13話:モードレッドとの模擬戦
翌日、フェイドは魔王城の外にある修練場にやってきていた。
周囲の者はフェイドに声をかけようとはしない。それは、フェイドが人族である前に、前回の戦いで蹂躙したことに問題がある。
修練場には二人の八魔将が試合を行っていた。
一人はフェイドが探していた人物であるテスタと、もう一人はモードレッドであった。
二人の試合は激しく、余波が修練場に全体に届いていた。
テスタは楽しそうにしており、そんな彼女の相手をしているモードレッドの表情は余裕があった。
「成長したな」
「えへへっ。でも、ボクだってあの頃よりもっと強くなったんだから!」
「ほう」
テスタの発言にモードレッドの表情に笑みが浮かんだ。
俊敏な動きでモードレッドへと迫るテスタは、懐へと飛び込み土煙を上げた。そしてキンッという甲高い音が鳴り響いた。
土煙が晴れると、背後をとって斬りかかったテスタの一撃がモードレッドによって防がれており、剣先が彼女へと突き付けられていた。
「そんな! 完璧な死角からの攻撃だったのに!」
「そのような手を使うのは変わってないな」
「むぅ~!」
頬を膨らませて不満な表情を浮かべるテスタ。すると、モードレッドがフェイドの存在に気付いたようだ。
「フェイドか」
「フェイド⁉」
二人の下に向かう。
「二人はよくこうして試合をしているのか?」
「そうだよ! モードレッドはボクの師匠でもあるんだ!」
「そうだったのか。剣の技術に関しては素人だから、俺にも教えてほしいものだ」
「ほう。なら手合わせしてみるか? 魔法無しの純粋な剣技のみで」
魔法を使われたら、流石のモードレッドでも敵わないと理解しての発言だった。
フェイドもモードレッドのような剣技に長けた者が教えてくれるならと、その提案を飲んだ。
「では受け取るといい」
投げ渡されたのは、刃が潰れている模擬戦ようの剣であった。
フェイドはモードレッドと対面するような形で対峙し剣を構えた。
「テスタ、合図を頼む」
「ええ、あ、うん! それじゃ――始めっ!」
こうしてフェイド対モードレッドによる模擬試合が始まった。
先に仕掛けたのはモードレッドであった。足元に力を込めて地面を蹴ったことで十メートルという距離はいともたやすく潰れ、剣先がフェイドの喉元に迫る。
それを冷静に見据え手に持つ剣で横から払うように弾いたが、弾かれたモードレッドは力に逆らうことになく勢いを利用して後ろへと下がった。
モードレッドから仕掛けてくることはないので、フェイドは試されていると理解した。何も言うことなく、モードレッドとの距離を一瞬で詰めて斬りかかった。
一瞬で眼前に迫ったフェイドを見ても、モードレッドは動揺する素振りを見せずに対処して見せた。
弾くのではなく、受け流すようにしてフェイドの懐へと潜り込んだ。
「なっ⁉」
思わずフェイドの口から驚きの声が漏れた。
受け流されたことで前方へと体勢が崩れ死に体を晒す。そこに刃の潰れた剣がフェイドの体を切り裂くかのように迫る。
流石にマズいと感じたフェイドは、空いた片方の手を地面に付けて腕の力だけで飛んで回避した。
まさかの回避方法にモードレッドの目が見開かれる。
「これを避けるとは、流石の身体能力か」
「それほどでも!」
隙を付いて斬りかかるも、フェイドの手に持っていた剣を絡めるようにして弾き飛ばした。
死に体を晒すフェイドに剣が突き付けられた。
ここから剣技のみではなく、魔法や体術が可能なら圧倒できただろうが、これは純粋な剣技のみでの勝負である。
圧倒的な力で剣を振るって勝っても、それはモードレッドに申し訳が立たない。
「俺の負けだ」
フェイドは素直に負けを認めるのだった。
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