第52話 偶然の出会い
○
「う、うごくな!」
死体を抱え、十回ほど馬車へ往復した頃、金属鎧をガチャガチャと鳴らしながら赤騎士達が入って来た。
騎士達は状況に動揺しているのだろう、俺に剣を向けたまま動かない。
死体を抱えたまま、俺も動けない。
そのまま、十数秒いると騎士達の後方が少し騒がしくなってきた。
俺に剣を向ける赤騎士達の間を、白い鎧にヘルムを腰につるした髭面の男が抜けてきた。
「お前さんが冒険者で転移者の世話係やってるって言う、ベンノ・シュタインか?」
「ああ。シュタインドルフだが」
「シュタインドルフだな、警備隊は剣を下ろせ。俺は近衛隊、サイモン・ハイトだ」
「おう、よろしく。それより、どうしてここに?」
「第二区に帰ってきた副隊長からの指示でな」
「そうか」
勇者達が第二区に戻ったのは随分早かったようだ。
白と赤の騎士が何もしないのを見て、俺は仕事に戻った。
『身体強化術』で体を強化して、馬車に飛び乗り死体を並べる。今が十二人。
馬車を降り、次の死体の前で手を合わせ、抱え上げた。
「シュタインドルフ。ここは俺達が引き継ぐぞ」
「そうか、頼んだぞ。ハイトさん」
「ふっ、ハイトでいい」
抱えている一人を並べ、目を閉じさせる。
問題になるのは臭いくらいだから、服についている少しの血は大丈夫だろう。
赤騎士達の間を抜けて、倉庫から出る。
外には大量の赤騎士と少しの黒騎士がいて、出てきた俺の方に視線を向けて、すぐに仕事を再開した。
中に入って来た赤騎士は新人だったわけだ。敵がいない事は知っているから突入の練習でもさせたのだろう。
そんなことより、これからの方針を聞く為に勇者達の下まで帰らないと。
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