務はこの時に坑道の入口から漏れだすであろう煙を頼りに未だ発見されていない入口を発見することにある。」
うわぁ、なんというか。僕は副団長の情け
背の高い針葉樹が天高くそびえる北の森の中。木々の合間から差し込んでくる日光に照らされながら僕は作戦開始の合図を待ち構えていた。
脇には行動を共にすることになるマルグレット卿もいる。二人とも剣や弓に手を添え、いつ奇襲されても迎え撃てるよう周囲を警戒していた。
森の中にも関わらず
遠方の野営地の方向で
やがて、森のあちこちから煙が立ち上っていくのが見えた。僕やマルグレット卿も周囲を見渡して煙の出どころを探る。
しかし、不幸というべきか幸いというべきか、僕たちの周りには煙が
「ショルツ卿、私はあそこの丘の上に登ってみます。」
落雷でもあったのか、森の開けたところに丘があった。マルグレット卿はその丘を指さし、僕に言葉をかけてきた。
「いいですよ、僕はもうすこしこの辺りを探してからそちらに向かいます。」
僕が頷くと、マルグレット卿は足早に丘に向かった。僕はマルグレット卿が立ち去るのを見届けると、視線を地面に向ける。
なぜか、僕のうなじが痛いくらいにピリピリとしていた。経験からしても、ここまで身の危険を感じるのは久しぶりだ。
これほど直感が
前言撤回。何者かが僕の後ろから近づいてきている。
殺意は感じない。しかし、あからさまに僕に
ゆっくりと、背後の気配が近づいてくる。あともう少し、あともう少しで剣の間合いに入る。
背後にいる何者かがさらに一歩僕に向かって
相手の足を
そうして地面に
僕の目の前で、その人間は起き上がり鎧に
鈍い金属光沢を放つその
「まったく、困ったものだ。ショルツ、お前は遊び心のない奴だな。私が驚かそうとしてやったというのにいきなり剣を向けるとは。」
すこし不機嫌そうな声も今は気にならなかった。
「ど、ど、どうして…。」
パトリシア殿下がここにいるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます