第30話 ダニーズ事務所

 翌朝である。私は気分良く目覚める事が出来た。昨日の居酒屋【あらい】で、本当に美味しい物を食べて飲む事が出来たのが良かったのだろうと思う。今日も時間があれば行こうと思いながら起きて身支度を始めた。ホテルは一応3泊4日でとっているが、場合によっては延長してもいいなと思っている。

 私は身支度を終えてタカフミさんに電話をした。


「おはようございます。タカフミさん、昨日の今日ですけど近衛騎士ロイヤルガードのスケジュールは分かりましたか?」


「タケフミさん、おはようございます。それが、まだなんです…… すみません、今日のスケジュールは分からなくて。明日は収録で赤坂のスタジオに入るというのは分かったんですけど」


 明日は赤坂か。それならちょうど良いかも知れないな。私はそう思いながらタカフミさんに言った。

 

「そうですか。それなら今日は午後一には赤坂署の署長と会いますから、午前中はダニーズ事務所に行ってみたいと思います。ですので連絡は私からいれるまでしないで頂けると有り難いのですが」


「分かりました。そのように皆に伝えておきます」


 私はタカフミさんにお願いしますと言って電話を切った。そしてダニーズ事務所の場所を確認してからホテルを出た。電車で2駅の場所だったので、駅に向かい電車に乗る。電車内でダニーズ事務所についてネットで調べた。


 ダニーズ事務所の現在の社長はカリスマ社長だったダニー飛夢酒とびむしの長男で、レイヤ飛夢酒とびむしという名前らしい。どうやら最近では、ダニー飛夢酒とびむしが亡くなってから、古参の人だけじゃなく、売出し中の若手まで事務所を辞める事が多くなってきてるそうだ。

 その状態を何とかしようと色々と手を打っているそうだが、ことごとく裏目に出てしまい最近は事務所としての力も落ちてきて、今まで忖度そんたくされていた事も遠慮なく報道されたりしてる。

 それに事務所を辞めた人が素行不良で逮捕されたりした時にも、元〇〇の誰々といった感じでダニーズ事務所所属だった時のグループ名が前につくのでマイナスイメージが大きくなってるそうだ。

 

 そこまでweb週刊誌を読んだ時に最寄りの駅に到着したので私は電車を降りた。駅構内のトイレに入り【隠密】【不可視】【魔視】を自分にかけてからトイレを出てダニーズ事務所に向かった。


 大きい事務所だな。3階建てのダニーズ事務所はスターフェスの事務所の何倍になるんだ。私はそんな事を思いながら事務所に潜入した。先ずは1階。そこでは事務所スタッフが電話を受けたり、所属タレントのスケジュール管理をしてるようだった。そこを見てみたいが、先ずは各階を見て回る事にしよう。ここを出る直前に近衛騎士ロイヤルガードのスケジュールを確認する事にしよう。

 1階には他に広いスペースでダンスレッスンをしているタレントがいた。年若い子たちが15人ほど、指導者にレッスンを受けてるようだ。みんなダンスが上手だなと思いながら2階に上がってみる。


 2階でもダンスレッスン場とスタジオがあった。どうやら自社でレコーディングも出来るようだ。スタジオは誰も利用してないようだ。ダンスレッスン場では1階で踊っていた子たちよりも年齢が上の子たちが練習をしていた。コチラには指導者はおらず、自分たちだけで練習をしていた。

 暫くそれを見ていたら練習を終えて休憩になったので、私は彼らに近づいて話を盗み聞きしてみた。


「なあ、近衛騎士ロイヤルガードのシバタケがスターフェスのランドールを狙ってるって話だけどホントなのか?」


 おっ、ドンピシャの話題が出てきたぞ。私は更に聞き耳をたてる。


「ああ、聞いた聞いた。ホントらしいぞ。シバタケくんとアカシくんが中心になって5人でヤるって言ってたらしいよ」


「ちょっ! それマズくね? またアイツラが問題起こしたら俺たちまで叩かれるんだぜ。スターフェスは弥生さんに深野さんも所属してる事務所だし、規模は小さいけどそれなりの力は持ってるぞ」


 フム、どうやらダニーズ事務所内でも噂になるぐらいの話のようだな。それに、スターフェスはそれなりに評価されてるとみた。弥生も勿論だが、さすがは私の深野さんだ!!


「ダニーさんが亡くなってレイヤさんが社長になってから滅茶苦茶だよな……」


「シッ! ここでソレを言うなよ。盗聴器が仕掛けられてるかもしれないんだから!」


「あ、ああ。悪い、ついな……」


 正解だ。このレッスン場には3つの盗聴器が仕掛けられてるよ。それも3階にある部屋に繋がってるみたいだ。そこが社長室だろうと私は思った。


「取り敢えずシバタケには俺から注意しとくよ。流石に俺のいう事ぐらいは聞くだろうし」


「いや、ケイくんのいう事も聞かないかもしれないよ。最近のアイツラ、コウとつるんでるみたいだし」


 コウって誰だろうと私が思っていたら直ぐに答えが出てきた。


「なっ! コウとつるんでるって! アイツはウチを辞めてからクスリに手を出したりしてるから関わるなって言われてるだろっ!?」


「そのクスリを用意してるのがシバタケの知合いらしいよ。だからケイくん、俺たちは近衛騎士ロイヤルガードに関わるのはやめとこうよ」


 フム、ダニーズ事務所を辞めた子がコウというのか。そして、この子たちの認識ではそのコウはクスリをやっていると…… 

 そこまで聞いて私はレッスン場を出て3階に向かった。やはり盗聴器からの声を集約している部屋は社長室だった。今は中に人が居ないのを確認して、私は部屋に侵入した。

 部屋の中は雑然としている。秘書などは居ないのだろうか? 私はそう思いながら部屋の中を調べた。机の引出しに無造作に入っていた拳銃を見て、コレだけで逮捕される案件だなと考えたが、先ずは近衛騎士ロイヤルガードをどうにかしないといけないからなと、拳銃は取り敢えず無視することにした。


 レイヤ飛夢酒とびむしは大雑把な人のようで、その辺に散乱しているメモを拾い読みしてみると、仕事とのメモとプライベートのメモがゴチャゴチャになっていた。その中にこんなメモがあった。


【明日、午後8時、渋谷、クスリ、八万円】


 うん、アウトだな。私は下でタレントが真面目にレッスンをしてるのに、社長が何をしてるんだとツッコミをいれたい。しかし、このクスリももしかして近衛騎士ロイヤルガードのシバタケや辞めたコウが関わっているのか? 私は疑問に思いながら社長室を出て1階まで降りた。

 そして、1階のスタッフが居る部屋で近衛騎士ロイヤルガードのスケジュールを調べた。

 今日は千葉県でイベントに参加してるみたいだ。明日はタカフミさんが言ってたように赤坂のスタジオで収録予定【am9:00~am11:30】 その後お台場に移動してまた収録【pm1:00~pm4:00】をして、埼玉に移動らしい。


 そこまで確認して私はダニーズ事務所をあとにした。そして、赤坂に向かう。


 赤坂に着いたのは11時だったので、少し早いが昼食をとる事にした。昼時に赤坂署の署長を訪ねる事になっているので、食べておこうと考えたのだ。


 そして、昼12時5分前に私は赤坂署に行き、署長との面会を申し込んだ。タケシはちゃんと連絡してくれていたみたいで、私は制服姿の女性警官に署長室へと案内された。


 案内された署長室で私を待っていた署長は……


 

 

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