第51話 元商会の護衛達③

 ○


 ベンノが倉庫にあった馬車の中に死体を運んでいる頃、サングラスをかけた幼女は訓練場にいた。

 ここにはベンノが引き入れた商会の護衛だった五人もいた。フルプレートアーマーの男、マヌエル・アクトン。青ローブ、ヤルミラ・ハルム・スタラー。契約魔術を使える、アンドレア・ファロン。ブライズ・アボット。セレスト・ギーズ。


「訓練は順調か?」

「はい、始めたばかりなので上手くいかない者もいますが、スタラーは四つ目です」


 アクトンはそう言って、赤い石を三つ差し出した。

 差し出された石を手に取り、角度を変えて何度か見るとポケットに収めた。


「スタラーは次の訓練だ。他も訓練を再開と言いたいところなのだが、ついてこい」


 五人は新しい小さな雇い主の指示に従い、訓練場を出た。

 訓練場から伸びる廊下は彼らが暮らしている大部屋にしか続いていない。

 そのまま廊下を進み続け、大部屋に入ると床に寝かされている四人の女性が彼らの目に入った。


「今日の訓練は終わりだ。この四人を回復させ、共に訓練する。お前達のこれからの仕事だ」

「彼女らが回復するまで訓練はできないという事ですか?」


 スタラーの言葉にゆっくりと頷く雇い主を見て、ギーズが質問をする。


「回復魔法を使えるのはスタラーだけです」

「そうか、なら今日はスタラーが回復、アクトン以外は回復した者を少し綺麗にしろ。明日以降は他の者が訓練を終えるまで、スタラーが四人の面倒を見ること、分かったか」


 五人は返事をしながら、四人を見た。

 ボロボロの服、服に沁みついた糞尿の臭い、生気の薄い肌。茶や金の髪はくすんでボサボサだ。


「あのー、戦闘経験なさそうな子を訓練させるんですか?」

「そういうものだ。ちなみにこの四人はお前達を引き込んだ奴が拾った」

「シュタなんとかっていう奴ですね?」

「アクトン、いずれはお前の上司になる奴だからな。名前くらい覚えろ」


 その言葉にいち早く反応したのはオレンジ髪の女。ブライズ・アボットだった。


「名前、教えてください」

「アボットは怪我して寝てたな。アイツはベンノ・シュタインドルフという。早く訓練を終えろ。アイツは、お前達を待っているぞ」

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