第9話 開業しました
弥生は今すぐ家に戻って事務員2人を問い詰めようとしたけど、私は止めた。
「待て待て、今すぐ行ってもシラを切られて終わってしまうし、盗聴済みのも無効にしたから慌てなくてもいいだろ」
「タケ
そこでタカフミさんがまだ顔は赤いが私に賛同してくれた。
「弥生、タケフミさんの言うとおりだ。今はまだあの2人を問い詰める時じゃないよ。何の目的があって盗聴していたのか先ずは探らないと。それよりも先にタケフミさんの開業届を出してしまおう」
そう言ってPCの置いてある部屋を聞いてきたので、私は弥生に今日は大人しく様子を見るだけにしようと言って頷くのを見てから、タカフミさんを部屋に案内した。
「うん、型は古いけど問題ないようです。では、開業届を作成して提出までやってしまいましょう」
うちのPCを確認してそう言ってタカフミさんがPCを操作し始める。
「そう言えばタケフミさん、屋号はどうされます? ボディガードをメインにされるならそれらしい屋号をつけますか?」
なんて聞かれたけど私にはそんなセンスは皆無だ…… どうしようか悩んでいたのだがふと異世界での私に付けられた二つ名を思い出した。
「あの、屋号って何か決まりみたいなものはあるんですか?」
私はタカフミさんにそう聞いてみた。
「いえ、特に決まりなどは無いですよ。どんな屋号でも通ります。但しあまりに有名な名前なんかは使用しない方が無難ですね」
それならば大丈夫かな? 私は屋号を言ってみた。
「【迎撃紳士】ってどうでしょうか?」
私の言葉にタカフミさんは微笑んで、
「いいですねぇ。迎え撃つ紳士ですか。ボディガードとして紳士であるとの宣伝にもなりますね。では屋号は【迎撃紳士】で登録しましょう。仕事内容はどうしますか? 勿論、記載した事以外でも仕事とする事はある程度は可能なので、ボディガードとだけ記載しておきますか?」
そう言い、更に仕事内容を確認してきた。問われた私は一応、異世界でも村などで
「小物修理請負業も追加しておいて貰えますか? まあ、有資格の仕事は大っぴらには出来ませんが……」
そう言って追加してもらった。私も地球に戻ってきて免許取得中にある程度は勉強した。今は資格社会と言われていて、何でも資格が必要な時代らしい。
それから小一時間ほどで開業届の作成は終わり、提出もネットで済むらしく、あっという間に終わってしまった。
更にタカフミさんは、PCを操作してエクセルの画面を出して何やら作っている。
「少し待ってて下さいね。直ぐに出来ますから」
そう言ってから待つ事20分。
「タケフミさん、コチラに作った収支表に今日から使ったお金や、ボディガード依頼で手に入ったお金の金額を入れて貰えますか? 水道光熱費なんかも入れて下さい。それを元に僕が必要な帳簿類を作成しますから。それと、レシートなんかは取っておいて下さいね」
そう言って画面を見せてくれると、一番左端に項目を書く欄があり、次に収入、その次に支出を書く欄がある簡単なものだった。
「確定申告も僕が作りますから、細かい事は気にせず何でも収入や支出があったなら、ココに打ち込んで下さい。青色申告できるように申し込んでますからね」
そうタカフミさんは言ってニコニコしていた。何から何まで本当に有り難い事だ。私にはその辺の知識は全くと言っていいほど無いから。しかしコレで私も開業だ。依頼はもっぱらタカフミさんの会社からになるだろうが…… まあ、仕事がある間は一所懸命に仕事をしよう。
「さて、タケフミさん。早速ですが依頼をお願いします。タケフミさんは何か不思議なお力をお持ちのようだ。ですので、今自宅にいる2人が何で盗聴器なんかを仕掛けたのか調べて貰えますか? それと同時にランドールというアイドルユニットの2人の
そう言ってタカフミさんから正式に依頼された私は先ずは
そしたら何とただの好奇心から、2人の私生活を知りたかったらしく、盗聴器をしかけただけのようだ。はぁ〜、こういう人が居るから自宅を職場にするのは危険なんだな。
って、まあ私もたった今、自宅を事務所に設定してあるのだが……
私はタカフミさんに説明した。そして、今後自宅を事務所にせずに他に何処かを借りて事務所にすれば良いんじゃないかと伝えた。
「ナルホド…… まあ弥生は今でも人気のある女優ですしね。冴えない僕とどうして結婚したのかなんて言われてるのは知ってますし…… 良し、分かりました。タケフミさんのいうとおりに何処かを借りて事務所にします。弥生にもそのように伝えます。そして、新事務所を構えてからあの2人は解雇します。今の内に内緒で事務職員の募集を出しておきますよ。タケフミさん、PCをお借りしても良いですか?」
そう言うので私は快く了承した。10分ほどでその作業を終えたタカフミさんと2人でリビングに行く。
そこで、弥生が作ってくれたアテで3人でお酒を軽く飲みながら、弥生にもタカフミさんに言った事を伝え、弥生もそうするわと了承してくれた。
「でもあんまり自宅から遠い場所はイヤよ。それと、タケ
私は弥生にそう聞かれ、思わず出来ると頷いたが、タカフミさんが驚いている。
「ええーっ! そんな事が可能なんですか? 一体タケフミさんは何者なんですか?」
ここで私は覚悟を決めてタカフミさんにも私の事情を説明した。弥生だけ事情を知っているよりも、ご主人であるタカフミさんにも伝えておく方がこれから先、円滑に仕事が出来ると考えたからだ。それに、タカフミさんならば短い時間しか付合いしてないが信用出来ると私は思ったのだ。けれども、伝えた後に私はその信用が少し揺らいでいる事を感じてしまった。
何故ならば、タカフミさんもまた……
「で…… タケフミさん、エロフは居ましたか? 大事な事ですからもう一度聞きます。エロフは居たんですか?」
おお、何と言う事だ…… タカフミさん、貴方もかっ!?
そして嘘を吐けない私はまた正直に告白をする…… 今後はもっと人を見極めて事情を話すようにしようと心に固く誓いながら……
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