第3話 時間潰し

現実だ。

夢だと心の底では思っていた。

でも、覚めないんだ。少しも。

5分経過、10分経過、20分経過。

時間の流れを感じた。

これは現実なんだ。

3週間の間、親にも友達にも会えないし、テレビも動画も見ることも出来ない。

「…………」

「どうしたの?」

ルフエルが心配してくる。

「……帰れる?」

「帰れるよ」

即答だ。

「この列車に乗ってきた人はこの列車の記憶はどうなるの?」

「とても思い出しにくくなる。完全には消すことが出来ないから」

「そっか…今戻るとどうなる?」

「君が生きている世界線に来れてないから君は死ぬことになるよ」

もう逃げれないのか…死ぬのはやだな…

「今、死ぬよりはマシみたいなこと思ったでしょ?」

「そんな感じのことは思ってたけどなんでわかったの?」

「この列車は生きたいと心から思っている人しか乗せないからね」

「そんなんみんな思ってるんじゃないの?」

「いいや」

食い気味に否定された。

「あなたが思っている人ほど『生きたい』と思っている人は少ないの、ただ痛い思いしたくないだけでね」

「……」

「分からなくていいよ、そんなことより「しりとり」でもする?」

「暇だしする」

天使と「しりとり」とか貴重すぎるだろ。

「じゃあリから」

ルフエルに振る。

「『リノエル』」

即答だ。

「『ルビー』」

「うーん『ビーカー』」

「『カラス』」

「『スフエル』」

なんかそんな天使いるのかな?

「『ルール』」

「『ルフエル』」

る責め?

「『ルート』」

「『トサエル』」

「ちょっと待って、天使の名前でる責めめっちゃできるよね?」

「そうだね、知り合い言うだけで勝てる」

「えーそういうことするなら『ルートナ』」

昔書いた小説の登場人物だ、今では黒歴史。

「えー知らない人の名前出さないでよー」

いやお前が言うなや。

「っていうか3週間の間どうやって時間を潰すの?」

「3週間なんて初めてだから別になんもないよ」

「そっかぁ、それは困ったなぁ」

寝た方がいいのかもしれない。

ふと窓の外を見ると。時計らしきものが並んでいた。

「あの時計みたいなものって何?」

「あれはねぇ〜、実際時計だけど1億年単位から0.1秒単位まであるんだよ」

「細か!」

「時間軸は移動しないようにしなきゃいけないから、0.1秒単位の時計まで今回は止まってるけど、普段は凄いスピードで動いているよ」

「まぁそうだろうねぇ」

世界の裏側を知っていくの凄い楽しい。

「ちなみに時間軸はどうやって移動するの?」

「3次元の世界の君には説明出来ないよ。」

「そっかぁ……これって窓開けられる?」

空の真上が見たくて、窓を指しながら言う。

「開けられるよ、開けていいよ」

窓は持ち上げて開けるタイプだった。窓を開けて上を覗き込む、すると更に大きな時計が見えた。針はほぼゼロを指している。

「上の時計って何?」

ルフエルは言っていいのかなという顔をしている。

「それは世界の寿命」

「!?」

「ひとメモリの単位聞く?」

「……やめとく」

この世界って始まったばっかだったのか…

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