第12話 親友に仕事の相談と説明
自宅に転移した私はタケシに連絡を入れた。
「おう、タケフミ。どうしたんだ?」
「実は隣家の弥生と会ってな。それで仕事が決まったんだ。弥生の所属事務所の仕事を請け負う事になったんだ」
「おお、弥生さん、戻ってたのか。あ、昨日言ってた外せない用事ってそれか?」
「ああ、そうなんだ。それで、仕事について相談したい事があるんだが、今からって大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。そうだ、真理も一緒で構わないか?」
昨日、ドタキャンしてしまった私は真理ちゃんに謝罪したいと思っていたので、
「ああ、謝りたいと思ってたんだ。真理ちゃんの都合が良かったら一緒に来てもらって欲しいな。少し豪華な昼ごはんを用意しておくよ。」
とタケシに伝えた。タケシからは今から真理と2人で家を出るから、20分ぐらいで着くから無理しなくて良いぞと言われたが、私には秘策がある。
「ああ、大丈夫だ。実は朝から準備していてな。後は火入れしたりするだけだから、直ぐに出来るんだ」
そう伝えて納得してもらった。
そして私は【空間魔法】収納の中に入れてあった異世界料理を取り出して、家の皿に盛りつけ直すのだった。
メインは火竜肉のステーキだが、何の肉だと聞かれない様に会話をしなければと気がついてしまった。タケシだけならば素直に伝えればいいのだが、真理ちゃんには内緒にしておきたい。うん、ここは何とか誤魔化そう。
そうだ!? 弥生から就職祝いに貰った肉という事にしよう! 我ながら名案だと思ったよ。
そしてやって来たタケシと真理ちゃん。私はまず、真理ちゃんに昨日のドタキャンを謝罪した。
「お仕事の事を決める為だったんですから、しょうがないですよ。気にしないで下さい」
真理ちゃんは本当に出来た娘だ。タケシと同じように人を思いやる心を持っている。
そう嬉しく思った私は2人を家に招き入れて食卓についてもらう。
「うわー、凄いお料理の数ですね! それに全部、とても美味しそうです! タケフミさんが作ったんですか?」
真理ちゃんが机に並ぶ料理を見てそう言ってくれる。私は照れながら素直に返事をした。
「1人暮らしが長いとこれぐらいは出来る様になるんだよ。ただ、見た目はともかく味の保証は出来ないよ」
そんな私の言葉にタケシが調子にのって言う。
「タケフミ、1人暮らしって…… お前は、ハッ、いや、何でもない。気にするな、真理」
私の視線に気がついたタケシは直ぐに言葉をにごした。が、危険な事を言いそうになったな、タケシよ。その口を痛くないように縫い付けるぞ。
真理ちゃんはタケシの発言を気にする事なく、そのまま椅子に座る。
「私がタケフミさんをお祝いしたかったのに、このお料理を見てると、何だかタケフミさんに私がお祝いされてるみたい」
そう言って笑う真理ちゃんは職場に居る時とは違い、年齢相応の魅力的な笑顔を見せてくれた。
それから暫く料理を楽しんだ。案の定、メインのステーキの素晴らしい美味しさに2人から、どこ産の牛ですか(だ)? と質問されたが、私は弥生から貰ったので分からないと答えた。その私の体に鈍い痛みが走る。
そう、私は嘘が吐けない。それは魔王の呪いによって、嘘の度合いにより体に痛みが走るからだ。【状態異常無効】【絶対健康】を持つ私をしても解けない呪い…… いや、解かなかったというのが適切か。魔王との絆を無くしたくなかった私はその呪いを大切にしているのだから……
ちょっと物思いに
「それで、タケフミ。弥生さんの事務所からの請負仕事って何の仕事なんだ?」
「ああ、マネジャー兼ボディーガードの仕事を頼まれたんだ。昨日、弥生のご主人でもある事務所社長のタカフミさんに手伝って貰って個人事業主登録も終えたんだが、相談って言うのはボディーガードって日本だと何処まで手を出していいのか分からなくてな」
私の説明に真理ちゃんがビックリして聞いてきた。
「エッ! タケフミさん、あの弥生さんの芸能事務所に就職したんじゃ無いんですか? 個人事業主って、どういう事ですか?」
そこで私は昨日の
「そんな…… 東京だなんて…… いっその事、私も東京に…… でも……」
ん? 何で東京に? と私は思ったがタケシの言葉に意識を戻した。
「うーん、タケフミ。先ずは結論から言うと、日本だとボディーガードとはいえ過剰防衛をすると逮捕されてしまう。そこが先ずは一つ目の注意点だ。それから、捜査権は無いが依頼されて依頼者の同意の元に部屋の中を調べたりするのは構わない、が、証拠には触れずに警察に言うのが正しい手順になるな。基本的に調べて証拠を持って逮捕するという権利は警察にあるからな。但し、緊急時には一般の人にも逮捕権は認められている。例えば刃物を振り回したりしてる奴を取り押さえたりするとかな。ただ、危険なので警察としては逃げてくれと伝えているが。だが、お前なら大丈夫だろう」
そんなタケシの最後の言葉に真理ちゃんが反論したのには私もタケシもビックリした。
「何を言ってるの、お父さん! それでタケフミさんが怪我でもしたらどうするのよ!? お前なら大丈夫だろうなんて無責任な事を言うのは止めてよ!」
そんなに私を心配してくれてる真理ちゃんの心に嬉しく思う反面、本当に大丈夫なんだがなとタケシと2人で目を合わせあった。
「有難う、真理ちゃん。勿論、私もそんな物騒な
言葉ではこう言って真理ちゃんを安心させる。
「本当ですよ、タケフミさん。ちゃんと危ない時は逃げて下さいね」
「ああ、約束するよ。それに、先日見せたと思うけど、私には
私がそう言うと真理ちゃんはパッと目を輝かせて言った。
「そうでしたね! タケフミさんの霊感は凄いから、きっと危険も事前に分かりますね。それなら安心だわ」
あの時、真理ちゃんに
「それで、タケフミさん。マネジャーを兼ねるって事ですけど、誰のマネジャーをするんですか?」
真理ちゃんの質問に私は言っても大丈夫だろうと思い、素直に答えた。
「ああ、ランドールっていうアイドルらしいんだけど、知ってるかな?」
私の言葉に反応したのはタケシの方が早かった。
「なにーっ!! ランドールの2人なのかっ!? タケフミ、俺が変わってやろうか? いや、変わってくれっ!?」
タケシよ、県警に勤めてるお前がどうやってアイドルのマネジャー兼ボディーガードをすると言うのだ……
「タケフミさん、うちの
真理ちゃんが何やら物思いに
「決めた! お父さん、私、今の仕事を辞めるね。それで、私のやりたい事を目指したいの! 良い?」
真理ちゃんの突然の宣言に戸惑いながらもタケシは頭ごなしに否定せずに、むしろ応援するかのように言った。
「あ、ああ。突然すぎてビックリしたけど、真理がやりたい事があるなら気にせずにそれを目指せばいい。だけど、辞めるにしてもちゃんとケジメをつけてだぞっ」
さっき私に向かって言った言葉を忘れたかのように自分の事を棚に上げて言うタケシ。まあ、ちゃんと父親をしているんだなと安心はしたのだが。
タケシの言葉に分かった、有難うと返事をする真理ちゃん。それから、2人と雑談をしながら、近々、弥生の所属事務所が事務員を募集するようだよと私が言った時に真理ちゃんの目がキラーンと光ったのを私もタケシも見逃していたのだった。
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