第60話 話を聞いた
私は
「えっと、何処からお話すればいいかしらね、カオリちゃん?」
「ママ、私を身篭ったところからで良いよ」
「そうね、それじゃ鴉さん、聞いて下さる?」
私は静かに頷いた。しかし、まさかの
「私が主人と出会ったのは……」
「ママ! そこからじゃなくて良いのっ!!」
「アラ、ダメよ、カオリちゃん。ここからお話しないと鴉さんには伝わらないわ。ねっ、鴉さん?」
クッ! 私は
「ほらね、カオリちゃん。鴉さんだってそう言ってるんだから、パパとの出会いからね」
ハア〜とカオリちゃんがため息をつく。どうやらカオリちゃんも諦めたようだ。
「えっとね、主人と出会ったのは20歳の頃で、主人は若いけど既に敏腕ディレクターだったの。それであるドラマを主人がディレクターとして仕事をしていた時に……」
この後、
そして、やっとカオリちゃんを身篭ったところまで話が進んだ。
「カオリちゃんったら、お腹の中から私に話しかけてきたんですよ、凄いですよね、鴉さん!!」
ああ、ハイ、凄いです。
天然か? 天然なのか!? 私がカオリちゃんを見ると諦めろという目で私を見ていた。そうか、コレが素の
「でね、最初に私に言ってきたのは『勇者タケフミは何処?』って言ってきたんです。私は訳が分からなくて、えっ!? 何? って感じになっちゃいました。ねっ、そうなるでしょ? それでね、落ち着いて話を詳しく聞いたらカオリちゃんったら、『私は前世があって、この世界とは違う世界で魔王カーナと呼ばれていた!』なんて言うんですよ。魔王って…… 女の子なんだから魔女王ですよね、そうでしょ鴉さん?」
はい、仰る通りです! 女神!
「それから更に話を聞いてたらその違う世界の神様? が、カオリちゃんが居たら世界の魔素の消費が激しくてバランスが崩れるからって、地球に転生させてあげるって話を持ちかけて、で、私のお腹に身篭ったらしいの。でも、前は魔女王だったとしても、私の可愛い娘だから直ぐに私も分かったわって受け入れたんです。だって愛する主人との愛の結晶ですもの。分かります、鴉さん?」
はい、分かります、女神! 私はイエスマンに徹した。
「でもね、カオリちゃんが産まれてきてビックリしたんです。だって魔法が使えるんですよ! 私の可愛い娘は魔法使い、ううん、魔女っ
うん、
「でもね、2人目の娘は魔女っ娘じゃなかったの。ちょっと残念だったけど、でも凄く演技に対しての才能があったみたいで、今も女優を目指して私や主人の名を出さずに1人で頑張ってるんですよ。アオイちゃんも自慢の娘です。でも、何故かアオイちゃんも鴉さんの事を知ってたんです。心当たりってありますか?」
ん? 私は心当たりはありませんけど。それは地球に戻ってからの私の事を知ったという意味じゃないんですか?
「違うんです。アオイちゃんも『勇者タケフミは何処に居るの?』って3歳の頃に私に聞いてきたんですよ。だから、アオイちゃんもカオリちゃんと同じで前世の記憶があって、それがカオリちゃんの居た世界と同じだったんだなって思ってたんですけど…… 違いましたか?」
私はカオリちゃんを見た。すると、カオリちゃんは言いづらそうに私に言った。
「ほら、あの最後のときに私とタケフミの対戦を見ていたあの娘が居たでしょ? 覚えてる?」
うん? うーん? あの時に誰か居たかな? 私は思い出せなかったのでカオリちゃんを見た。
「あ、そっか…… あの時はタケフミは私との対戦にかなり集中してたから気づいてなかったのね。クスッ、一進一退の攻防だったものね。私の実妹だった魔女リーネが同じ部屋に居たの。そして、あの時の対戦を見て、私も地球にって神様に言って転生してきちゃったのよ……」
そのカオリちゃんの言葉に
「まあ!! そんな事ママはいま初めて聞いたわっ!? どうして教えてくれなかったの、カオリちゃん」
「ママ、ゴメンね。でもアオイはコッチに転生して魔法が使えなくなってたから、アオイと相談してママには内緒にしておこうって話になったの。アオイは魔法が使えなくなった事を知った5歳の時に普通の娘として生きていくって決めたみたい。だから、それ以来タケフミの名前をアオイは口にしてないでしょ?」
「まあ! そうだったのね…… それでもママは知っておきたかったわ。2人が前世でも地球に転生しても姉妹で居られたなんて、素敵な神様ね。ねっ、鴉さん」
だが、その言葉に異議を唱えたのはカオリちゃんだった。
「ママ、それは違うわ。あの世界の創生神は自分の世界を守る都合を優先させて地球で平和に暮らしていたわずか15歳の子を
おおうっ! そんなに激しく怒りを噴出したら窓ガラスが割れてしまうよ、カオリちゃん。だが、私の心配をよそに
「メッ! そんな悪いことを言う娘に育てた覚えはありません! ダメよ、カオリちゃん。物事の悪い面だけみたら。だって、ちゃんと会えたでしょ? 貴女の想い人に……」
そう言ってカオリちゃんの頬を両手で軽く挟んだ。その言葉にカオリちゃんはハッとした顔をして呟いた。
「ママ…… うん、そうだね。会えたのは確か」
凄いな、母は強しだな。私からもカオリちゃんに言葉をかける。
「有難うカオリちゃん。不甲斐ない私のかわりに怒ってくれて。確かにコチラに戻された時に両親が亡くなっているのを知って神に恨みを覚えたけど、私は生来、憎んだり恨んだりは苦手なようでね。生活していく内にそんな気持ちがどこかに行ってしまったようなんだ。だけど、カオリちゃんの気持ちは本当に嬉しかったよ。それに、もう会えないと思っていたのに、こうして会えたんだ。それが一番だよ」
私の言葉にカオリちゃんは嬉しそうな顔になる。
そして、
「それじゃ、結婚式は何時にするの? 私も主人も楽しみにしてるのよ。それにアオイちゃんも鴉さんには会いたいし、カオリちゃんとの事を祝福したいって言ってるの。日取りを早く決めましょう!!」
いや、気が早すぎですし、少なくとも桧山さんは絶対に楽しみにしてないと私は断言できますよ、
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