第43話 ご対面
その後、私はランドールの2人と弥生が身につけてる時計の魔力を消した。効果を消したのではなく、魔力を感じれる者にも普通の時計だと思わせる為に、発していた魔力を出ないようにしたのだ。
思えばマサシから諸外国の話を聞いた時に対処しておくべきだったと反省している。
チラッと私を見るヒヤマさんが気になるが、今は皆が居るので聞けないな。何故、ヒヤマさんはあのカガミとムトウを私が制した時に私がやった事だと分かったのだろうか…… それに、恐らくは今も私が魔力を消したのを感づいているようだ。
ハッ、もしかしてヒヤマさんも能力に覚醒してそれを自覚してる人なのか? 私はそう思い【魔視】を発動しようと思ったが、何故かその時に失礼な気がして、発動する事はなかった。
それから、仕事を終えたランドールの2人とマネジャーのヒヤマさんは東京に戻る時間となり、駅まで私が護衛する事になったが、折角なのでちょっと提案をしてみた。
「3人と、社長であるタカフミさんの許可が出たらだけど、車で東京まで送ろうか? 電車だとファンが居たら落ち着いて休めないだろう?」
私の提案に目を輝かせて頷くナミちゃんとヒナちゃん。
「その方がいい!!」
「車なら寝ても大丈夫だよね!」
2人がそう言うのを聞いてタカフミさんも苦笑しながら了承してくれた。
「ハハハ、しょうがないね。ウチの稼ぎ頭2人が疲れた体を癒やすために、タケフミさん、お願いできますか?」
私は任せて下さいと言って、自宅に車を取りに戻る事にした。車は免許を取得した後にハイブリッド車を購入してある。ミニバンタイプで中も広めなので、ランドールの2人もゆったりと寛げるだろうと思う。
休みの時にその辺をチョコチョコ走りしかしてないので、私も遠くへと運転して出かけてみたかったのだ。
ここから東京までは車で凡そ2時間半だ。そのぐらいの時間だけでも休息出来たら若い2人ならば体力も気力も回復するだろうと思う。
私が車を運転して事務所に戻ると、ランドールの2人とヒヤマさん、そして何故か弥生まで乗り込んできた。
弥生よ、君には転移陣をプレゼントした筈だが…… 私が目でタカフミさんに問いかけると、
「タケフミさん、スミマセン。ついでに弥生も一緒に乗せてやって貰えますか?」
そう言われたので、私としては分かりましたとしか返事が出来なかった。
更には真理ちゃんの視線が怖い。何でそんなに恨めしそうな顔をしているのだろうか? その視線には呪力があるよ、真理ちゃん。そこで私は真理ちゃんに一言を言ってみた。
「真理ちゃん、戻ってきて時間が合うような時があれば、タケシも一緒にドライブにでも行こうか?」
私の一言に気に入らない文言はあったようだが、真理ちゃんは笑顔を取り戻してくれた。
「ホントですか!? タケフミさん。父は必要ないですけど、ドライブは約束ですよ! お互いの休日が合った時はよろしくお願いします!」
そう言った真理ちゃんはとても嬉しそうだったので、私はドライブする事を約束した。タケシも一緒にだよと念押しはしておいたが、何故かスルーされてしまった。
そして、ヒヤマさんとランドールの2人は後部座席に座り、弥生は助手席に座り、全員がシートベルトをしたのを確認して私は発車した。
「タケ
助手席の弥生がそう聞いてくるが、私も車を運転しだして気づいたのだが、運転するのが好きなようだ。
「ああ、大丈夫だよ。車を運転するのは好きだから、眠くはならないよ。途中、SAで1度休憩を入れるから、みんな眠いなら寝てていいよ」
私は後ろの3人にも聞こえるようにそう言った。
「ん、オジサンアリガト」
「ヒナ、寝るね〜」
「私も寝るわ。お願いね、タケ
ヒヤマさん以外からそう返事があり、車内は静かになった。私はBGMの音量を下げて周囲をしっかりと確認しながら運転に集中した。
SAに着いたので皆に声をかけてみる。
「SAに着いたけど、トイレや飲み物はどうする?」
「みんな寝てますから、飲み物だけ買ってきます。鴉さんも何か飲まれますか?」
ヒヤマさんから返事があった。
「いや、ヒヤマさん、飲み物なら私が買ってくるよ。皆を見ていてくれるかな? ヒヤマさんは何を飲むんだい?」
「いいんですか? それじゃ、私は紅茶をお願いします。無糖のストレートがいいです」
皆が寝ているから声は抑えているけど、嬉しそうな声でヒヤマさんはそう返事をくれた。私は車から出て自販機コーナーに向かう。車は結界で
地球にはベヒモスは居ないけど……
ジュースを買って車に戻ると弥生が起きていた。
「タケ
弥生は戻った私にそう言うと車から出ていく。私は咄嗟に弥生に認識阻害をかけた。コレで女優のヤヨイが居るとはバレないだろう。
ヒヤマさんに紅茶を渡した。
「【生紅茶】って初めて見る紅茶ですね」
「やっぱりそうなんだね。いや、ネーミングって思って面白いから買ってみたけど、良かったら定番の方も買ってあるよ? 定番の方が良いかな?」
「いえ、挑戦してみます!」
挑戦って。売られてる商品だからちゃんと飲める味の筈だよ、ヒヤマさん。
そんな会話をしていたら弥生が落ち込んだ様子で車に戻ってきた。どうしたんだ?
「何かあったのか? 顔が暗いが」
私が心配してそう声をかけると、弥生はハァ〜と一つため息を吐いてから喋り始めた。
「笑わないで聞いてね、タケ
ッ! そ、それは私の所為だ! そ、そうか人気商売でもある女優をしてる弥生からしたら、気づかれないっていうのは人気が無いという考えになるのか…… 悪い事をしてしまった。
「あ〜あ、私もまだまだねぇ〜…… もっと頑張ろっと!」
いや、十分に頑張ってるぞ、弥生。しかし、ヒヤマさんが居るから真実は言えないな。後でフォローしなければ……
それ以外には問題もなく東京に着いた。ランドールの2人とヒヤマさんはマンションに送り、弥生は東京事務所に行くというので、そのまま乗せて移動した。
勿論、その時に弥生にSAでの事は話しておいた。
「あーっ! タケ
ホッとした顔をする弥生に私は再び謝った。
「フフフ、許します。車でここまで連れてきてくれたし、ランドールの2人もゆっくり休めたみたいだしね。それより、タケ
おう、相川先輩が会いたいって言ってるならばお会いしなければ。私は分かったと弥生に言って東京事務所の駐車場に車を停めて、弥生と一緒に中に入った。
そして、私の一番会いたい人にそこで遂に出会ったのだ!
そう!! 深野涼子さんが相川先輩と話をしていたのだった!! なんという幸運だっ!!
弥生も知らなかったようで、びっくりした顔をしているが、それよりも私だ。
心臓の鼓動が激しい…… ああ、物凄く綺麗な方だぁ〜……
私はウットリとして深野さんに見惚れて、相川先輩への挨拶を忘れてしまっていたのだった……
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