12話:すべては復讐のために
「中央は囮だというのか?」
フェイドは頷いた。
南東と南西で戦っており、中央に戦力を投入する動きは悪くなかった。
魔王城に向かう途中にも話していたが、連合軍は船の建設を行っている。攻めて来る時期は不明だが、中央での戦いが始まって激化した頃に東部の海上から上陸して攻めて来ると考えていた。
そのことを説明すると誰もが頭を悩ませていた。
「船を作っているとなれば、フェイドの言った通り東部の海上から攻めて来る可能性は高いだろう」
モードレッドはフェイドの説明に納得していた。
フェイドを信じ切ることができない【八魔将】の面々と幹部達。そこでモードレッドがある提案をフェイドへとする。
「フェイド。お前に東部の防衛を――いや、攻めて来るだろう連合軍を倒してほしい」
ジッとフェイドの視線を見据えるモードレッド。
(本当に魔族の味方になったのか示せってことか)
それに、と考える。
魔王軍に海上での戦力は皆無に等しい。
ワイバーンに乗って戦う部隊も存在するだろうが、相手に勇者がいるとなれば話が変わる。
数百を超えるドラゴンを闇の軍勢に加えたフェイドならば、勇者がいても十分に戦うことができる相手だ。
「構わないが、監視くらいは付けたらどうだ?」
別に監視を付けなくてもフェイドは連合軍を倒すつもりでいた。
「監視は必要か。魔王様、連合軍の動きを探りつつ動きがあれば東に軍を送ってはいかがでしょうか?」
「ダメだ。中央戦線に割く戦力を考えるとこちらに多大な被害が出る。向かわせてもせいぜい数万が限界だろう」
モードレッドの提案をエリシアは否定し、数万の兵力しか送れないことを告げる。
魔王軍は連合軍を相手にギリギリの戦いを強いられており、できる戦略もそこまでは多くなかった。
(その数万の兵力は他に回したいだろうな)
エリシアはフェイドが思っていた通り、東の海上を使って攻めて来るかもしれない連合軍を相手に兵力を割きたくなかった。
「東部は千もいれば十分だ」
「だが、フェイド!」
「俺が行く。だから東部は任せろ」
発言にアゼッタが一歩前に出て跪いた。
「魔王様、発言のご許可を」
「よい」
「ありがとうございます。それでしたら、私がフェイドの監視をさせていただきます」
「ふむ。できれば中央で魔法部隊の指揮を執ってほしかったが、理由でもあるのか?」
「千人程度なら、支障は出ないと考えております」
アゼッタの回答にエリシアは顎に指を添えて思考する。
魔王軍の総戦力は百万人強となっており、アゼッタの抱える軍団の規模だが、後方支援を含めて五万人となっている。
規模から考えると少ないように見えるが、それは魔法を専門とした軍だからである。
「ふむ。そうしよう。フェイドもそれで構わないな?」
「問題ない」
「では任せた。アゼッタも、よろしく頼む」
「はっ!」
そこからさらに詳細に配置などが練られることになった。
数時間にも及ぶ作戦会議が終わり、フェイドとアゼッタは玉座の間に残っていた。
アゼッタはフェイドに遠慮なく言い放った。
「ハウザーを倒した実力は認めます。それに魔王様はあなたを信用しているようですが、私はまだあなたを信用していません」
正面からこうも「信用していない」と言われたことに、フェイドは一瞬驚いた。
だが、フェイドも誰かが「この人は信用できる人」と言われてもそう簡単に信用しないのと同じだ。
だからアゼッタの発言に納得していた。
「信用されていなくてもいい。俺は勇者に、人間に復讐のために魔王であるエリシアと手を組んだに過ぎない。それはエリシアも理解しているはずだ。無理に信用しろとは言ってない」
「そうですか」
アゼッタはそう言ってフェイドに背を向けて去って行った。
他人からの信用を勝ち取るには相当な努力が必要になる。努力がなくとも、長い月日が経つことで人は信用するものだ。
だが、フェイドにとって他人から得られる信用などどうでも良かったのだ。ただ、家族や村のみんなを殺し、人類の敵と言った者達を殺すのみ。
それ以外は必要ないのだから――……
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