11話:これから
誰もが圧倒的な強さを見せたフェイドへとフェイドに畏怖の念を向けていた。
これが人間の手にすることのできる強さなのかと。
一人で人類を滅ぼせるだけの力を備えているではないかと、全ての者がそう思った。
「これでフェイドの強さを理解してくれたと思う。では戻り今後の動きを話すとしよう」
エリシアはそう言って先に玉座の間へと戻って行った。
フェイドはハウザーへと歩み寄って手を差し伸ばす。ハウザーはフェイドの差し出す手の意味を理解して掴み取って立ち上がった。
「ありがとう」
「礼など必要ない」
「そうか。フェイドと言ったな。俺達はお前の力に頼ることになるだろう」
ハウザーの言葉に、フェイドは「そうか」と答え背を向けてエリシアの後を追った。
しばらくして魔王軍の幹部クラスの者達が集まった。
この場にいない将軍もいるが、その者達は防衛線で魔王軍の指揮を執っているため来ることはできない。
エリシアもそれを理解しているために、咎めるようなことは一切しない。
揃ったことを確認したエリシアは一つ頷き口を開いた。
「揃ったようだ。では始めるとしようか。とその前に、フェイドには今後一緒に行動を取ることもあるだろうから、この場にいる将軍達である【八魔将】を紹介しよう。八人いるのだが、この場にいない二人には別々の戦線を任せているので、また今度紹介することになる。では一人ずつ自己紹介をしてくれ」
エリシアの言葉に赤髪で赤眼の男性が一歩前に出た。
「魔王軍第一軍団長のモードレッドだ」
モードレッドと名乗った男はそれだけ名乗ると一歩下がった。
次に黒く艶やかな長髪に紫目の美女が一歩前に出た。
「魔王軍第三軍団長のエレオノーラです。どうぞよろしくお願いしますね」
感じる魔力は多く、フェイドは彼女が魔法での戦闘をするのだと瞬時に理解した。
将軍の中ではエレオノーラの保有する魔力量が一番多いだろう。
エレオノーラが一歩下がると、次に前に出たのはハウザーだった。
「改めて、だな。魔王軍第四軍団長のハウザーだ。フェイド、俺はお前を歓迎する」
紹介の時と比べ、ハウザーはフェイドへの人当たりが温厚になっていた。
フェイドはこれがハウザーの素なのだろうと考えていた。
ハウザーが一歩下がると、次に前に出たのは小柄な少女であった。金髪のショートヘアに、赤い目をする彼女は名乗る。
「ボクはテスタ。魔王軍第五軍団長をやっています。よろしく、フェイドさん!」
フェイドの第一印象は、元気な女の子って感じだった。
テスタが一歩下がり、次に前に出たのは水色長髪に青く透き通るような瞳をした少女。
「私は魔王軍第六軍団長のアゼッタ。よろしく」
それだけ言うと一歩下がって眠そうに欠伸をしていた。
アゼッタの態度を咎めようとする人はおらず、それは魔王も同様のようだった。
最後の者が一歩前に出た。
その者は黒い長髪をしており顔は仮面で隠れていた。仮面から覗く赤い瞳がフェイドを見つめる。
「第八軍団長のフェスカーだ。何かあれば頼らせてもらおう」
それだけ言うと下がりエリシアがこの場にいない二人のことを説明する。
戦線にいるのは第二軍団長のヴェノムと、第七軍団長のシュロームと呼ばれる二人のようだ。
フェイドは全員の名前を聞いたことがあった。特に、モードレッドに関しては一人で一軍を相手に剣一本で戦い蹂躙したという過去を持つ。
ついた二つ名が【
魔王軍最強とも謳われる魔剣士であった。
当然、連合軍はモードレッド並びに【八魔将】の動きを警戒している。
一人でも戦場に現れれば、それだけで脅威になるからだ。
「では、このまま今後の動きを話すことにしよう」
そう言って【八魔将】並びに幹部を含めて会議が行われた。
現在、最も激戦区となっているのは、南部の中央戦線であった。
そこには【八魔将】がおらず、厳しい戦闘が繰り広げられていた。
「現在、中央戦線に複数の勇者とさらに援軍を投入する動きが見られます」
報告をしたのはフェスカーだった。
どうやって情報を集めたのかといえば、手の者を近くに忍ばせていたのだ。
「勇者は今、南西と南東に一人いると聞いているが事実か?」
「その通りです。ヴェノムとシュロームが抑えております」
それでも相手は勇者だ。戦力は減ってく一方だった。
「中央に戦力を集めて一点突破でも考えているのか?」
エリシアは呟き、隣にいるフェイドへと尋ねた。
「フェイドはどう考えている?」
その問いに、誰もがフェイドへと視線を向ける。自身に集まる視線を気にした様子もなく口を開いた。
「――囮だな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます